第3章 キハダマグロはさっぱりと
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自転車練習2日目。
水族館4日目。
行くのが億劫だ。
なにせ初日がまったく駄目だった。
今日の午前で何も進歩がなければ補助輪を付けると言われた。
屈辱にもほどがある。
悔しかったら頑張るしかないのだかそもそもそこまで自転車に乗りたかったのだろうかと根底にまで思考が落ちて行ってしまうところからして駄目なんだろう。
9時半。
玄関の戸を叩く音がする。
またも社長サンだったら面倒だなと思いながら恐る恐る開ける。昨日も帰ったら俺の家で待ち伏せしていたし。
今朝だって。
なんだったんだ?あれ。
急に来て。
意味がわからない。
「おはようございます」ケイちゃんだった。
「おはようさん。帰ってきてたん?」
ケイちゃんは夏休み開始と同時に京都の親戚の家の手伝いに行っていた。何の手伝いなのか詳細は知らないが、京都に親戚がいるのはちょっと意外だった。
「はい、昨日に。これ、土産なんですけど、要らないすよね」
「くれるもんはもらっとくわ。何なん?」
「蕎麦ぼうろです」
「好きやで。おおきにな」
「あがってもいいすか」
「あかんゆうてもあがるんやろ。盛ってへんかったらええで」
「お邪魔します」
朝食は食べない主義なので、早速蕎麦ぼうろを。
懐かしい味がした。
「美味いすか?」ケイちゃんが心配そうに聞く。
「食うてへんの? 食べ?」
「ぼろぼろしますね」
「そこがええやんか。茶が欲しなるな。淹れるわ。ちょお待っといて」
蕎麦ぼうろにはほうじ茶がよく合う。
「今日は行かないんですか?」ケイちゃんが言う。
「夏休みもろうたん」
「そうなんですか!」ケイちゃんがあからさまに嬉しそうにした。
それはそうか。
今日は支部に行かないと宣言したも同然だ。
「今日の予定は?」
毎日水族館に行っていることを話した。
自転車を乗る練習をしていることは言いたくなかった。
「俺も行っていいすか?」ケイちゃんが前のめりで聞く。
「あかんゆうても付いてくるんやろ? でもあかんえ。今回は独りなん。社長サンも来てへんよ」
「そうなんですか」ケイちゃんがあからさまに残念そうにした。「水族館じゃなければ一緒に行ってもいいすか?」「相変わらずやなあ」
適当にいなして外に出る。
ケイちゃんは付いていきたそうにするのを我慢していた。
待てができるようになって偉い。
10時。
遅くなってしまった。
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ヨシツネさんに断られてしまった。
京都から帰ってきてすぐに会えたのは嬉しかったけど。
火曜日。
夏休み。
宿題はさっさと終わらせた。終わらせた方がいいとヨシツネさんに教えてもらったから。
ヨシツネさんがあの支部長のとこに行っていないなら俺にチャンスがあるのかと思ったけど。
いまは一人で過ごしたいらしい。
なら俺は邪魔しちゃいけない。
でも何をしよう。
早くヨシツネさんに会いたかったから早めに帰らせたもらったのにこれじゃあ。
もうちょっと京都にいてもよかった。
ヨシツネさんが生まれた土地だって聞いて、今年の京都行きはウキウキの度合いが違った。
ここが、ヨシツネさんが生まれた場所。てテンションが上がった。
毎年夏休みと同時に京都の親戚のところに行く。
何をしているか。
何と言えばいいのか。
家の手伝い?
じいさんの叔父さんが、京都で旅館をしている家に婿入りした。
そこの家に手伝いに行っている。
旅館の手伝いもするけど、俺の役目は他にある。
これについては説明が難しい。
幽霊じゃないし、なんというのか。
悪霊?
