第9話中学時代の二つ名は死神

 夜遅く誰も来そうにない廃ビルの中に女の子を背中に乗せた男の二人組がやってくる。


「あれぇお姉ちゃん、待っててくれたんだ」


 二人の他にもう一人二人とは別の学校の制服を着た謎の女子生徒が廃ビルの中にいた。女の子は男の背から降りるとお姉ちゃんと喜んで呼び女子生徒の元へと駆け寄る。だが女子生徒は一言も喋らずに突然駆け寄ってきた女の子の髪を強く引っ張る。


「いたた、いたいよお姉ちゃん」


 女の子は髪を引っ張られているのにも関わらず笑顔のままでいる。


「えっとお姉ちゃんお願いされてた人探しの事だけど多分会ってきたけどお姉ちゃんが探してる人じゃなかったよ」


 そう女の子が言うと今度は女の子の顔めがけて何度もビンタをする。男が慌てて止めに入るが女の子の頬は赤く腫れていた。


「ごめんねお姉ちゃん私が役たたずだから怒ってるんだよね、でも私お姉ちゃんの事だけは絶対裏切らないから」


 何も言わずに女子生徒は廃ビルから出ていく。


「お姉ちゃんの事だけは裏切らないか、あの男の正体が分かったにも関わらず嘘をつくなんて私の妹はとんだ嘘つきだな」


 ずっと口を開かず黙って傍観していた男は女子生徒がいなくなると女の子に向かって話し始めた。


「お兄ちゃんそれ内緒って言ったでしょ、少なくともまだお姉ちゃんには黙っておくだけだよ、それにまだ完全に正体を掴めてはないから嘘は言ってないよ」


 女の子は廃ビルの外を眺めて女子生徒が街の方へと行くのを見て微笑むと男の方に向き直る。


「だってお兄ちゃんも気になるでしょ、お姉ちゃんが私達にまで頼む程探してほしい人の事」


「まぁ確かにあの男の存在は私も気になる。私に体を抑えられていたが急に力が増して自力で抜け出せたのはそれ程鍛えているからだろう」


「だよね、私お兄ちゃんに体を抑えられて自力で抜け出せた人初めてみたもん。いつもならお兄ちゃんに体を抑えられたら皆すぐに気を失ってるのに」


「まぁでも確かに噂ではなく事実なのかもしれないな、中学時代最も強いと恐れられ向かってくる人間を全員病院送りにしてついた二つ名が死神のユウだったか」


「へー二つ名なんてあったんだ、てかお兄ちゃんもよくそんな噂話知ってたね」


「まぁ私もとある人物から教えてもらって知る事ができたが、お前には教えてなかったからな。それに二つ名ならお前もあるだろう。今日は遮られて言いそびれてしまったが」


「あんなの呼びたがるのお兄ちゃんだけでしょ私は全然気に入ってないから。それよりお兄ちゃん私あの人にもっと接近してみたいから少し協力してくれないかなぁ」


「仕方ない、妹の我儘を聞くのは兄の責務だからな、私は何をすればいい」


「えっとねぇ」


 女の子は振り返り男に笑顔を見せると男に新たな計画案を説明する。そして男と女の子は家には帰らずに二人は廃ビルの中で夜を過ごす。

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学年四人の美少女の中から不良時代の過去を知る謎の手紙が一枚届く、そして四人から告白される ミナト @imoutominato

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