顔がないから仮面を被る

第1話

仮面を被るのは悪いことじゃない

醜いから被る

欲に塗れたものを避けるために被る

ファッションのために被る

どれもおかしくない

でも量産型の

誰かが作った仮面を

ただなんとなく被る

これって少し悲しいような

そんな気がする

自己を顕示したくない

それならまだわかる

そもそも自分がないから

私がないから

顕示する自己がないから

そうだとしたら

なんだか悲しい

周りに合わせるため

謙虚で心優しい人間だから

なんだかもっともらしいけれど

いざという時に

仮面を外せるだろうか

顔がないから仮面を被る

それだとちょっと怖いかも

顔がないと

いざという時に

それが誰だかわからない

顔を形成するために

準備をする間だけ仮面を被る

それはいい考えだ

でもずっと

顔がないまま

自らを終える

それってすごく悲しい

それに誇りがあるのなら

実は鏡を見た時だけ

見える顔があるというのなら

いいのかもしれない

仮面も顔も

色々ある

人の数だけ

混在している

見せたい

見せたくない

そう思うこともある

でも私は

貴方の顔を

見てみたい

そうでしょ？