お祓いの手伝いってゆうか。
悪霊がどこにいるのか見つける役。
向こう的にはもっとちょくちょく俺に手伝ってほしいみたいだけど、じいさんやじいさんの兄貴が年一ってゆう約束をしたらしい。俺は別にどっちでもいいけど。
京都のことはいいや。
今日何をするか考えないと。
家にいるといろいろめんどくさいので出掛けたい。
誰かに声をかけようか。
とりあえず二人に連絡してみた。
どっちか早いほうの提案に乗ろう。
クウから連絡が来た。
リマとリクマが海水浴に行くので付き添うらしい。
ダイも行くとのこと。
スサから連絡も来ないし、こっちの提案に乗るか。
準備をして海辺に。
四人はすでに水着に着替えて待っていた。
「遅い!」リクマが真っ先に言う。
「久しぶり、オニちゃん」リマが小さく手を振る。
「着替えておいでよ」クウが指を差す。「あっち、更衣室」
「あんたさっさとパラソルとシート用意しなさいよ」リクマがダイに言う。
「え、俺が一人でやんの?」ダイが荷物を砂浜に下ろそうとする。
「待ちなさい。場所。もっといいとこないの?」リクマが言う。
「探せってことすか? え、あ、うん」ダイが荷物を持ち直す。
「あとで俺も手伝うから」ダイに言った。
「早くしなさいよ」リクマが言う。
「いってらっしゃい」リマが言う。
みんな相変わらず。
俺とスサとクウで創った。
そのあと、リマ、モロギリ、ダイ、リクマ、ナタカが入った。
ナタカはこの春に追い出した。仲間を傷つけたから。
今日来てないモロギリだけど、きっとどこからか聞きつけてやってくるだろう。
スサは。来てほしいけど。
連絡してみるか。
着替えてみんなのところに戻った。ダイがパラソルを持ち上げようとしていたので一緒に支えた。
「さんきゅー! でっかいから助かるー」ダイが言う。
二人でやったらスムーズだった。
できたばっかの日陰にリマとリクマが陣取る。
「これ塗って」リクマがダイに日焼け止めを投げる。
「ええ~、なんで?」
「もっとありがたがりなさいよ。あ、リマのはあたしが塗るから」
「えー、俺、オニと一緒に泳ぎたいよ~」ダイが言う。
「僕が代わろうか?」クウが言う。「もちろん、許可があればだけど」
「それならリマに塗ってもらうからいいわ」リクマが機嫌悪そうに言う。
「最初からそうすればいいのに」ダイがぼそりと呟く。
「ダイダイ、ごめんね」リマがこっそり言う。
ダイと一緒に海に入る。クウはリマとリクマだけ置いていくのが心配だからと残った。
「久しぶりだねー、こうゆうの」ダイが楽しそうに言う。「お花見なくなっちゃったしね」
「迷惑かけるならやれない」
「だよね。俺もそう思ってた。て、後出しじゃ信用ならんかな」
海に入ってもじりじりと暑い。
泳ぎたいけど人が多すぎて。泳ぐだけならプールのほうがよかっただろうか。
「プールって話もあったんだけどね」ダイが言う。「あ、リマちが手、振ってる~。お~い」
「スサは?」
「声掛けたんだけどね~。返事なくって。家の手伝いとか?」
スサの家は神社だ。
俺のケータイはクウに預けてあるが、連絡は来ただろうか。
スサとも会いたい。
「なんならもっかい集まってプールとか?」ダイが言う。
「いいな」
「よし! 決まり!! スサの都合聞いとくね」
「いや、俺が」
「そ? なら任せるね」
クウが泳ぎたそうにしてるから代わった。
リクマはダイを引き止めたそうだったので次で代わろう。
「オニちゃん、また京都?」リマが言う。
「昨日帰ってきた」
「そいえば京都で何してんの?」リクマが言う。ジュースを飲みながら。
「なんつーか」
「悪霊祓いだっけ?」リマが言う。
「なにそれ。エクソシストってやつ?」リクマが言う。
「ちょっと違うんじゃない?」リマが言う。
「そう?」リクマが言う。
「二人とも泳いで来ていい」荷物は俺が見てるから。
「嫌よ。海なんて」リクマが言う。
「なんで来たんだ?」
「リマが行きたいって言うから」
「わたしはクマちゃんと行きたかったんだよ?」リマが言う。
「でも泳がない?」
「泳ぎに来たわけじゃないの。海に来ただけ」リクマが言う。
よくわからない。
「さっきダイと話してたんだが、今度プール行かないか? 夏休み中に」
「いいよー」リマが嬉しそうに手を上げる。
「リマが行くならいいわ」リクマが言う。
「じゃああとは」
スサに聞くだけ。
メールしとこう。
「交代するよー!」ダイが戻ってきた。
「ちょっと」リクマがダイの腕を引っ張った。「リマ、ごめん、先行ってて」
「うん。ゆっくりでいいよ」リマが手を振る。
ダイとリクマが残った。
俺とクウとリクマが海へ。
「クマちゃん、嬉しそう」リマが振り返りながら言う。リマは浮き輪を使っている。
「ああ、やっぱそうなの?」クウが言う。「じゃあ僕ら時間稼ぎしないと」
「どういうことだ?」
「あのね、クマちゃんね、ダイダイのこと気になってるの」リマが言う。
