第3話後輩の子は絡まれていた


学食に着いた俺と鈴菜、ガランとしている事に鈴菜は少し不満そうだ。


「今日は新学期始めで入学式だしそもそも昼までないんだから学食も閉めてるのは考えなかった訳じゃないだろ」


「分かってるよ、明日からはあるもんね」


鈴菜はフンスと気合いを入れるように意気込む。


「さて、案内はこんな所だろ。鈴菜もうそろそろお昼も過ぎるし帰るぞ」


「うん、あっ待ってお兄。私担任の先生に渡す物があったんだ」


「ならもう一回職員室に戻るか、そういうのはさっき職員室に案内した時に言っておけよな」


「いいよ、さっきお兄案内されたから覚えてるしお兄は先に校門で待ってて」


鈴菜は俺の言うことも聞かずに階段を登って職員室に向かってしまった。仕方なく先に校門に向かって鈴菜が来るのを待っていると、学校の制服を着た女子生徒が絡まれているのを見かけた。


「離してぇ」


「いいじゃん、俺達さすぐそこに飯の美味い店知ってるんだ。だから少しだけでいいから付き合ってくれよ」


「おーい、そこで何してる」


女子生徒の腕を無理矢理引っ張って行こうとした男の一人に女子生徒を庇うように割って入る。涙目になりながら俺の制服の裾を掴んだ。


「なぁあんちゃん、俺達別に悪いことしようって気はないんだよ、ただその子と一緒に飯を食いたいって考えてるだけで」


「あのなぁそれだけならこの子が簡単に涙目になる訳ないだろ、それに俺からは強引にどこかに連れ去ろうと見えたけどな。それとこれ以上ここで騒ぎを起こされちゃ面倒だからさっさと帰ってくれ」


しっしと絡んでいた連中を追い払うように手を振る。それが連中の怒りを買ってこちらに真っ向から向かってきた。


「神聖な学校で何騒いでるんだ」


間一髪女子生徒を守ろうと手が出そうになるがどうやら俺の連絡してすぐに来てくれたようだ。


「ひぃぃ!? なんだコイツ」


「コイツとは失礼な私はここの教師だよ」


連中の男一人が水瀬先生の蹴りで気絶して怯えてしまう。


「きょ教師がいきなり人に手を出していいのか」


「あぁそれをうちの可愛い生徒にしようとしていた奴が言うセリフなのか」


水瀬先生の睨みで連中はそのまま急いで伸びた仲間を運んで逃げていく。


「まっ今回はこんなもんで許してやるから二度とここに近付くんじゃないぞ」


「水瀬先生ありがとうございま」


お礼を言おうと水瀬先生に近付くとさっきの連中に放った蹴り以上のゲンコツが俺の頭に炸裂して地面に倒れ悶える。


「お前は助けるなら先にその子を逃がせ私が昔教えた事を忘れたのか」


「覚えてますよ、敵が襲ってきた時に人質にされる可能性もあるから遠くに行くよう指示しろって」


「覚えてるなら良し、んじゃまぁ今日は大目に見るからその子を家まで送って行くように」


「はぁぁ!? いや今日はこの後用事があって」


「さっき職員室にお前の妹が来てたし一緒に帰るだけだろ。それにその子を怖がらせたまま一人で帰らせる気か? それなら」


「あーあ分かりましたからゲンコツは勘弁で」


水瀬先生は拳を作ってブンブンと回しているのに気付いて言うことを聞く。そして俺の制服の裾を掴んで離さなかった女子生徒はちょこんと地面に座って俺と水瀬先生のやり取りを見ているとさっきの涙目だった姿はなくなり少し笑っていた。


「まぁそういう事だから家まで送って行くけど自転車じゃないならこの付近に住んでいる子だよね」


女子生徒は首を縦に頷く、学校に通っている間この子とは一度も会った事がないし鈴菜と身長が同じくらいの所を見ると今日の入学式で入った新入生だろう。


「月、叶瀬月かなせるなです。よろしくお願いします」


「よろしく、でもちょっと少し待ってくれ、今妹が来るのを待ってて」


「妹さんですか?」


そして水瀬先生はそのままとぼとぼと落ち込み校門へと向かう聞いた所によると俺が連絡した時は職員会議中で職員会議をほっぽり出して俺達の所に急いで来てくれたらしい。


今後教頭先生の説教と職員会議を抜け出した理由を話さなきゃいけない事が待っている事が水瀬先生がとぼとぼと落ち込んで戻る理由だった。


「お兄お待たせ、およ?」


「鈴菜ちょっと訳があってこの子を家まで送る事になった、叶瀬」


「月ちゃん」


鈴菜は俺の言葉を最後まで聞かずに隣に立っている叶瀬月の手を強く握った。

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