第22話 悪魔に魅入られた人達⓹

 主イエスに従おうと下矢先、邪魔な情報がはいる。

 辻説法をしていた東園寺は、その若いとまで言われる年齢で、一躍、とある会の主催者として、世に名を知れ渡たる事になった。

「賛光会?」

教会で、東園寺の話が上がった時、私が教会の兄弟姉妹達との分かち合いで出た言葉だった。

「そう、光を讃える会、って書いて賛光会って言うらしい」

「それの主催者が東園寺さん?」

「詳しくは知らんが、、僕からしてみれば、東園寺を中心に回る会だから、無牧師で、求道者向けの会だとは思うが、、、学生運動が盛んに行われているからな、最近。力の余った血気盛んなやつらの集まりだろう」

確かにこの時代、社会運動が盛んになってきていた。デモやストライキなど盛んに行われていた。活気に満ちていた、と、今からでも思う。

 右上がりの数字を叩き出しているこの世代、人達は活気に満ち溢れていた。私に限っている事ではないだろうが、誰もがこのまま高度成長は続く、と思っていたに違いない。

 只野さんに挨拶を交わして、私は教会のいつも座っている席に着く。CSのクラスは先程終えたばかりだ。


 みーちゃん(私の旧友)にあったのは、礼拝終わり後、阿佐ヶ谷の駅周辺だった。


 再会した後、あれから2、3年経つ。


 その後である。みーちゃんが言っていた、秘密の会はどうも革命を日本で起こす、と言う、危険なものだった。極左の毒されたもので、セクトで「けば棒」で「粛清」する、、、果たして粛清と言う言葉が正しいのか、今となってはそうとしか感じられない。内ゲバなるものが流行り出していた時期である。

「みーちゃん、大丈夫?」

 革命家と、予め言ったみーちゃんだが、やつれているように見える。

「革命が日本で起きる、って真剣に信じている。夢だけど、夢じゃない。私真顔じゃない? 真顔で言うのは夢が実現するから真顔になるだよ?」

「革命か、、、」

勿論、革命などは起きなかった。ただただ、学生運動が盛んになり、戦後、婦女子に参政権が与えられ、アメリカのそれより早かった。言われてみれば、私も革命している様なものだ。キリストを皆んなに知らしめる為に。

私はみーちゃんが随分と『荒んだ』格好をしているのを心配した。

「みーちゃん、、、よそ行かない?」

この時、話している場所は路上だ。長話に私は休みたい、と思った。ただ、みーちゃんは、ハッキリ言って臭かった。しかし、それを言うのは憚れた。多分お酒やタバコ、それと何かしらの香水みたいな匂いだ。気持ち悪い。

「喫茶店? 喉は乾いていないよ。それにヤサグレている男の面倒みているし、、、」

「男の人の面倒? 何それ? 逆じゃない?」

「考え若いなぁ。かっちゃんは。女が養って男は成長するんだよ」

果たしてそう言うものなのだろうか?

「偉かった男には陰の女の支えがあるのよ」

話をする内にみーちゃんが男と同棲し、その男は働いているものの、食うや食わずの生活らしい。

「かつ子は、今、クリスチャンだっけ? 耶蘇教の人にはわからんか」

耶蘇教、、、これは当時からキリストを馬鹿にした言葉だ。

「まぁ、みーちゃんがそうしたいのなら、、、」

「かっちゃん、仏教の方が合理的だよ? 大体、おかしいじゃん、アダムとエバの話。

息子たちは誰と結婚したの?」

 私は一瞬、辟易たじろんだ。と言うか、チャンスと思った。みーちゃんはクリスチャンに興味を示したからだ。

「神が作った人よ。アダムって言うのは人の事を指しているの」

「あら、じゃあエデンの園には人がたくさんいたの?」

確かにその事には聖書は触れていない。

「カインはノドの地に行ったの。ノドの地は、、、」

「ノドの血? 出血でもしたの?」

まるで噛み合わない。ここまでじゃ何とも言えない。

「あたしン行こう。なんか深い話になりそうだから」

私とみーちゃんはみーちゃんの家に行く事にした。

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ゆらぎ。 石神井川弟子南 @oikyu

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