そうなのか。
「知らなかった」
「僕もいま知ったよ。応援したいよね」クウが言う。
ダイにぐいぐい距離を詰めるリクマが見えた。
「水着もね、今日のために一緒に買いに行ったの」
肌がだいぶ露出している水着。
「いっそ裸見せればいいんじゃないか?」
「身も蓋もないって」クウが言う。
「もー、オニちゃんはー」リマにも怒られた。
好きだったら別にいいと思う。
何か間違ってるだろうか。
「過程がだいじなのー」リマが言う。「もう、どうしてそういうこと言うの?」
「リマち、僕から謝るから」クウが言う。「オニも、リマちの前であんまそういうこと言わないでね?」
「悪かった」
そうか。
間違ってたのか。
二人の計らいで、ちょっと長めに時間を使った。
12時。
腹が減った。
「なんか買ってくるけどー?」ダイが全員分の注文を取ってくれた。
「あたしも手伝ったげる。手、足りないでしょ」リクマが言う。
「さんきゅー」
二人っきりになりたいだろうから邪魔しないでおいた。
「なによ、あんたたち、ニヤニヤしないで!」リクマが大声を上げた。
そんなにお腹いっぱいにならなかったが、海辺なら仕方ない。帰ってからしっかり食べよう。
食後はダイとリクマが海に行った。
「全員で行けるといいんだけど」リマがぽつりと呟く。
「私が見てましょうか?」モロギリがやってきた。わらわら引き連れていた女を追い返した。
「お前にケータイ預けるのか」
「なんでですかぁ? あなたがたのロックナンバーなんか知りませんし」
「絶対知ってるよ、これ」クウが言う。
「ロッカー預ける?」リマが言う。
「私の扱いひどくないですか?」モロギリが言う。
「呼んでないもん」リマが言う。
「呼んで下さらないから捜したんでしょうに」モロギリが言う。「でもあなた方の行動範囲は限られてるので、そんなに苦労しなかったですけどね」
「気持ち悪い」リマが言う。
「気持ち悪いね」クウが言う。
「交ざりたいなら最初からそう言えばいい」
「言ったって交ぜてくれないでしょう? わかってるんですから、私は」
「じゃあなんで嫌がらせするんだ」
「それはやっぱり、皆さんの反応がいいから」
「こうゆうところが嫌われるんだよ」クウが言う。
「嫌がらせやめないと誘ってあげないから」リマが言う。
「まあいいですよ。皆さんで海に沈むならどうぞ?」モロギリが言う。
「ロッカー預けるからお前も来ればいい」
「そんな大人数で遠泳大会でもするんですか?」モロギリが訊く。
そういえば。
みんなで行って何をしようか。
考えてなかった。
リマも同じらしく、一緒に顔を見合わせた。
「そんな考えなしの行き当たりばったりなんかやめて、我々はここでお二人の初々しい世界を見守りましょうよ」モロギリがシートに座った。居座るらしい。
ダイがひたすら困り顔をしている。反面、リクマは嬉しそうだ。
「このあともオニちゃん時間ある?」リマが言う。モロギリと離れてシートに座った。
「遅くならなければ」シートが狭いので砂浜に座った。
帰り道でヨシツネさんの家に寄って帰りたい。
「ご飯食べて帰るとか?」クウが言う。モロギリとリマの間に座った。「ちょっと早いかな」
「今度プールに行くんだとか」モロギリが言う。
「ほら」リマが言う。
「気持ち悪いのそういうとこだと思うよ」クウが言う。
「仲間に入れてくださいよ~」モロギリが言う。
ダイとリクマが戻ってきた。
「ええと? なんか? え、どうなってるわけ?」ダイがモロギリを見て言う。「いつ?」
「さっき合流しました。私もプール行きますからね」
「許したの?」ダイが俺たちの顔を見比べる。
「いや」と三人の声がハモった。
「絶対嫌!!」リクマも声を張り上げた。「来ないで!! 今すぐ帰って!!」
「ひどい言われようですね」モロギリが勿体つけて立ち上がる。「わかりました。私は皆様の幸せを願って遠くから見守らせていただきます。では。またプールで」
モロギリがここから離れたのを見計らって、また女がわらわらと集まり出した。
「あのクズ、いつホストに鞍替えしたわけ?」リクマが吐き捨てる。
きっと全員がそう思ったと思う。
適当に遊んでご飯を食べてから解散した。
久しぶりにみんなで集まれて楽しかったけど、やっぱり。
スサがいればもっと楽しかったかも。
スサからはまだ連絡が来ない。
2
同じ日。
火曜日。朝。
京都から帰ってきて疲れて早めに寝た。
すっきり起きれた。
ご飯を食べてからなんとなく外に出た。
8時。
本堂前の階段にじいさんの兄貴が座っていた。
気づかれないように通り過ぎようとしたら。
支部長がやってきた。
まさかのあの人と一緒に。
「早起きは三文の得だと言うが」じいさんの兄貴がよっこいしょ、と立ち上がる。「
「うるさいな。覚悟ができたから来たんだ。さっさと済ませるぞ。弟子!」
「はい!」
あの人がいる。
なんでだ?
なんで支部長と一緒に?
