最終話 俺、太陽です。花に気持ちをちゃんと伝えたい。

 やっちまった。

 やっちまったよ。

 こ、告白しちゃったじゃん。

 花に大好きだって言っちゃった。

 とうとう伝えた胸の内、だけどあんな風に怒鳴りながら告白するつもりなんてなかったんだ。

 もっとムードっていうのか、いい感じの時に好きだって言いたかった。


 ごめん、花。

 びっくりしたよな。

 喧嘩みたいになって――。

 俺が花に悲しそうな顔をさせてしまった。

 それに驚かせちゃったよな。

 俺は床にどかっと座り、天井を仰いだ。

 戸惑ってるに違いないだろう、花のことを想って、俺は胸がぎゅうっと痛んだ。


「はぁ――っ。明日花に会うの気まずいなぁ」


 胸を手で抑えるようにぐっとあてると、思いがけず深いため息が自分の口から勝手に漏れた。

 その時――!


『たいよーう! 太陽っ! ちょっと太陽ったら。返事してよ。もしも〜し』


 トランシーバーから花の声っ!?


 えっ、ちょっ、待って。

 今さっきあんな感じで、俺どうしたらいいわけ?


『もうっ、太陽ってば出ないつもり? あんなんで私どうしたら良いか分かんないんだから。……こうなったら〜』


 プツッンとトランシーバーの音は途絶えた。

 俺の気持ちは拍子抜けしたというか、ホッとしたというか。

 どうやら花は諦めたらしい。


「はーっ。パニックってるよ、俺」


 ん?

 んんっ?


「おばさん、お邪魔しま〜す」

「あら、花ちゃん。いらっしゃい。太陽なら部屋にいるわよ〜」


 やべぇ、花と母さんのやり取りする声が聞こえたかと思うと――。


 だだだだって階段を駆け上がって来てる音がして、バーンッて扉を開けて、花が俺の部屋に入って来た。


「は、花。なんで来たんだよ」

「なんでじゃないよ、太陽。……びっくりしたけど、う、嬉しかったよ」


 見下ろす花は真っ赤な顔をしてる。

 俺はあっけにとられてた。

 そんな……、花から嬉しいとか言ってもらえるとは思わなかった。


「太陽に好きって言ってもらえて、私! 本当だよ、嬉しかったんだから」


 俺に近寄る花が、足元のリモコンに蹴躓いたのが見えた。


「キャッ!」

「あっ、危なっ」


 俺が抱きとめると、花の顔がすっごく近くて。

 ドキドキして。


「花? 大丈夫か――?」

「……ねぇ、太陽。なんか私ドキドキする。変なの。太陽はドキドキしてる?」

「……ドキドキしてるよ」


 そのままぴたりと花と俺は寄り添ったまま動けなかった。

 花と離れたくなかったからかもしれない。

 俺は花のそばにずっといたい。

 ただ、それだけなのに。


「私ね、いつも太陽が近くに居てくれるのがなんだかいつも大事だなって思ってたの。……それって太陽の言う『私を好き』って言ってくれたのと同じことだと思う?」


 じっと俺を見つめる花の瞳から、俺はとらわれて視線を逸らせない。

 胸の鼓動は早くなる。


「た、たぶん一緒じゃね?」


 口をついて出たのは恥ずかしくて自分でもぶっきらぼうな言い方。

 だけど、花は――。


「そっかぁ。だよね! うん、そうなんだね。太陽……」

「ひゃっ」


 花が抱きついてきて、頭が真っ白になった。

 心が跳ね上がるっ。

 俺の頭からポォーッと頭から蒸気が出そう!


「は、は、は、は、花?」

「うん?」

「こ、これは……。花も俺のことが好きってことで、そんな都合のいい解釈で良いのか?」


 う〜んと花がうなる。

 俺は全身が熱くなっていた。


「うーん、分かんない」

「なぁっ!? うっ、……俺は分かった」

「えっ?」

「俺は花に好きって言ってもらえるよう頑張る」

「う、うん。あのね、ごめんね、またドキドキするか試しに抱きついてみただけ。太陽へのこのドキドキが何なのかは、はっきり分かんないや」

「そのうち、花がはっきり分かるよう俺が頑張るから」


 花がクスクス笑い出した。

 距離が近すぎて、ヤバいぐらい俺の心臓がうるさいけど……。

 花を、やっぱりすごく可愛いって思う。

 花を大好きだなって、感じてる。


「頑張んなくていーよ。……ふふっ、ドキドキする。太陽にドキドキするだなんて」

「えっ? あ〜っと。花『頑張んなくていーよ』ってそんな……。俺はね、これからも花のそばにいたい」


 だから、だから――!


「花、俺は花のただの幼馴染みから一歩前進したい。何をどう頑張ればいいか分かんないけど、花の一番近くで花を守りたい。一緒にいたいんだ。今までより、ずっと近づいた距離が良い」

「ありがとう、太陽。……頑張んなくても、同じ気持ちだもん」


 花が俺の頬に『ちゅっ』てそっと口づけた。

 あっ、やわらかい……って、そうじゃなくって!


 えっ、え――っ!?


「太陽にキスしたいって思っちゃった。これって私も太陽が好きってことだよね?」

「急展開すぎない?」

「イヤだった?」

「俺が……。花からキ、キスされてイヤなわけないじゃん」


 やっば。大好きすぎる!


 俺は花をぎゅっと抱きしめた。


 俺、一生、頑張れそう。めっちゃ全力で。

 そう、俺がいれば大丈夫っていってくれる女の子、花のためになら。



         おしまい♪





 

 

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【幼馴染みの君がいれば大丈夫だよ!】どきどき告白前夜♡あたって砕けるかもしれない!? 天雪桃那花(あまゆきもなか) @MOMOMOCHIHARE

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