38話 帰宅
ベッドに寝転んで、ウルスラとテラフィナとずっと話をしていた。
わたしのこと、グランマ達マイファミリーのこと、スラムのこと、アマンダさん一家のこと、…ジョゼのこと。
ウルスラのことも聞いた。
実はかなり立派な神様なんじゃないだろうか…?
ずっと人の死を看取ってきた神様か……なんでこんな残念な性格なんだろう?
テラフィナは…生まれてすぐウルスラと一緒に封印されてずっと眠っていたみたいで、わたしの中に入ってはじめてはっきり目覚めたそうだ。
邪神なんて言うものだから悪い神だと思っていたんだけど…実はなにもしてないよね?あれ?…邪神って…ウルスラの方じゃ……。
ただ危険な神様なのは身に染みてわかっている。
恐怖を司り、恐怖を糧に際限なく権能を増す……そういう神様なんだそうだ。
権能を借りるのはオススメしないとウルスラに注意された。
二人は一応、一心同体の存在みたいでウルスラの方が主神格。
テラフィナがお願いを聞きたがるのはウルスラの影響らしい。
…一心同体といえば、わたしもそう。
二人と魂が融合…というよりは接着?みたいな感じで…肉体から離れかけたわたしの魂をウルスラが繋いでくれているみたいだ。
本当、ギリギリ生き残ったんだなあ。
もし…ウルスラをつれてこれなかったら間違いなく死んじゃってた。ウルスラに感謝だ。
そういえば…結局わたしの中にいた誰かは一体なんだったのかな。
見覚えがあるような、ないような……。
コンコンとドアがノックされてクレアさんが呼びに来た。グランマから話があるそうだ。
ベッドからピョンと飛び降りて元気をアピールしてからクレアさんについていく。
▽ ▽ ▽
「シズ。アンタは謹慎だよ。一週間、クランの仕事も、色街の仕事も、訓練も無しだ、いいね?」
「はい…グランマ」
「それと…シズを助けてくれた神様だが……その力をシズ、アンタが自由に使うことはできるのかい?」
「えーと…」
わからない…聞いてみよう…。
[ねぇ、どうなの?]
[私はオススメしないと言いましたよ…でも…テラフィナは思ったより協力的ですから…少しなら大丈夫…かもしれません。なにより私たちは一心同体です。本当に命の危険が迫ったときはテラフィナが黙ってはいないでしょう]
[しずなら、だいじょうぶだよ]
「えと…少しなら…あと危ないときは…助けてくれるみたい…」
「そうかい……テラフィナ様と…」
「ウルスラ…もう1人はウルスラ」
「ウルスラ様、テラフィナ様。どうかシズをお守りください……ゴホン……シズ、アンタに異邦の神が宿っているというのは誰にも話しちゃいけないよ。アタシとクレア、カルロス、それとシズ、この4人の内だけに留めておくんだ」
「…はい」
「もし、どうしても誰かに説明しないといけない場合は神とは言わず、
「…はい」
「…アタシもどうしたらいいかわからないのが正直なところだ。ただ…教会はいい顔をしないだろうし、他の組織…とくにスズナシの連中は異邦人狂いだ。異邦の神だなんてどんな反応をするか…知られるべきじゃないだろうね」
「…はやく等級をあげさせないとね」と小声でぼやくとグランマはパンと手を叩いた。
「よし、話は終わりだよ。カルロスに送らせるから早くスラムの家にお帰り。アマンダにはアンタの無事を伝えてはいるが…早く帰って顔を見せておやり」
「はい…グランマ」
「言っておくが、今度いいつけを破ったら承知しないからね!1人でジョゼを探しに行くのもダメだ!1週間はクレアかカルロスをあんたにつけて見張らせるからそのつもりでね!」
「はい……グランマ…ありがとう…」
「…シズ…気をつけてお帰り」
「…うん」
◇ ◇ ◇
カルロスにつれられて帰っていくシズを見送って部屋に戻り、クレアに紅茶を入れてもらう。
「……シズは本当に数奇な運命の元にあるようだね…」
「そのようです」
紅茶を一口、口に含み、ほぉと息を吐く。
「いい薫りだ…どこの茶葉だい?」
「ブルーノがブレンドしました」
「…あいつの趣味はどうなってんだい」
「最近は甘味処巡りに加えて茶葉の卸店に行っているようですよ」
「いい趣味だよ、まったく」
もう一口、紅茶を飲んで誰にともなくひとりごちる。
「クラウス…あんたはどうしようもなく愚かな男だったが……最後の最期に娘を救ったようだ……あんたに感謝する日が来るとはねぇ」
軽くティーカップを掲げて、中身を一気に飲み干す……さて、早くジョゼを探してやらないとね……。
◇ ◇ ◇
カルロスさんに手を繋がれて、スラムまで帰ってきた。
カルロスさんはこういうとき茶化したり、無理に笑わそうとしない。静かについてきてくれるだけだ。
心遣いが嬉しい。
あ…アマンダさん……。
アマンダさんはこちらに気付くと全速力で走ってきてそのままわたしを抱き締める。
「シズ!無事で良かった!」
「…アマンダさん…ごめんなさい…ジョゼをつれて帰れなかった…」
「シズは悪くない!悪くないんだよ!」
アマンダさんは、わたしに言い聞かせるようにまたギュウッときつく抱き締めてくれる。
何か言おうとして、また謝りそうになって、何も言えなくなる。
ジョゼをつれてこれなかった自分が不甲斐なくて、アマンダさんの優しさが嬉しくて、涙がどんどん流れてくる。
どのくらいそうしてただろう。
ようやくわたしは何て言えばいいのかわかった。
「ただいま……アマンダさん」
「あぁ、お帰りシズ」
長い長い1日が終わった…ようやくわたしは家に帰ってきた。
ジョゼ……あなたも早く帰ってきて…。
~第1章 Fin~
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
随分と長くなった第1章。
お付き合いいただきありがとうございました!
少しでも面白いなと思っていただけたら幸いです!
できたら★★★も頂けたらもっと幸いです!
続く第2章では一気にシリアスになるかと思いますが、続きもどうぞよろしくお願いします!
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