俺のお袋を助けてくれた恩人。
じいさんの兄貴の孫。
それからわらわらと知らない人がやってきて。
最後は、
じいさんの兄貴の中身が代わって。
あの人がいなくなった。
誰もいなくなっても支部長は帰らずに立ったまま。
早く帰ってほしくて声をかけた。
ここは、俺の家なんだから。
「見えてたのか?」支部長がビックリしたように言う。
「なんとなく」
いるのはわかる。
いなくなったのもわかる。
「よろしく言っておいてくれ」
「自分で言え。伝言は知らん」
「だいぶ先になるんだろ?」
「よくわからん。早くて1年後だ」
「わかった。憶えとく」支部長の帰り道と反対側へ足を進める。「ヨシツネさんの家にいる気がするから」
いるけど俺には話しかけてくれなかった。
だから俺も別に話しかけなかった。
「知ってるんじゃないか」支部長が大きく溜息を吐く。
「なんとなく」
俺とは関係のないことが起こって、
俺とは関係のないところで終わったんだろう。
だから別に関わらない。
お袋も元気になったし、俺の家のごたごたも落ち着いたりしたし。
気になるのはじいさんの兄貴だ。
話してると引きずりこまれそうになるから苦手だった。
もしかして、呪いが取り憑いてたせいか?
会いに行ってみようか。
じいさんの兄貴は本堂内に一人で座っていた。
「話いいですか?」隣に座った。
「僕は特にないよ」
話し方とか表情が全然違う。
前はもっと嫌みたらしいというか。人が嫌がることを率先してやってるっていうか。
いまは人自体に興味がなさそう。
「はじめまして。俺は」
「知ってるよ。リクの孫でしょ? 丁寧にどうも?」じいさんの兄貴はそこまで言って、ああ、と頷く。「そっか。君にはわかってるんだね。見えてるの?」
「なんとなく」
「死んではなかったんだけどね。いるにはいたんだよ。でも身体に戻ったの30年ぶりくらいだから。なんか変な感じでね。とりあえずここに来てみたんだけど」
「前の人よりいいです」
「そう? 前がどうなのか知らないけど。
「本当は孫じゃない?」
俺も孫なんだけど。
「そう聞こえた? そうなんだ。僕が身体を手放してるうちに勝手に息子を二人作られちゃってね。勝手に孫もできてたってわけ。だから僕に子孫はいないと思ってる」
俺も一応孫なんだけど。
忘れられてる?
「わかんないです」継ぐかどうか。
「学校関係か寺かって結構な二択だと思うんだよね。だから君がやりたいことがあればそっち優先でいいんじゃない? 君の親がなんて言うかは置いといて」
そんなこと言ってくれるの。
「初めてです」
「無理にいい人認定しなくていいよ。君に興味がないから勝手なこと言ってるだけだから。もう行きなよ。僕ももう戻るし」
「また話に来てもいいですか?」
「いいんじゃない? 家族なんだし」
「ありがとうございます」お辞儀をして外に出た。
じいさんの兄貴が本堂から出て自宅のほうに歩いて行ったのを見送った。
そうだった。
ヨシツネさんに会いに行かなきゃ。
3
次の日水曜日。
ヨシツネさんに会いに行こうとしたら、スサから返事が来た。
家に来てほしいとのこと。
10時。
スサの家は神社だ。
神社の裏のスサの自宅に行った。
「悪かったな。来てもらって」スサは暑い中外で待っていた。
「どうした?」
スサは言いにくそうに玄関先で話し出した。
スサには姉と兄がいる。
姉のほうが。
「体調崩してるみたいで」スサが頭を掻きながら言う。
「心配」
「いや、なんつーか」
自分の部屋から出てこないらしい。
「寝てるんじゃなくて?」
「返事がない」
「やっぱ寝てるんじゃ」
「寝てるにしても」
夏休み入る前からこんな感じなんだとか。
「確かに」
「兄貴は放っとけとか言うけど」
「親は?」
「部屋の前に置いたご飯は食べてるけど」
スサの兄貴以外は結構心配しているぽい。
「それで、頼みがあんだけど」スサが俺の前で手を合わせる。
姉貴を見てほしい。
なんか変なもんが取り憑いていないか。
「別にいいけど」
俺には祓えない。
「見るだけでいいから」
「余計に困ったことになるかも」
「それでも原因がわかるんなら。な?」
スサがそこまで言うなら。
「わかった」
でも部屋に閉じこもってるなら。
「気配とかでわかんねえの?」
「実際に見ないと」
「マジか」スサが頭を抱える。「俺で開けてくれっかな」
スサの家にお邪魔する。
