第7話 3層
ダンジョンの10層で思いつく言葉としては、まず【初級者】ダンジョンからの卒業というのが一つある。10層を乗り越えた者は一端の探索者であり、その時点で自営業探索者ではなく社会的ステータスのある探索者という扱いに世間の目が変わる。
【中級者】、即ちレベル30越というのはまさに武力であり、兵器だ。そう下手な扱いはできないというのが国際社会の認識というわけだ。
そして、探索者のハードルとしての側面を持っている。
各国の軍隊並びに日本の自衛隊は10層の攻略で大きく躓いた過去がある。ダンジョン先進国として名高いアメリカ、中国は10層での死傷者が当初8割を越えており、今ですら4割近い数の国御用達のパーティーが全滅している。高レベル探索者の死傷者が非常に低い日本ですら3割死んだ。
それほどに危険な階層。まさにデットオアアライブ。
大手ギルドであり人材が豊富な【闇夜の灯火】が一愛達に協力を求めるのにはこうした訳があった。
実績解放者のみでの超精鋭パーティー。小暮朝日は余程10層を確実に越えたいらしい。
と、小難しいことはおいといて、今は3層の攻略を進めていた。
「先輩そっちいきましたよ!」
「わかってる!」
ダンジョン3層の密林地帯。
地上に現存する虫や小動物と図鑑に載っていない謎の生き物に交じって、モンスターという敵対種族が跋扈する階層。
その種族は多岐に渡る。
まずはオーク。
次にフライフィッシュ。
三にインプ。
四に……と数えればキリがないほどのモンスターが存在する。
ダンジョン学者という怪しい職業の人の説によれば3層は各種族が覇権を争っているそうなのだが、階層自体が広いのと見通しが悪すぎてイマイチピンとこない。
むしろ、
「【サークルスィング】!」
「ブモッ⁉」
一愛が一息にオーク達を薙ぎ払う。
レベル7に上がったことで装備できるようになった『ヨトゥンの大斧』は素晴らしい威力と切れ味を発揮し、3体の人型豚共の下半身と上半身を泣き別れさせた。
この大斧は両刃だが片刃が潰れていて鈍器としても使用できる。いざとなればそっちで攻撃するつもりだったが、オークのように硬く厚い脂肪を持った敵にも通じて一安心である。
一愛のスキル発動膠着を狙ったように背後の濁った川から魚雷のようにフライフィッシュが飛んできた。
……これである。覇権を争っているどころか協力しているとしか思えない。
フライフィッシュは地上でUMAとして扱われているがダンジョンでは立派なモンスターである。白く細長いウナギみたいな形をしているのは変わらないが間近で見るとUMAだと喜んでいられないほど凶悪だ。
獲物を食らって離さないようピラニアみたいな強靭な顎に鋭利な歯。大口開けて飛んでくるせいで正面から見ると胃の中まで見える。胃の中にすら歯が生えているのは機能的なのか否か。
ともあれこの状況はそこそこ危機である。
だが一愛は全く不安に思っていなかった。
「【絶風】」
侍ビルドの遠距離斬撃攻撃。
射程距離は10mそこそこだが威力は十分。見えない風がフライフィッシュを空中で切り裂いた。
「一愛様、信頼して頂けるのは嬉しいですけど気を付けてください。私だって動けない時があるのですよ」
「最初からわかってた癖によく言うよ」
椿姫の魔法:明鏡止水
10分間だけ周囲の状況を把握できるという曖昧な効果だが、使ってみるとかなり探索を楽にすることが判明した。
例えば岩の後ろに隠れているモンスターや今みたいに濁った川に潜んでいるモンスターを感覚的に把握できるらしい。これにより不意打ちや奇襲を防げるようになったのがでかい。
欠点は10分で切れる癖にMPの消費が大きい所だが、椿姫はこれを上記の理由以外で積極的に使用していた。
……某漫画の円が使えるようになりました! とか喜んでいたしな。
既に自分がファンタジーに両足突っ込んでるのに何をいまさらと思うも、一愛だって原作ファンなので何も言うことができなかった。というかちょっと羨ましい。
