【短編小説】窓際の彼女

第1話

教室の隅のあの子。

ずっと窓の外を向いているあの子。


2つ横に離れた僕の席からではいつも彼女の耳とちょっとだけ遊んだ後れ毛。毎朝櫛で梳かしてきているのを想像させる綺麗なロングヘアー。


君は何を見ているのか、自分の事を見て欲しい。僕はその一心で今日も目を引きつけようとしてみる。


友達と騒いでみたり、いつもより少しだけ大きな笑い声を上げてみたり、

時には教室で追いかけっこしてみたり、取っ組み合いしてみたり。


それでも彼女は振り向かない。どうして、自分のことを見てほしいだけなのに。彼女はどうやら自分に興味が無いらしい。



君の目を引くため、昨日も今日も、明日もきっといつもより少しだけ、ほんの少しだけ僕は元気に、大袈裟に振る舞うのだろう。


ある放課後、

忘れ物を取りに部活の始まりの合図を横目に教室へ向かう。


教室の隅には、彼女がいた。

珍しくポニーテールの彼女を見て僕は朝からそわそわしていた。

入る直前まで窓の外ではなく、こっちの廊下側を見ていたような気がする。


僕は居ても立ってもいられず、話しかけてしまった。

その日はちょっと気が気じゃなかった。だからあんなことを口走ってしまったんだ。


「なぁ、なんでいつも窓側を見てんだ?」

思わず口に出してしまう。


「別に、外が好きなだけよ。何だっていいでしょう」

淡白な返事。やはり彼女は僕に興味が無いらしい。


「そんなに僕のことどうでもいいのか?話す時くらい顔みてくれたっていいじゃないか。」


返事も待たずに続ける。


「なんでいつも僕のことを見てくれないんだよ。」


こんなの自分のエゴだ。でも何故か彼女が見てくれないのが嫌で仕方がなかった。

少し声を荒らげてしまった。嫌われたかもしれないと思うとすこし口の奥が酸っぱい。

今すぐ逃げ出したい気持ちを抑え、彼女が口を開くの待った。


「だってこうしていた方があなたの声がよく耳に届くもの。」


彼女の顔が少し赤くなっていた気がした。

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