両親は神社に。スサの兄貴は出掛けている。
誰もいないときを見計らったんだろう。
スサの姉貴の部屋の前に立つ。
さすがにここじゃわからない。
「姉貴? 俺だけど」スサがドアに向かって話しかける。「顔見せてくれねえかな? ちょっとだけでいいから」
返事なし。
「なあ、姉貴? 聞いてんだろ?」
返事はない。
スサが悲しそうな顔で一歩下がる。
俺が話しかけてもいいか尋ねたら、スサは肯いてくれた。
「久しぶりっす、お姉さん。
返事ない。
「元気ないって聞いて。いや、あの、ちょっとでいいので出てきてくれませんか? 俺、霊感みたいなのあって。変なもんが憑いてないか見せてほしいんです」
霊感はちょっと嘘だが、おおむね間違ってはいない。
沈黙。
「あの、お姉さん」
しばらく待った。
諦めようとしたところで、ほんの少しだけ、ドアが開いた。
「これでいい?」
「姉貴!」スサが近づこうとしたけど。
「駄目。あんたはそこ」
「わかった。ごめん」
スサは姉貴に弱い。
俺と遊んでるときみたいな勢いがまったくなくなる。
姉貴のことがだいじなんだろうと思う。
俺はきょうだいがいないからわからないけど。
「むー君、こっち」スサの姉貴が隙間から言う。片眼だけ見えてる。「昔からなんか見えるって言ってたもんね」
「もうちょっと出てきてもらえませんか?」
「お風呂入ってないから」
「大丈夫です」
ちょっとためらった後、ぼさぼさの長い髪、サイズの大きなTシャツだけのスサの姉貴が部屋から出てきた。
「姉貴!!」スサが嬉しそうに近づこうとしたけど。
「あんたはそこ。動いたら部屋戻るから」
「はい」
スサの姉貴をざっと見たけど。
「大丈夫そうです。なんかヤなことあったんすか?」
黒いものはない。
だから別の理由。
「うーん、ちょっとね」
「姉貴!!」スサがその場でバタバタ足踏みする。
「うるさい」
「はい」スサがその場で正座した。
「俺でよければ聞きます」
「ちょっと疲れちゃって」
「はい」
「スサが急にいい子になるから」
「え、俺?」
「あ、でも
「うん。やめたのこいつだけ」スサが俺を指差す。
「じゃあまだあんた悪ぶってるの?」
「ぶってるんじゃなくて、悪? いや、悪じゃないのか。え? 俺らって別にそうゆうことするために集まったんじゃねえよな?」
一緒に遊ぶために集まっただけ。
「悪いことはしないです」
「あんたが目立ったことしてるうちは楽だったんだけど」スサの姉貴がキョロキョロする。「あ、父さんも母さんもいない? いないよね? ヨミもいない? あたし、一番上でしょ? 期待されるの疲れちゃって。あんたが目立っててくれたときはよかったのに」
武世来をスサに任せた影響てことだろうか。
「姉貴、え、俺」スサが困った顔をする。
「もっと好き勝手暴れてよ」
「んなこと言われても」
「羨ましいの。好き勝手やれて」
「あ、はい」
「あたしも交ぜてほしいくらい」
「え、さすがに」
「わかってるから。だから、あたしの分まで遊んでね。あ、勉強は一応最低限してよ?」
「してるよ。してるから、姉貴」
「夏休みの間はゆっくりさせてよ。休み終わったらちゃんと戻るから。もうちょっとだらけさせて?」
「母ちゃんたち心配してるし」
「ご飯食べてるから大丈夫って思ってんでしょ?」
「そんなことない。兄貴だって」
「ヨミはしてないでしょ。わかるよ、そんくらい」
なんか邪魔そうだったので一歩下がった。
「むー君、ありがと。スサと仲良くしてくれてるんでしょ?」
「はい。今日も一緒に」
スサはもうちょっと姉貴と話したそうだったが、姉貴が部屋に戻ってしまった。
「お袋さんに言いに行く?」
「黙ってたほうがよさそう」スサが言う。
家の外に出てからスサが急にうずくまったのでビックリした。
「大丈夫か?」
「良かった。姉貴がなんもなくて」
「泣いてる?」
「泣いてねえよ!!」
スサにみんなでプールに行く話をした。
「いいな、それ!」スサも乗り気だ。「いつ行く?」
「これからみんなの予定聞く」
「お前そういうの苦手だろ? 俺に任せろって」
「じゃあ」
まさかの今日に決まった。
昼も一緒に食べて、午後からみんなでプール。
めっちゃ楽しそう。
4
次の日木曜日。
支部長のとこの仕事が始まったらしい。ヨシツネさんが出掛けようとしているところに間に合った。
自転車?
