第7話叶瀬月と空き地で偶然会う

「おにぃ約束通り迎えに来たよ、一緒に帰ろ」


 放課後になると鈴菜が教室まで迎えにきた、それまで騒いでいたクラスメイト達は鈴菜の方に視線が向く。席から立ちあがって鈴菜の方に向かうと、クラスメイトの男子達が教室に入ってきた鈴菜に距離を詰める。


「君、もしかして昨日入学してきた新入生の子?可愛いね」


「あの……すみません、私おにぃを迎えに来ただけなんで」


「悪いな、鈴菜」


 クラスメイトの間に割り込んで鈴菜に近付く、クラスメイト達は少し驚いた顔をする。


「全然あの、おにぃ早く帰ろう」


 そのまま鈴菜と一緒にすぐに教室をでて下駄箱で靴に履き替えて校舎から外に出ると朝通りかかった掲示板の周りには複数人の生徒達で賑わっていた。


「あれ、なんだろうねおにぃ」


「さあな、それよりも鈴菜早く家に帰ろうぜ」


 鈴菜は掲示板の周りにいた生徒達が気になって近づこうとしていたが俺は興味が無い振りをして鈴菜に声をかけて素通りする。


「おにぃ待ってよ」


 鈴菜はすぐに俺の後ろから追ってくる。


 校門を出ると、別の学校の制服を着たピンク髪で目立つ女生徒が人を探しているようだった。そして校門から出た俺と目が合うと、校門から離れていく。


「おにぃ、もしかして今の人と知り合いなの?」


「知り合いだったら俺と向こうも声をかけるだろう」


「まぁそうだよね」


 あの制服には少し見覚えがあった気がするが、別に気にする事でもないので、俺は鈴菜と一緒に帰る。


「そういえば鈴菜、今日はあの子と一緒に帰らないのか、ほら昨日友達になった」


「月ちゃんのこと? 月ちゃんは昔から通ってる塾があって今日は塾の日だから今日は一緒に帰れないからごめんって言って放課後になるとすぐに教室から出ていったよ」


「へー昔からって事は相当勉強熱心なんだな」


 鈴菜と学校であった事を話ながら一緒に帰っている途中に俺の形態にメッセージが一通届く。


「おにぃ、急に立ち止まってどうかしたの?」


「いや別に、悪いけどな鈴菜。今母さんからメッセージで買い物を頼まれてなスーパーに寄って行くから先に帰っていてくれないか」


「えーなら私も一緒に行くよ」


「いやそんな量もないみたいだから、俺一人で平気だよ。だから悪いな鈴菜、プリンも一緒に買ってくるからさ」


 俺は鈴菜をその場に残してすぐに走り出す。


「もうおにぃのバーカ」


 後ろを見ると鈴菜が何か大声で叫んでいるようだが俺の耳にはもう聞こえない距離だった。


「あれ、でも確かスーパーに行くならあの曲がり角を右に曲がらなくちゃ結構遠回りになるのに、なんでおにぃ曲がらずに学校の方面に行ってるんだろう?」


「確かここだよな」


 メッセージに示された場所に到着すると空き地だったそして昨日水瀬先生に返り討ちにあっていた見覚えのある男達が複数人いることに気付く。


「もしかしてボスが言ってたのってあいつか」


 そして男達の方も、空き地にやってきた俺に気付いてヒソヒソと話し出す。


「なぁちょっと聞きたいんだが。今さっき俺の知り合いから変なメッセージを送ってきたのはお前たちの中の誰だ?」


「どうやら本当にこいつがボスが言っていた奴で間違いないらしい」


 こちらの話をろくに聞かない様子でヒソヒソと話す男達そして数分後男達の一人にメッセージが届いたようで携帯で確認しているのが伺える。


「悪い、本当は私達のボスが来て説明するはずだったんだが急な用事ができたらしくて来られない」


「そうか、そうか。それじゃああんた達が少し痛い目にでもあえばボスとやらが来るかもな」


「おいおい、兄ちゃんそれ本気で言ってるのか」


 いきなりしゃしゃり出てきたそいつは昨日水瀬先生に蹴りをくらって倒れた男だった。


「おい、お前落ち着け。お前は昨日の事でボスに恥をかかせたばっかりなんだからな。ボスが来られないから私が代弁しておくとあんたの元仲間の一人をこちらで預かっている返して欲しければ今夜九時にまたこの空き地に来てもらおう」


 それだけ言って昨日はいなかった体格のいいリーダー格の男を先頭に男達は空き地から去っていく。俺は携帯を使って一人の人間に連絡を取ると確かに一人一昨日から連絡が取れない人間がいると聞く。


「めんどくせぇ」


 そう言葉にして、空き地から離れようとしたら空き地の入口前で鈴菜の友達である叶瀬月と偶然会ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る