第121話:神理鏡が映し出すもの
「
「神理鏡のことですね。
季堯は無意識のうちに復唱していた。
「あらゆるものを、それは、まさか」
背後で
「季堯は物知りですね。ええ、そのまさかです。魂が有する全ての記憶、それらの姿もです。
「神理鏡からは決して逃れられません。季堯、見なさい」
促された季堯が視線を上げ、神理鏡を、織斗の魂を見つめる。
「
季堯にとっても意外すぎた。
改めて問うてみる。
「
表情一つ変えず、
神々の魂は生まれてからというもの、他の何ものとも交わらない、揺るぎないものだ。従って、神理鏡の前に立ったところで、己の姿以外に映るものなどない。
「風向織斗としての魂は、せいぜい十数年です。しかしながら、かの魂には、およそ千五百年以上の時を巡った分だけのものが刻まれています。未だ消滅していないということは、それほど悪くはなかったのでしょう」
織斗が
「風向織斗は、過去の記憶あるいは姿を見て、恐れおののいている。だから魂が揺らいでいる。そういうことなのでしょうか」
季堯も確信が持てないでいる。
季堯の置かれた立場があまりに特殊すぎるからだ。彼は
人間の寿命は、たかだた八十年程度にすぎない。
「そうです。風向織斗の魂は今まさに、二十人ほどでしょう、それらの過去を
あまりに残酷すぎる。
極悪人がいるか
あらかじめ予備知識を与えられていたら、備えることもできただろう。織斗は何も与えられないままに、いきなり神理鏡の前に立たされ、直面させられている。
「
「神々の中でも、最上位に
依然として、織斗の魂は神理鏡を前にして揺らぎ続けている。
「本来であれば、介入などしてはいけないのですが、風向織斗の魂が壊れる前に」
鈴を持ち上げたところで、織斗の魂の揺らぎが止まった。
「ひとまずは大丈夫ですね。魂に問題がなければよいのですが」
「
これまでとは全く違う。光を帯びた両の瞳は、鏡を通り抜けたその奥、
「風向織斗の魂は旅立ちました。黄泉殿にて真の試練が待ち受けています。もはや、私の力も及びません。我が
季堯は
(
「葛藤が見て取れます。季堯、後悔していますか」
わずかに
「二人を幽世まで
もし、季堯が後悔するとしたら、二人のいずれかに問題が生じた場合のみだ。
優季奈は少なくとも
一方で、織斗の運命は
「思案していてもどうにもなりません。風向織斗に関しては、
優季奈を
「我が
優季奈の目が静かに開く。時間感覚を持てない中、どれぐらい眠っていたのか想像もつかない。
目覚めてすぐに探したのは織斗だ。姿を求めて視線を
季堯が
「佐倉優季奈、聞くがよい。風向織斗は、飲み干した
優季奈は言葉を失っている。
優季奈の想いは全て
「心を
「はい、
伏し目がちに
「季堯が言ったとおりです」
「重なって
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