「乗れるようになったん」ヨシツネさんが得意そうに言う。
「練習してたんですか?」
ああ、それで。
俺が水族館についてくのを断ったのか。
10時。
今日は雨だから買い物代行があると思う。
雨の日限定で、お客さんの買い物代行をする。
さくっと終わらせて、ヨシツネさんの作ったご飯を食べて帰った。
帰り道。
「物足りひん顔しとるね」ヨシツネさんの顔は傘に隠れて見えない。
「寄ってっていいんですか?」
「なんもせえへんで?」
18時半。
ヨシツネさんの家。
ヨシツネさんの匂いがしていつもドキドキする。
玄関を上がってすぐのところに座布団が重なってる。ちゃぶ台を挟んで座る。
「俺に付きまとわんでも、友だちと仲良うやっとるやん」ヨシツネさんが麦茶を持ってきてくれる。
「知ってたんですか?」
「日焼け。海行ったのと違う?」
カラン、と氷が鳴った。
やっぱり。
なんでもお見通し。
「あの、明日、行きたいところあるんすけど」
「なに? デートゆうこと?」ヨシツネさんが麦茶のグラスに触りながら言う。「社長サンにバレたら俺、殺されるねんけど」
「殺させません」
「言い過ぎたわ。社長さんの機嫌取りで、他の男と仲良くするわけにいかへんのや。わかってな?」
ヨシツネさんは俺を見ていない。
かといって、支部長を見ているわけでもない。
この人が見ているのは、たった一人。
俺も支部長も知らない。
絶対に届かないとかゆう片想いの相手。
「ちなみに、どこ行こう思うとったん? 行かへんけど聞いたるわ。行かへんねんけどな」
「温泉です」
「おもろいほどに魂胆丸出しやな」ヨシツネさんが鼻で嗤ってくれた。「いっそ清々しいわ。正直やなぁ」
苦しい。
なんで。
俺はいまここにいるのに。
あなたはいつも、
いない人のことを見ている。
「抜け駆けされるほうが悪いんじゃないすか」
「俺がおーけーせえへんからありえへんよ」ヨシツネさんが言う。「この寄り道かてギリギリやさかい。バレたら終わりやねんで? 精々バレへんようにやりぃな」
ここまでしか進めない。
お前の進路はここまで。
これ以上はない。
そう突きつけられている。
雨の音が已まない。
「おもろないやろ?」ヨシツネさんがそう言ってから麦茶を飲む。
喉の動きがよく見えた。
ごくり、と。
上下に動く。
「諦められません」
「せやろな。せやからこうやって付きまとっとるさかいに。想いを向けとることに対して否定はせえへん。俺かて同じことしとるんやし」
例えこの先がなくても。
自分の想いが届かなくても。
そばにいられれば満足?
本当に?
そんな物分かりがよかったら。
「あなたを好きになってません」
「そか。せやな。つまらんことゆうたな。忘れてぇな」
ヨシツネさんが素っ気ないのはわざとだ。
俺にこれ以上無駄な期待をさせないため。
わかっている。
わかってるんだけど。
「駄目です」
できない。
あなたを忘れるなんて。
あなたを誰かに取られるのも嫌だ。
俺の、俺だけの人でいてほしい。
「なんや想いが高まっとるようやけど?」ヨシツネさんが言う。
「好きです」
「何遍も聞いたな」
「俺を選んでください」
「無理やな」
「ヨシツネさん」
すがりついたって駄目だ。
わかってる。
ちゃぶ台に突っ伏してしまう。
頭がぐちゃぐちゃで。
「あなたがほしいんです」
残酷な雨の音がする。
麦茶のグラスが腕に当たる。
冷たい。
ヨシツネさんは、特に何も言わずにそこにいてくれた。
帰れとも言わず。
「そろそろ帰りぃな」
あ、さすがに限界か。
こっそりケータイで時間を見た。
20時。
「泊まってってもいいですか」
「駄目に決まっとるやろ? 駄々こねんといて」
視界の隅で、ヨシツネさんが立ち上がったのが見えた。
「さ、帰りぃな」
仕方なく顔を上げた。
泣いてはない。
胸が苦しいだけ。
「また明日な」ヨシツネさんが玄関を指差す。
「明日また来ます」
「迎えには来んといてな」ヨシツネさんが困ったような顔になる。「ほんならね。おやすみ」
「おやすみなさい」
雨はまだ降っている。
家まではすぐだけど、ちょっとこのもやもやをなんとかしたくて。
九九九階段の麓で電話をかけた。
こうゆうとき話を聞いてくれそうなのは。
「なあに? 珍しいね」クウはすぐに出てくれた。
「ちょっといいか」
「いいよ。てゆうか、外? 雨の音近いね」
「帰り道だ」
「誰にも聞かれたくなかった?」クウの口調が優しい。
「想いが届かなくても諦められない」
「僕と一緒じゃん。なあに? またフラれちゃったの?」
クウに相談するのはちょっと間違ってたかもしれないと、今更気づいたって遅い。
