第5話 赤い指輪と謎の人物

ようやく金持ちの人の家にたどり着いた男達三人。

いきなり来た三人に金持ちの人は驚いたようだったが心よく話を聞いてくれた。

「私たちは、あなたが赤い指輪を持っているって話を聞いてやって来たのよ、三日月が彫られている指輪よ!」

「赤い指輪……あぁ、持っていたよ」

金持ちの人のその言葉にミチルとヒカルは顔を輝かせたが、男は一つ気になったことがあったので尋ねることにした。

「その言い方だと今は持っていないようにも聞こえるのだが……そもそも指輪は元からあなたのものだったのかい?それとも……」

男の言葉に、はっとしたミチルは金持ちの人の答えを促すように顔を見つめる。

「いや、その指輪はむかし買ったものだよ、何でも世界で一つだけの指輪だとさ……それから君の予想通りだよ、今はその指輪を持っていない」

「どこにあるのよ!」

金持ちの男は、ミチルの勢いに戸惑いながらも話を続ける。

「少し前に男の人が訪ねてきたんだよ……二十代くらいの若い人だったかな……僕が指輪を持っているという噂を聞いて訪ねてきたらしくその指輪を高値で買い取ったよ!」

「その人…何か言ってなかった?」

「何か……そうだ!小さな女の子が訪ねてきたらよろしくって……」

「小さな女の子……!」

おそらくミチルのことだろう。その男の人はミチルのことを知っているということになる。

三人は金持ちの人にお礼を伝えてその場を去った。


歩きながら三人はこの先どうするかを考える。指輪を買った男の人の居場所もわからないため男は諦めはじめていた。

「ミチルはどうするかつもりなのかい?」

「そうね……その男の人を探したいわ!」

「でも……どこ……いるか……わからない」

ヒカルの言葉に男も頷く。しかしミチルの辞書には諦めるという言葉は存在していなかった。

「男の人は私によろしくって言ってた……もしかしたら近くにいて私たちが来るのを待っているのかもしれないわ……」

「じゃあ周辺を探してみるかい?」

「そうしましょ」

諦めはじめていた男だったが、ミチルの熱意におされて男の人を探すことを決意した。

男はミチルに弱いなと自覚していた。どうせあと少ししか一緒にはいられないのだから……男は最後まで諦めないことを胸に誓った。


その夜、とある街角に一人の男の人が立っていた。その人は赤い指輪を指にはめ、手をかかげる。月あかりに照らされた指輪は神秘的に光り輝いている。


「やっと取り戻したよ……もうすぐ会えるね……ミチル」

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君の指には赤い花を。 桜吹雪 @ama-yadori

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