……おかげでMPポーションをバカバカ飲んでるけど、色蓮が何も言わないなら俺が言うことでもないな。
そのMPポーション代の三分の一は一愛の給料から出ていることには目を背ける。
「ふぅ……こうもひっきりなしにモンスターが襲ってくると参るっスね。おふろ入りたいっス」
そう言って色蓮が額の汗を袖で拭った。
熱帯森林なのか地上の真夏並の湿気と気温が一愛達を襲っている。一愛的には服が透けている二人を見るのは眼福だがこうも暑いと辟易してくる。というよりもう見慣れた。
知っているだろうか。美少女だって汗臭くなるのだ。
「風呂に入りたい気持ちはわかるけどこんな所で休憩できないだろ。せめて焚火ができるくらいの空間がないと」
「わかってるっスよそんなこと。先輩の獅子マントのおかげで動物はきませんけどモンスターはきますからね。でももう少し開けた場所が見つかったら休憩しますよ!」
「私としてはこの階層から早く出たいので休憩無しでもいいくらいですけど。変な虫がわいてきますし……」
椿姫が嫌そうに顔をしかめた。
3階層は昆虫博士でもない一愛ですら「ありえんだろ」と口走るくらい謎の形をした虫がいる。それに実は人工魔道具のテントは人を弾くがそれ以外は弾かないのだ。
朝起きたらいつの間にか虫がテントに侵入していた過去のキャンプが思い出される。
……あれは非常に嫌なものだ。
「ダメだよ、姫」
色蓮が少し強い口調で言う。
「ダンジョンは環境が変わらないせいで疲労が分かりにくいんだから、休憩できる時に休まないとダメ。ただでさえ十分な休息とはいかないんだから」
「それもわかってますけど……やはり虫が……」
「まぁ、それは一理あるけど」
「一理あるんかい」
思わずツッコんでしまった一愛に色蓮が頷いた。
「3層に出る虫は結構凶悪なんスよ。3層からヒーラーが重要だと言われる一番の要素がこいつらで、基本的に奴らは毒虫なんです。さすがにウチらが即死するような毒を持つ虫はいないと思うっスけど、遅効性で死に至ることもあるんスよ」
「いや話には聞いてたけどさ。でも恢復ポーションが効くんだろ」
「使わないに越したことないじゃないっスか。というより毒がなんだと言いましたけどウチも虫は嫌です」
……結局そこかよ。
「一愛様」
椿姫が機嫌よく弾んだ声を上げた。
「一愛様が見張りでない時は、私かいろはすが虫に刺されないよう見ていて下さると助かります。もちろん同じテントで」
「は?」
「ちょ、姫⁉」
色蓮の焦った声に椿姫が謎にドヤった。
「なんですかいろはす、別にいいではありませんか。一愛様なら紳士ですし変なことはしませんよ」
「いやでも先輩意外とむっつり」
むっつりではない。エロいタイミングでエロくなるだけだ。
「いいではありませんかそれくらい」と、椿姫が謎の寛容さを見せ始める。
……こいつ男に苦手意識持ってなかった?
「というより私思ったのですけど、テントを別々に分ける必要ってないですよね。中は三人が一緒に入ってもまだスペースに余裕がありますし、危機的な状況に陥った時を考えれば固まっていた方が良いでしょう。ええ、そうしましょう」
「いやいやいや! ウチはいいです! 確かに言われてみれば効率的だけど……」
色蓮が反対なのか許容したのか曖昧な返事をした。
……こいつら暑さで頭がやられたのか?
「俺は嫌だぞ。そんなことしたら俺が休めないだろ」
「……」
「……」
一愛の当たり前な主張に色蓮と椿姫が押し黙った。
やがて二人は顔を見合わせてため息を吐くと、冷めた目つきで一愛を見てくる。
「まぁそうっスね。先輩の言う通りっス」
「一愛様はいついかなる時でも冷静ですね。さすがと言わざるを得ません」
そう言って二人は陣形を崩し、本来前衛であるはずの一愛を置いて3層を進んだ。
……これ、俺悪くないよな?
