町の中華料理屋

 昼前に起きて億劫だったので、とりあえず目覚ましになるコーヒーを買おうと思って近所のスーパーに出掛けた。目的のものを買い帰り際の道に、のれんがヨレヨレの中華料理屋があった。気になったがためらわれたので店頭を少し通過しつつ覗き見しつつで、やっと入ってみた。お客さんは3人ほど入っていた。

 どうやら働き盛りを少し過ぎた男性店主が一人で切り盛りしているらしく、ひどく忙しそうに、「はいはい少々お待ちください」と言って、お客に料理を提供するとすぐに中に引っ込んでいった。その間に注文を決めていたが、数分して他のお客に提供する段になってようやく注文を聞かれた。ラーメンの半チャーハンセットを頼んだ。

 料理を下げると、すぐに洗い、またすぐ次の料理に取り掛かる。私は無精な人間なので、素直には、ああ、こんな仕事は自分には務まらないなと、なにか、しかしこれも社会の一端なんだよなと思うと、嫌な思いがしてしまった。

 そんなことを数分考えていると、ラーメンと半チャーハンが出てきた。早速いただいた。変哲のない醤油ラーメンとチャーハンだった。この至って美味でもない変哲のなさがなにか妙に私の情感を揺さぶった。

 ささっと啜っていると、お会計をして帰るお客たちに、店主は、「ごめんなさいね!」と、待たせたことを鬱陶しくなく詫びていた。私も啜り終えて誰もいなくなった店内で会計をするときに詫びられたが、謝罪と言う情感よりもむしろ町の温かみを実測した感覚を得た。

 案外、こういうところに答えはあるのかもしれないと思った。


2023年11月9日

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習慣としての文筆 てると @aichi_the_east

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