「悪い。そんなつもりはなかった」
クウは、
俺に気がある。
「悪かった。謝ってなかった。利用してた」
「利用って」クウが吹き出した。「そんなに悪どくないでしょ? いいよ。あのときは別に誰も好きじゃなかったんだから、僕に付き合ってくれてただけでしょ? 気にしないで」
でも。
「そんな話するためにわざわざかけてくれたんじゃないでしょ? 相談乗るよ。諦められないなら諦めなくていいんじゃないかな? 好きでい続けるのしんどいかもしれないけど、それだけ好きならそのままいようよ」
「わからなくなってきた」
「自信? それとも、合ってるのかどうか? 誰かに何か言われて諦めないでしょ?」
それは。
そうだが。
「わかんないんだ。ヨシツネさんが、それで幸せになれるのか」
「ああ、そっち? 自分のことじゃなくて?」クウがふふふと笑った。「そうだね。そうゆうところが、オニらしいね。笑ってほしいんだもんね? 笑顔にしたいんだよね?」
絶対に届かない片想いは、絶対に届かない。
そんな思いを抱えていたって、どうにもならない。
それじゃあ、あなたはずっと。
「オニが幸せにしてあげなよ。そうゆうことじゃないの?」
「そうしたいんだが」
そうするつもりではあるが。
「すればいいよ。ガンバって。自信持って。間違ってないよ」
クウはいつもそうやって励ましてくれる。
「なに? 僕がオニを否定しないって思ってる? よほど間違ってたらさすがに言うよ」
「ちょっとは間違ってるんだろ?」
「好きになること自体は間違いじゃないよ。それにね、オニ、ちゃんと成長してるよ。いままでだったら無理矢理襲ってるでしょ? 力づくで。でもしてない。ちゃんと、大切にしてるってことだよ」
そうだろうか。
そういえばそうか。
なんとか、我慢できてる。
「大切にしてあげて? 僕、ちょっとすれ違ったことしかないけど、すっごく寂しい雰囲気の人だったから。誰かがそばにいてあげたほうがいいと思うよ」
「わかった。そうする」
「さて。そろそろすっきりできた?」
「悪かった。突然」
「違うよ。そうゆう時はお礼を言うんだよ」
「ありがとう」
「よくできました」
すぐ隣にいたら、頭を撫でるだろうな、という近さを感じた。
「切り上げるような感じになってごめんね。そろそろ帰った方がいいよ。遅くなると心配されるよ」
「わかった。ありがとう。また」
「うん、困ったらいつでも連絡して。力になりたいからね」
電話を切った。
21時。
家に帰ると、親父とお袋が待っていた。
連絡せずに帰りが遅くなったのを謝った。
怒ってはいなかった。
クウの言う通り、心配しただけ。
じいさんにもひとこと言われた。
別に割とどうでもよかった。
明日。
なんとかしてヨシツネさんと一緒に出掛けられないかと考えてた。
5
金曜日。
朝10時。
「俺が、行ったらたまたま
朝からずっとこれをお経のように繰り返している。
そんなこと何度も言わなくたって。
現にいま温泉に一緒に来てくれてるんだから、言い訳なんかどうだっていい。
「ありがとうございます」
うれしい。
めちゃくちゃうれしい。
朝、ヨシツネさんの家を訪ねると、珍しくヨシツネさんは起きていて(朝に弱いから寝ているはず)、出掛ける準備をしていて。
現地集合な、と言われて、ケータイに地図が送られてきた。
プールと温泉の複合施設。
プールには、つい一昨日に武世来のみんなで行った。
この温泉に一緒に来たかった。
入口の前でヨシツネさんが待っていた。
そして、あの例のセリフを言って、施設の中に入った。
脱衣場で服を。
「じろじろ見すぎやで?」ヨシツネさんがタオルで前を隠す。
白い背中が眼に毒で。
自分で提案しておいてなかなかかもしれない。
耐えられるか、これは。
「ほな、行くで?」
プールに来たことはあったけど、温泉は初めて。
広い。
とにかく広かった。
内風呂が5種類。露天風呂が2種類。
サウナも岩盤浴もある。
ヨシツネさんは軽く掛け湯をすると、露天に向かった。
「気持ちええな。やっぱデカい風呂はええな」ヨシツネさんが湯に浸かりながら言う。
隣に入らせてもらう。向かいは刺激が強すぎる。
湯加減は熱くもなくぬるくもなくちょうどいい。
朝一番の時間帯なので人はまばら。露天風呂にはいまのところ誰もいない。
「あの、なんで来てくれたんですか」
「たまにはええやろ」ヨシツネさんはそれを言うと黙ってしまった。
俺としては来てくれただけで嬉しかったが、理由が気にならないわけではなくて。
「たまに一緒に出掛けてくれますか?」
「せやからしとるやん。たまにな」
なんだかいつもより素っ気ない。