なんだか釈然としない気持ちになりながらも、一愛は二人を追い越すように早足で歩いた。
3層の【実績】解放条件は宝探しである。
3層のどこかに存在する宝箱を開けばクリア。実に簡単なクエスト。
……と、そんなわけがない。
1層よりも広いフィールドに見通しの悪い密林地帯。総数こそ2層に及ばないもののひっきりなしに襲ってくる2層より強いモンスター。地味に体力を奪う気温と常時明るい空模様。
しかも宝箱の位置はランダム時間で配置が換わる。配置が変わる周期は3日~5日の間と言われているが、配置変更の周期が分からないので結局隅から隅まで何周もしなければいけないのだ。
【実績】の有用性が分かっていなければ絶対にスルーする。
これなら1層、2層のように○○を倒せの方が分かりやすくてよっぽどいいと思える。
ランダム配置はまだしもランダム周期がこの難易度を劇的に上げていた。いざ隅から宝箱を探そうと探索を開始しても、1時間後には探し終わった場所に配置されているかもしれないのだ。
これが結構精神的にくるはずだと、一愛達は予想していた。
「こいつが3層のエリアボスか」
なので先に3層を踏破してしまおうと一愛達は決めたのだ。
「いや、こいつらか」
数百メートル先にはオーク……いやオークジェネラルの群れ。
通常のオークより1.5倍は大きい体躯に立派な鎧。エリアボスにしては1層に続き喋れないタイプのボスである。
それもそのはず。こいつらは、
「4層のどこかにいるオークキングの眷属っスね。キングはジェネラルを無限に召喚できるらしいスよ。4層に行く前にこいつらの動きに慣れておかないと」
言って色蓮が勝気にも笑みを覗かせた。
そう……3層のエリアボスはたかが一モンスターの眷属なのである。
実際のオークキングは無限に眷属を召喚できるが、3層のエリアボスとなっているこいつらは無限ではない。精々30体ほどである。
3人パーティーだから30体。5人パーティーなら50体。
3層はパーティーの人数に応じて数が増減する特殊なエリアボスだった。
「オークジェネラル……通常のオークより何倍強いのでしょうか」
「さぁな。戦ってみれば分かるだろ」
椿姫の疑問を適当に流し、一愛は大斧を構えた。
レベルも9まで上がっている。このエリアボスを倒せばレベル10。一次職に転職できる。
一次職に上がった探索者はそれだけで実力が跳ね上がる。そうでなくともレベル9になった一愛達は強力である。おまけに階層に見合わない装備はその実力を底上げしていた。
だからこの程度問題無いと、一愛は弾丸のような速度でオークジェネラルに肉薄し、
「……は?」
メリィッ。
オークジェネラルの分厚い脂肪に大斧が止められた。
「な、なにぃぃぃぃい⁉」
奇想天外驚天動地。
あり得べからず事態に遭遇した一愛は驚愕の声を上げ、
「ぐふッ⁉」
脂肪でガードしたオークジェネラルに、そのまま脳天を肘打ちされる。
「何やってんスか先輩!」
「――【デストラクションフィスト】ッ!」
怒りの正拳突きがオークジェネラルに突き刺さった。
「グブモォッ⁉」
オークジェネラルはその場で胃液をぶちまけ蹲る。
デストラクションフィストの追加効果。防御45%のデバフ。
一愛は脂肪に食い込んだままの大斧を強く握りしめ、そのまま押し込むとオークジェネラルの体を両断した。
「こいつら強くない⁉」
「だからあれほど慎重にと……いえ、確かに予想外の強さですが!」
色蓮が大弓を構えて【チャージショット】を放つ。
モブオークなら4,5体貫通しても止まらない威力を誇るそれが、たった一体のオークジェネラルを穿つだけで勢いが止まった。
「一愛様!」
椿姫が叫び、一愛目掛けて突進する3体のオークジェネラルに突きを放つ。
