第100話 謎の悲しみ

「あーさみぃー」


「急に寒くなるのほんとやめて欲しいわ……」


「お天道様が本当にいるならジャブ入れてやりたい……」


俺たちは朝っぱらから暖房をガンガン付けたエアコンの前で団子になって凍えていた。


ちなみに優葉は


「寒い時に食べるアイスこそ至高っす!」


と馬鹿げた事を言って、アイスの実を1粒食べたあとトイレに駆け込んでいた。


腹痛に悶え苦しんでるのであんまり寒さを感じてないのが不幸中の幸いと言ったところか。


かれこれ10分以上篭っているので、もうこんな寒い日にアイスを食べるという愚行は犯さないだろう。


「優葉ちゃん……大丈夫かな……」


「アイスなんてもう一生食べないっす……」


矢吹が心配そうに呟くと、ちょうど優葉がリビングに帰還した。


すごいげっそりしている。


余程痛かったのだろう。


「俺なんか温かい飲み物持ってくるわ」


身体の外を温めるより、中を温めた方が良いだろう。


そう言ってエアコン前のおしくらまんじゅうから抜け出しキッチンに入った。


「そういえば優葉アイス食べて腹壊してたけど、最近アイスなんて買ってたっけか?」


少なくとも俺は、ここ最近冷蔵庫の中でアイスを見てない。


さて3人はどれくらいアイスを買い込んだのか。


そう思いながら冷蔵庫を開いた。


「………あいつらこれを4人で食い切れると思ってるのか……??」


冷凍スペースがぜーんぶアイス。


真夏とあんまり変わらないくらい買い込んでいる。


というかこんだけの量を買う金どっから湧いてきてんだ。


中にはハーゲンダッツとか結構値段するやつもあったので気になってしまった。


大会の100万は俺が別で取っておいてあるので使われる事は万が一にもないが、4人の口座残高がどうなっていることやら……


俺は恐る恐るスマホで口座残高を確認した。


「6万………」


これが自分1人の口座だったらどれほど良かった事だろうか。


しかし現実は残酷、これは4人の口座だ。


つまり、親から生活費やら何やらが送られてくる来月まで6万でやりくりしないと行けないわけだ。


普通に足りない。


俺はあんまり使わないからまだいいんだ。


問題は女子3人衆だ。


あやつらはいつも化粧品だのなんだのかんだの言って結構えげつない金を消費する。


それだけ見なりに気を遣ってるからこんな2次元から引っ張り出してきたみたいな見た目を維持できているのだろう。


だから別に文句とかはない。


文句はないけど


「3人とも、バイトしよう」


「えぇ〜なんでっすかぁ?」


「シンプルに金欠」


「私たち来年受験よ?」


「確かに……」


「私も矢吹ちゃんも指定校使うから夏休み小論文対策すればいいだけだけど」


「なら出来るじゃんか!」


「ま、社会人の予行練習としてやってみるのもいいかもしれないわね」


「お金ないなら仕方ない」


1番説得に苦戦しそうだった2人が意外とノリ気だった。


一方、「やってみたいっす!」と言って乗ってきそうだった優葉がすごい不服そうな顔をしている。


金のためなら動くかなと思ったらそう単純じゃないらしい。


「これから寒くなるのに外出たくないっすぅ」


朝からアイス食べてたやつがいうセリフではない。


ちゃんとお腹下して早朝アイスの恐怖植え付けられてたけど。


「ならコンビ」


「あ、ちなみに近場のコンビニは無理よ、誰かにバラされてクラスの男子が来るようになったらたまったもんじゃないから」


「優葉を説得する希望の光がァァァ!」


「よし、こうなったらポルノハ」


「あんまり自分の身体安売りするような事言うなよ、なんか俺悲しくなるから」


何故か分からないのだが、3人、主に冬樹と優葉が自分の身体を安売りするような事を言うと悲しくなるのだ。


これが親身になるという事なのだろうか。


「樹君以外にこんなに言わないっす、それに流すなら1回で一生暮らしてけるだけの金撮って限定公開っす」


「ちょっとだけリアリティがあるのやめて」


限定公開とか生々しすぎる。


「冗談はおいといて、真面目にどこでバイトする?」


「決まらないから今日の夜話そ」


「じゃあ3人とも考えといてね」


「了解」


「分かったわ〜」


「分かったっす!」


金欠だから今すぐ決めた方が良いのに、何故か保留になった。

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オフ会行ったら特殊性癖持ち女子しかいなかった〜しかもルームシェアすることになった件〜 キロネックス @kironekkusu2007

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