2
...っかり...
ん...
なんだ?
なんだか、人の声がしたような
しっかり...して...
ねえ...!
なんだか聞き覚えのあるような...
なんだか必死に声が、自分に
呼びかけているような感覚に
拓斗は重くなっていた瞼を何とかこじ開けた。
暗かった視界が徐々に開いて
途端に目に眩しい光が飛び込んでくる。
『まぶしっ...』
刺さったかのような目の前の眩しさに思わず
開きかけた目をギュッと目をつぶる。
「!あっ...よかった...!」
傍で、誰かが驚いたように
声を上げたのが聞こえ
拓斗はそちらへと顔を動かした。
そこにはー
太陽の光を背中から浴びて、きらきらと光る
栗色の髪をした女性が佇んでいた。
拓斗を心配そうに見下ろしている瞳が
うっすらと潤んでいる。
「よかった...このまま目が覚めなかったら
どうしようかと思ったんだよ?」
(...夢、か?
ーそれとも幻覚…?)
それは
(観鈴、ちゃん…?)
紛れもなく、観鈴だった。
彼女のことを助けるために
決死の覚悟で飛び込んだ転移のゲート
かき回され、消え入りそうな意識の中でも
ずっと彼女の笑顔を思い出して
ここに、たどり着いた。
『俺……!』
ぐっと込み上げてくるものをこらえて
何とか言葉を絞り出そうとするけれど
思いばかり深くて言葉にならなかった。
「どうしたの?どこか、痛い?」
観鈴は、涙をこらえている拓斗の表情を見て
顔や体にどこか傷でもないかと
心配そうに見やっている。
「お、れ………」
ぐしっ、と何とか言葉を紡いだ
その時
グーーーーきゅるるる〰️〰️〰️ぎゅるるーー
ギュワワワ〰️〰️グオーーン!
きゅるるり〜んきゅわー!んぎゅ〰️!
『……………………』
拓斗の腹は聞いた事がない爆音で異形の
おたけびを上げた。
それを飾るかのように、頭上の枝で
うぐいすが場違いに
ホケキョ、と
のびやかにひと声鳴いた。
嗚呼……
彼は
穴があったなら底の底まで入ってしまいたいと
心から思った…。
異端の御使いの冒険譚 水無月くらげ @mina3ma
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異端の御使いの冒険譚の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます