選手宣誓
world is snow@低浮上の極み
誓いの言葉
宣誓。
我々は、何があっても決して諦めずに、正々堂々と戦うことを誓います。
血にまみれた両足がどれだけ悲鳴を上げても、決して膝をつかないことを誓います。
どれほど心が折れそうになっても、手にした対地球外生命体自動小銃を手放さないことを誓います。
我々がいるこの宇宙戦艦は、ある日突然、地球外から現れました。この突然の襲来に人々は逃げ惑い、その多くがなすすべもなく宇宙人に捕らえられ、この艦に囚われました。それから月日が経った今日この日、我々はついに敵艦に乗り込みました。我々はここで敵を足止めしている今この瞬間も、別の小隊が囚われた人々を地上へ脱出させようとしています。
人々を一人残らず地上に返すまで、目の前の侵略者どもを、この通路より向こうには行かせないことを誓います。
この日のために我々は仲間と支え合い、切磋琢磨しながら訓練を積んできました。朝早くから夜遅くまで弛まず訓練を続けた努力家の兵士たち、戦場での立ち回りを全身全霊で我々に叩き込んでくださった教官がた、力を最大限に発揮できるように的確な指示で我々を導いてくださった上官がた。その多くがこの狭い通路で、侵略者の凶弾に倒れ命を落としました。
遺体となってもなお、盾となって戦い続ける彼らの死を、無駄にはしないと誓います。
地球の狭い地下シェルターでは、人々が、私の家族が、侵略者どもの撃墜を待ち望んでいます。
その日の食料を手に入れることもままならなず、いつも宇宙人に怯えながら暮らす人々。
侵略が始まったあの日から笑顔を見せなくなった娘。
出撃する私に、娘が泣きながら託した四葉のクローバーは、まだ胸ポケットに収まっています。
そのとき鳴り響いた、全員脱出完了を知らせる合図。同時に、侵略者が放った攻撃が、爆風と共に我々の退路を塞ぎました。吹き飛ばされて倒れる私。視界には、爆風に煽られ燃え尽きるクローバー。
神様。
必ず生きて帰るという嘘を、どうかお許しください。
宣誓。
我々小隊一同は、所持していた対戦艦高密度爆弾を起動し、地上に平穏が戻ることを願って、敵艦と共に華々しく散ることを誓います。
選手宣誓 world is snow@低浮上の極み @world_is_snow
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます