第四話『少女』

 そこには、人形のような少女がいた。金糸のように輝く髪の毛が少し乱れ、磁器のようにキメの細かい肌が少し汚れはしていたものの、地面をえぐるような衝撃に襲われたにもかかわらず、そこには

「おい、しっかりしろ!!」

 かなめは気を動転させながらも少女に呼びかけるが、反応はない。

「と、とりあえず救急車!!」

 震える手を何とか動かし、何度か押し間違えながらも、要は救急に非常電話をかける。

『はいこちら119番、消防署です。火事ですか、救急ですか?』

「えっと、人が落ちてきました!!」

『救急ですか? 火事は起きていますか?』

「いや、火事じゃないです。人が飛んできて倒れてます!!」

『飛んできて……? 今どちらにいらっしゃいますか?』

「高殿山麓公園です! 空からいきなり女の子が飛んできたんです!!」

 どう考えても意味不明な回答だ。ただ、端的に答えるならばこれ以上のものはないだろう。

 ただ、そんな意味不明なものでも『万が一』ということがあるから救急は大変だ。

『……わかりました。今あなたのそばに女性が倒れているんですね?』

「そうです」

『すぐに現場に急行します。第一発見者の貴方は待機をお願いしても大丈夫ですか?』

「大丈夫です」

『承知しました。ではすぐに向かいます』


 ツー……ツー……ツー――


 とりあえずやることはやった。数分もすれば救急車が来るだろう。

 勢いに任せてやり取りをしたが、嘘は全く言っていない。あとは救急に任せて自分が状況を報告すればいい。そう思っていた要だったが、気が付くと少女の様子が変わっていた。

「どうしたんだよ!? おい!!」

 ついさっきまで少女はピクリとも動かなかったというのに、首あたりを押さえてうずくまっていた。

「く、首が……熱い……」

「首?」

 押さえている手をどけて見てみると、そこには何かに噛まれたような穴が四つ開いていた。

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彼は誰時に灰は舞う 大鷹 涼太 @Ryota_Otaka

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