椿姫がネメアの獅子から得たスキル、【ラインドライブ】。
切っ先を立てたまま敵に向かって愚直に突っ込むスキルだが、その速度は亜音速一歩手前の瞬足である。現代製品の刀であれば耐えられない威力を誇るスキルもダンジョン産の刀には露程の影響もない。
……それほどの威力を誇る椿姫のスキルが、一体のオークジェネラルを仕留めただけで発動が終わった。
包囲された一愛に迫るオークジェネラルは、ヨトゥンの大斧より一回り小さい斧で斬りかかってくる。
一愛もただ黙って斬られる訳にはいかない。
先ほどと違い刃が潰された側で構えを取り、
「【サークルスィング】ッ!」
「「ブォ⁉」」
メキッ、ゴリッ
厚い脂肪ごと内臓を強引に圧迫し、そのまま骨を砕いて一体を瀕死に。
二人の後輩が一体を仕留めるだけで終わる中、先輩かつ男である一愛がこの程度で終わるわけにはいかない。
「ォォォオオオオオオッ‼」
スキル発動中は羽のように軽い武器をあえて強く握り締め、体重を乗せて自発的に動きを補強する。
ステータス以上の威力を発揮することは無い筈のスキルが、確かに底上げされたかのような感覚に陥った。
「――ラァ!」
「ッ」
振り抜く。
二体のオークジェネラルは構造上あり得ない角度で身体が折れた。
「おお! 流石先輩、脳筋の面目躍如っスね!」
「うるせぇ!」
茶化してきた色蓮に苦笑し、一愛は一旦下がって二人と足並みを揃えた。
「色蓮、指示出せ」
「いろはす、指示を」
椿姫と意見が合致する。
色蓮は列を成して迫ってくるやけに統率のとれたオークジェネラルを俯瞰し、
「……リーダーはいない。いえ4層に居るんでしたか。ここからでは攻撃が届きませんね」
「頭潰しか。できないことを考えても仕方ないだろ」
「その通りです。では各個撃破で」
即断即決。
色蓮の指示通りに密林フィールドを広く使い、一愛達はオークジェネラルの攪乱を開始した。
決して集団戦にはならないように立ち回り、オークジェネラルの数を確実に一体ずつ減らしていく。どうやらオークジェネラルは防御が群を抜いているだけで特別なスキルは何一つ持たないことが分かってきた。
そうと分かれば後は流れ作業。
戦闘を開始してから30分が経過した頃には、群れを成していたオークジェネラルも片手で数えられるほどになっていた。
が、不測の事態はいつも予期せずやってくる。
「――はぁ⁉」
色蓮が怒りと驚きの声が混じった叫びを上げた。
一愛も唖然とした顔を浮かべてしまう。
「「「フグ、フグ、フグォォオ!」」」
……まさかのおかわり。
新たに現れたオークジェネラルは一糸乱れぬ動きで斧を振り上げる。その瞬間に何らかのバフが働いたのか奴らの全身から湯気が立ち上った。
見えるは蜃気楼。それほどの熱気。
「いや何で追加されてんだよ!」
オークジェネラルの一連の行動は無視できても、おかわりされたという事実は無視できない。しかもその数は明らかに当初より多いのだ。
まさか先月のイレギュラーモンスターの言葉通り、ダンジョンは一愛達を獲物として殺したがっているとでも言うのか。
「いや、違うか」
「ええ、違います」
色蓮が心を読んだかのように否定する。
「これは恐らく――と、話してる余裕はなさそうっスね!」
数体のオークジェネラルが異常な速度で突進してくる。
その速度は一愛達が倒した個体達より2倍以上は速い。間違いなく先ほどの鼓舞によるバフの効果だ。
一愛は2体のオークジェネラルの攻撃を大斧で受け止めるも、足場の悪いフィールドのせいか地面に膝をついた。
「このバフつえーな! 力も跳ね上がってるぞ!」
「出現して直ぐにバフを掛けたということは、一愛様の突撃が最初の群れのバフ機会を奪っていたということですか」
椿姫の冷静な声に若干苛っとしつつも、一愛は歯を剥き出しにして笑い、
