第一章:快適な拠点作り~本来の目的2~

「よし、出来たぞ」


 手元にある材料で出来上がった鞄は腰に下げるタイプの茶色い小さな鞄だ。


 探索者が良く回復役などを入れてるポーチに似せて作ったから疑われることは早々無いだろう。


「オオオ、オマエキヨウダナ。ミカケニヨラナイ」

「おい、一言余計だ」


 俺の言葉にピクシーは嬉しそうに「フフフ、スマナイ」と零し、早速鞄の中に入り込む。


「ウン、イゴコチモワルクハナイ。ヨクモナイガ」

「だから一言余計だっての」


 そもそも鞄に生きた生物を入れることは想定していない作りなんだから仕方ない。そんな想定をして作れば疑われるだろう。


「じゃあこれでピクシーさんにご馳走出来るわね!楽しみだわぁ」


 にこにこと両手を合わせて喜ぶ母には悪いが気分は割と憂鬱ではある。このピクシー1人にご馳走したら他のピクシーにもご馳走しなければならないだろう。一体いつ終わることやら。


 かと言って一気に全員を連れて行くとリスクが大きすぎて危険だ。探索者協会やらだけではなく、恐らく世界から注目されるだろう。俺のニートライフは軟禁状態になり、姉や兄だけでなく家族全員が拘束される筈だ。分かってないのは母くらいだろう。


 まあ、知ってたら多分、自分でどうにかして通う! とか言い出しかねないし結局、これが最善策なのだろう。


「それじゃあ、早速周りの風景とか見回りましょう! ここよりいい場所あるかもしれないし!」


 何だかんだあって忘れていたが、今日は姉と兄の配信の下見に来ていたのだ。その言葉に思わず変える気満々だった足を広場へと向ける。大丈夫大丈夫、忘れてたなんて気づかれてない。


「ナニヲスルンダ? ゴハンハマダ?」


 最早飯のことで頭がいっぱいになっているピクシーに事情を説明すると「ナンダ! ソンナコトカ!」とカバンから飛び出す。


「ワタシガシッテイル サイコウノ バショニ アンナイシテヤル!」


 そう言うと周りでソワソワとしていたピクシー達が一斉に動き出した。


 何事かとピクシー達を見れば、何やら魔法を使いそうな気配。


 ここまで来て攻撃されるの!? と慌てたが、攻撃が飛んでくることはなく、ゆっくりと俺達の体が浮き出した。


「と、飛んでる!?」


 姉が素っ頓狂な声を出す。確か空中に浮くっていうのは理論的には出来るが実現できていない魔法だったか。


 俺は魔法には詳しくないから『アニメでは鉄板だよなー』くらいにしか思わないが、現役の魔法使いにはショックがでかいのだろう。


 ちらりと姉を見れば「浮いてる…しかも動いてる…え? 浮いてるの?」とうわ言のように呟いている。ちょっと怖い。


「どこに行くんだ?」


 俺たちは花畑を通り過ぎ、その先にまたあった崖の上を飛び続けていた。


下は木々が茂っており下がどうなっているか分からない。だがここで急に落とされたら無事では済まないとわかる程度には高度が高く、内心焦る。


「アンシンシロ、モウスグダ」


 ピクシーがそう呟いてさらに5分。


「うわぁ……」


 誰だろうか。感嘆の声が聞こえてくる。母の「凄いわねぇ」という声や「ダンジョンにこんな所があったとは」とつぶやく声も。俺も何か言ったかもしれないが、脳は目の前の光景に釘付けだった。

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ダンジョンニートになろうとしたら、家族が付いてきた件 果報は寝て待つ @tarikihongan-z

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