第8話中学時代の元仲間の後輩を助ける

 偶然空き地で鈴菜の友達である叶瀬月と会った俺は彼女を連れて、近くのファミレスへと移動する。


「えと、つまりお兄さんの中学時代の後輩である友人さんがさっきの怖い人達にどこかで酷い目に合わされてるかもって事ですか?」


「まぁ簡単に言うとね」


 叶瀬月は塾帰りだったようで近道の為に空き地を通り過ぎようとして。さっきの男達が空き地から出てくるのを目にしただけで、さいわいにも俺が男達に言った言葉を聞かれずに済んだ。


「それでお兄さんは、もしかして言われた通りに今日の夜九時にまたあの空き地に行く気なんですか」


「まぁそりゃ中学時代に可愛がった後輩だから助けない訳にはいかないからね」


 俺は頼んだコーヒーを飲み終わり席から立ち上がろうとして、叶瀬月に制服の裾を掴まれて止められる。


「もしこれでお兄さんも危ない目に合ったら、止めなかった私の責任になるので、終わって助け出せたら私の携帯に連絡してください。もし全然連絡がなかったら警察に連絡しますから」


 叶瀬月は携帯を取り出して電話番号を見せてくる、俺も携帯を出して叶瀬月の番号を登録してすぐにかける。


「それが俺の携帯番号だから、それと警察だと後々めんどくさいから勘弁して欲しい、もし俺からの連絡がなかったらここにかけてくれ、その人なら信用できる」


「分かりました」


 叶瀬月は頷き、二人分の会計を済ませてからファミレスを出た俺はコンビニに寄ってプリンを買って一旦家へと帰る。


 そして夜の八時頃、俺は少し運動してくると言って家から出て夜九時丁度に空き地に戻って来た。そこにはさっきまで複数人いた男達は居なく、女子一人とあの時のリーダー格の体格のいい男が立ちその二人の隣では元仲間であり後輩で今は縄で縛られている男が座らされていた。


「ふむ、時間通りだな」


 体格のいい男が話始めると、俺はそいつの隣に立つ女子に目線が向く。


「確か放課後うちの学校の校門で会ったよな」


 そいつは放課後に校門で目が合うとすぐに離れていったピンク髪の制服を着た女子生徒だった。


「一瞬だったのによく覚えていますね」


「先に紹介しよう、私の妹でありこの地区の中学をまとめて取り仕切っているボスの」


「お兄ちゃん、そんな説明しなくていいから」


 話を遮って口を開いた女子は愉快そうに微笑む。


「あなたが中学時代に最も強いと恐れられて誰にも負けることはなく向ってくる人間を全員病院送りにしたっていう噂を聞いたんですけど」


「今あって俺がそんな奴にみえるか、それにそんな噂話は一体誰に聞いた?」


「実は私強い人の事が大好きで見れば分かるんだけど。あなたが本当は強いけどそれを隠したげっているって事だけはわかるかもですねぇ」


 微笑んだ直後、黙っていた男が急に俺の方に飛び込んできて体を抑えられた。


「悪いが私もそんなにやわじゃない」


「へー確かにな、けどその言葉そっくり返すよ」


 俺は力ずくで抑えられていた体から抜け出す。


「今回は挨拶がしたかっただけなんで、この辺で終わりにしておきしましょう」


 そう言うと男が女子生徒を背負って二人はすぐに空き地から走り出して町の方へと消えていくのだった。俺は男に駆け寄り縛られていた縄を切る。


「大丈夫か?」


 手を貸そうとしたが男はその手を取らずに自分で立ち上がった。


「今日は俺のせいで巻き込んでしまってすみませんでした、でもなんで何も言わずに俺達の元から離れていってしまったんですか? あなたが消えてから俺達が弱くなったの知ったのかあいつらの他にも喧嘩を売る奴らが増えてきてるんですよ」


「悪いが俺は戻る気はない、それに今回は助けたが次はもう助けには来ない。仲間にもそう伝えておけ」


「優さん、俺達はあんたなしじゃ」


 男の言葉を無視して、俺は空き地から離れる。そして携帯を使って登録しておいた叶瀬月の番号にかける。数コールの後叶瀬月の声が聞こえてきた。


「お兄さんですか!?」


「ああ、ついさっき友人を助ける事ができたよ」


「良かった全然連絡がない様子だったので。もう少し遅かったりしたら、お兄さんから教えてもらった番号にかける所でしたよ。お兄さん?聞いてますか」


「ああ、悪い。それじゃあもう遅いし切るな、また鈴菜の事頼むよ」


「あ、切る前にお兄さんに聞いておきたい事があるんですけど」


「俺に? 何かな」


 丁度通話を切ろうとした所で叶瀬月に止められる。


「明後日の休日なんですけどお兄さんお暇ですか?」


「まぁ予定は入っていなかったと思うけど」


「なら鈴菜ちゃんとお兄さんと一緒に映画を観に行きたいのですが」

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