「何事も無駄じゃないってことか!」
「「グモォ⁉」」
言って、二撃。
ゴリ押しでの攻撃を諦め搔い潜るようにしてオークジェネラルの背後に回ると、一愛は一体ずつ確実に敵の頭を潰した。
小回りが効くメイン武器ではないのでダンジョンストアで買ったダガーを初使用である。エリアボスたるオークジェネラルを2体殺したのだから1500万の武器も馬鹿にはできない。
もっとも、ダガーのプロではない一愛は力任せに刺しただけだが。
見れば色蓮と椿姫もそれぞれ一体ずつオークジェネラルを確殺していた。
「第二波って感じだな。やるしかないか」
「ええ、やるしかないっスね」
「やりましょうか」
三者三様の言葉で覚悟を決めると、文字通り波のように襲ってくるオークジェネラルにそれぞれ狙いを定めた。
…………更に30分後。
「――は、っは、っは、っは」
「……ふぅ、はぁ」
一愛と椿姫は互いに背を預け合うように座り込んでいた。
辺りを見渡せば死屍累々の屍山血河。見通しの悪い密林地帯は所々地面ごと抉れて見通しが良くなり、そこにオークジェネラルの成れの果てが転がっていた。
数秒待つごとに一体ずつ地面に溶けて消えていくのを一愛は肩で息をしながら見守る。
一愛と椿姫もボロボロである。ダンジョン産の装備すら傷付いているのが戦闘の激しさを物語っていた。特に椿姫など7等級の紬なのに肩口の辺りがバッサリ切れている。
ダンジョン産の装備は現状では『探索者協会』の専用施設でしか直せないので、これもきっと痛い出費になるだろう。
「……今回は、少し骨が折れたっスね」
唯一無傷の色蓮が立ったまま疲れの滲んだ声音で言う。
その色蓮も樹に身体を預けているので見た目ほど余裕はないのだろう。
「しかもレベルが上がったのも最後の一体だったしな……」
「ステータスの上がり幅は凄かったんですけどね……」
まだステータスを開いて確認できていないが、一愛の体感としては一気に3レベルくらい上がったかのように強くなった。レベル10に上がったことで転職したことによる産物だろう。
これがオークジェネラルの群れを相手している時であればどれほど楽に殲滅出来ていただろうか。
だが実際には最後の一体。それほど現実は甘くないにしても些か辛い。
「宝箱は……ああ、また低級ポーションっスよ」
一早く戦利品を確認した色蓮が嘆くように言った。
これで一、二、三階層と三連続低級ポーションである。流石は最も期待できない宝箱だ。
……いやまぁ低級ポーションは結構使うんだけどな。
主に疲労回復の目的で。
「ん? 宝箱がもう一つあるんだが」
一愛の目の錯覚で無ければ、色蓮が開けた宝箱のすぐ隣にもう一つの宝箱が置かれていた。
「いや、それは俺達のじゃないのか」
「お察しの通り開けられませんでした。倒したのはウチらなんだからイケると思ったんスけどね」
「あの、どういうことですか?」
イマイチ状況が分かっていなさそうな椿姫。
疲れから頭が回らなくなっていても仕方ない。
「3階層のエリアボス出現条件はなんだっけか」
「えっと……確か24時間3階層に居続けることでしたか」
「そう。メッチャ簡単」
「でも簡単だからこそ、こうしてウチ等はオークジェネラルの群れを2回も相手することになったんスけどね」
色蓮が一愛の言葉を引継ぎ、遠くを見るように目を眇めた。
「二人共立って下さい。どうやら“わざと”の方っスよ」
その言葉通り遠くから4人分の足音が聞こえてくる。
草木をかき分けるようにして一愛達の前に姿を現した。
「あら。もう倒されてるではありませんか」
現代ダンジョン創世記 つくしー @tukusii
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