「純愛」なるものに胡散臭さをおぼえるのはわたしだけではないことと思います。ですが、主人公の冬平と「代行人」の水乃の関係性は、「純愛」に実態を与えたらこんななのではないかとさえ思わせるものでした。ふたりが互いを想い合うようすはあまりにも美しく、運命をつかさどる女神はすこし良い仕事をしすぎじゃないかと思います。
個人的には図書館で出会うあの大学生が結構好きで、ああいった名前のない人物をも輝かせる力がある。無駄な人物は存在しない。しかし、最小限の人物だけで箱庭のような物語を完成させてしまう。これは彼にしかできない芸当だ。同期として誇りに思う。