心のどこかで願っていた結末をありがとうございます──。

アングラ、というにはやや軽く、日常というには重すぎる。それが出だしの印象。

”ダークウェブ”に殺人代行をした冬平が手違いで少女に殺されかけて物語は動き出すのですが、『依頼遂行に失敗した少女が”機関”に消される』というところが本作の鍵でした。

ボーイミーツガール、かと思えばバッドエンドが脳裏をよぎる。けれどそれを匂わせながらも、『結婚して身分を詐称する』という行動を取らせるところが、どこか憎いです。否、そうなるからこそ、面白いのですね。

そして、ここからが本作の醍醐味です。これを文句なしの純愛と言わずしてなんと言いましょうか。少女、水乃に対し一人の少女として行為を抱いてしまった冬平と、そんな彼を『利用する対象』と捉えていた水乃が、彼に絆され、何気ない日常にある種の救済を見出し、彼を好きになってしまっていた──。

以降、”機関”からの接触などと重要な展開が続き、本格的に水乃と冬平の関係が途切れるのだろうかという不安が読者の胸中を渦巻きますが、そんななかでも、そんな状況であるからこそ、最期の日まで『やりたいこと』をやり切るその姿が、本当に純愛だなと思いました。残されたタイムリミットのなかで懸命に生きる姿は、間違いなく、綺麗です。

バッドエンドも覚悟しましたが──同じ物書きとしてはバッドエンドに一貫させても良かったのかな、と思いましたが──やはり読者としては、どこかで望んでいたハッピーエンドが見れて、満足しています。面白かったので一気読みさせていただきました。