今日はあんまりしゃべりたくない日なのかもしれない。
でも話したくなかったらそう言うので、言わないということは話してもいいのだろう。
「温泉好きなんですか?」
「好きやで」ヨシツネさんが頷く。
「また誘ってもいいですか」
「もう次のこと考えとるんか?」ヨシツネさんが息を吐く。「気ィの早いやっちゃな」
しばらく露天風呂に入っていた。俺はのぼせないように半身浴したりして調節した。
「他のお風呂行きませんか?」
「俺は露天が好きやさかいに」ヨシツネさんが言う。「行ってきてええよ」
「ヨシツネさんが行かないならいいです」
「そか」
と言っていた割に、他の人が来たら上がった。単に独り占めしたかっただけらしい。
他の風呂も順番に入って、最後にもう一度露天風呂に入りに来た。
「露天好きですね」
「気持ちええやろ?」ヨシツネさんが言う。
ヨシツネさんの気が済むまで入って(というかまた他の人が来るまでだったが)脱衣場に戻った。
ヨシツネさんの肌がすべすべしてるように見えてドキドキした。
ヨシツネさんがドライヤで髪を乾かしているのを横目に座って待っていた。
「ええ風呂やったな」
ヨシツネさんが満足そうにしているので俺も嬉しかった。
12時。
レストランで昼食を採って、帰り道。
「家にお邪魔していいですか?」
「下心あらへんのやったらな」ヨシツネさんが言う。
それは無理そう。
「無理そやな」と言いつつも家に寄らせてくれるからヨシツネさんは優しい。
13時半。
家の中はそこまで暑くなかったが、ヨシツネさんは急いでエアコンと扇風機を付けた。帰り道のほうが暑かった。
洗面所で顔を洗わせてもらった。
玄関を上がってすぐの部屋。
ちゃぶ台と座布団がある。正面に向かい合って座った。
「なんもあらへんよ」と言いながらも、ヨシツネさんは麦茶をくれた。
いつもそうなのだが、どうしてヨシツネさんは口では厳しいことを言って態度は優しいのだろう。
だから期待してしまう。
でも優しくされたら嬉しい。
「ひどい奴やろ?」ヨシツネさんが俺の心を読む。「どうする気もあらへんのに。温泉行ったり、家寄せたり」
どっちがいいだろう。
諦めるためにまったく相手にされずに冷たくされるのと。
口とは裏腹に思わせぶりな態度で期待だけさせられるのと。
どっちがつらいだろう。
「友だちではあかんの?」ヨシツネさんが言う。「友だちのつもりで接してるんやけど」
友だち。
「恋人は無理ってことなんですよね?」
「何度も言うとるけど、先約がいてるさかいにな」ヨシツネさんが遠くのほうを見る。
その遠くのほうに、ヨシツネさんの好きな人がいるんだろう。
冷房が効いてきた。
扇風機の風が首の辺りに当たる。
「友だちでもいいので、これからもそばにいていいですか?」
「社長サンは嫌な顔したはるけどな」ヨシツネさんが苦笑いする。「どっちの応援もしてへんけど、一応、社長サンに生活費もらっとるさかいに。気は遣わなあかんのよ」
俺が金持ちだったら俺がヨシツネさんを養ってあげられるんだろうか。
「寺継ぐんやろ?」ヨシツネさんが言う。
「あんま考えてないです」
寺は誰かがどうにかすればいい。
そんなことより俺は、ヨシツネさんと一緒にいたい。
「俺のどこがそないにええの?」ヨシツネさんが冗談ぽく言う。「誤解を承知で言うんやけど、俺なんか好いてもなんもおもろないのにな」
「光が届かない深い暗い海の底に、キラキラ輝く宝石があったんです。それを持って帰ろうとしたら、宝石はそこから動きたくないって言うので。仕方なく海に潜って宝石を見るだけにしてるんです」
「ほお、おもろい例えやね。ケイちゃん詩人の才能あるのと違う?」
「持って帰ってもよくなったらいつでも言ってください」
「気長やね」
わかってる。そんな日が来ないことくらい。
麦茶のグラスが空になったので帰ることにした。適度に切り上げないと自制が利かなくなる。
14時半。
「明日は仕事ですか?」靴を履きながら聞いた。
「まあせやな。夏休みも終わりやさかいに」ヨシツネさんが言う。「またな」
そうやって優しくするから。
「はい、また明日」
俺じゃなくても勘違いする。
でもいまはまだ勘違いでもいい。
勘違いだってわかってるし。
これ以上にもこれ以下にもならないこともわかってる。
耐えるのは慣れてる。
それはそうと、今日の夜中は眠れないかもしれない。白い肌が眼に焼き付いてて。
ああ、楽しかった。
夏休みで一番楽しい日だった。
炎ゆる真昼に陽と揺らん 伏潮朱遺 @fushiwo41
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