26話 マイファミリー
クレアさんと“クラン受付窓口”に到着した。
ここでわたしのクラン登録をするそうだ。
「こちらはクラン関連業務窓口です。ご用件を伺います」
「クランへのメンバー登録の手続きをお願いします。クラン“マイファミリー”所属、2等級冒険者のクレアです。こちらクランマスターからの委任状です」
「拝見します。それと冒険者タグの確認を行いますので提出をお願いします」
ギルド職員さんがテキパキと手続きを進めていく。こういうデキるって感じ、格好いいなぁ。
「確認できました。委任状および2等級以上のメンバーの同伴…問題ありません。では新規の登録者の冒険者タグをお願いします」
「あ、はい」
「確認します」
「6等級冒険者、シズ様。これでクラン“マイファミリー”への登録が完了しました」
「ありがとうございます」
「クラン関連の規約、特典についてはお手数をかけますが別途、資料室にてご確認願います」
「シズちゃん、それはまた私から説明します。今日は家に帰りましょう。マダムの屋敷には明日来てください。今日はお疲れさまでした」
「うん、クレアさん、今日は1日ありがとうございました」
「どういたしまして」
▽ ▽ ▽
『『シズ!誕生月と冒険者登録おめでとう』』
「シズおねえちゃん、おめでとう!」
「ありがと」
家に帰ったらアマンダさん達がわたしの誕生月のお祝いの準備をしてくれていた。
ギルドから持って帰ってきた料理もたくさんあるからとても豪華な食卓になった。
「いやぁ、シズさんは立派な冒険者かぁ」
「シズは立派になった!アタシも鼻が高いよ!」
「アマンダさん、ウーゴさん、ありがと。
あ、ジョゼ、ほら野菜も食べて」
「そうだぞジョゼ、肉は俺が食べておくからな」
「そうだぞジョゼ、魚は俺が食べておくからな」
「あ、ずるい。お肉もお魚も食べたいよ!」
「「「アハハハハ」」」
楽しいなぁ。今までで一番楽しい誕生月のお祝いだ。
▽ ▽ ▽
「シズおねえちゃん、朝だよ、起きて」
「ん……おはよ、ジョゼ」
最近、ジョゼはわたしよりも早起きだ。
朝からアマンダさんの手伝いをしてるみたいだし。
ジョゼをわたしが抱えて寝てるから、一緒に起きないとジョゼは起きられない。
だからわたしが寝てたら起こしてって頼んである。
「ふわぁああ」
「ふわぁ」
家から出て二人してあくびをしながら伸びをする。
「おはよう!アンタ達は本当に姉弟みたいだねぇ」
「おはよ、アマンダさん」
「アマンダさん、おはようございます!」
わたしは少しボーっとして、ジョゼはシャカシャカと動きまわって朝の時間は過ぎていく。
「じゃあ、いってきます」
「はいよ!いってらっしゃい」
「いってらっしゃい、シズおねえちゃん」
▽ ▽ ▽
グランマのお屋敷に到着すると、グランマに…お屋敷の人達、それに配下の人がいっぱい。皆、門の前に並んでる。何かあるのかな…?
「シズ、おはよう。こっちにおいで」
「おはようございます、グランマ」
グランマに呼ばれて行くと隣に立たされた。
お屋敷の皆や配下の人達が整列してこちらを見ている。
「おはよう、皆」
『『おはようございます、マダム』』
「さて、もう長いことウチを出入りしてるから知ってる者も多いとは思うが…この子はシズ。昨日12歳の誕生日を迎え、冒険者登録をしてきた。見習いじゃないよ?正式に6等級冒険者として認められた立派な冒険者だ。そしてうちのクランにも入ってもらった」
「つまり、アタシの…アタシ達の新しい家族、“マイファミリー”の一員だよ。この子はとびきり優秀だが見ての通りのチビッ子だ。皆しっかり面倒を見てやるんだよ…シズ、自己紹介しな」
「は、は、はい!」
いきなり歓迎会みたいなのが始まっちゃったよ!皆こっちを見てる!緊張しちゃうよ!
「シ、シズです!12歳です!えーと、グランマに魔法を教わりながら色街で働いてます!み、未熟者ですが、頑張りますのでよろしくお願いします!」
「シズ、ようこそ“マイファミリー”へ」
『『ようこそ“マイファミリー”へ』』
「ほれ、挨拶周りだ…皆に顔を覚えてもらいな」
グランマに背中を押されて、皆の…“マイファミリー”の人達の方へ。
1人1人が名前と歓迎の言葉を口にしてくれる。
クレアさんに、お屋敷のメイドさん達、ジェフさんとたぶん料理人さん達、ブルーノさん、バーノンさんに…もっと大きい人!え、ブルーノさんのお父さん!?
カルロスさんに、エミリアさんや見覚えのある娼婦さんまでいる。エミリアさん達は実は娼館の荒事を収めるガードさんもやってるんだって。
ほかには…えーと見覚えがある…壁の抜け道のとこにいた人だ…まだまだ知らない人もいっぱいで覚えきれないよ!
「だいたい挨拶は済んだね。ここにいるので全員じゃあないが…ま、追々覚えていけばいいさ。よし!さっさと仕事にいきな!」
グランマの号令にあっという間に皆、散っていく。凄く洗練されてる……!
「シズちゃん、今日はクランについて説明しますからお仕事はお休みにしましょう」
「あ、うん」
「さ、屋敷の中に行きますよ」
「わかった」
▽ ▽ ▽
「さて、私達の所属する冒険者クラン“マイファミリー”はおよそ40年程前にマダム…ロクサーヌ様が当時の仲間と立ち上げたクランになります」
「ふんふん」
「その目的は身寄りの無い子供達に冒険者としての道を開く為でした」
「わたしみたいに?」
「ええ、私もスラム出身なんですよ?」
「ええ!?」
初耳だ…クレアさんは冒険者の両親が亡くなってしまって独りになったところをグランマにお世話になったそうだ。
「ふふ、設立時の主要なメンバーはロクサーヌ様を筆頭に当時のお仲間とそのご子息達、カルロスやブルーノの親なんかはそうですね。彼らが教育係となりスラムの子供や親を失った冒険者の子供達から見込みのある者を冒険者として育てることで、クランはいまの規模にまで成長しました」
「おー」
「冒険者として登録している者だけでも50名、お屋敷や色街で従業員として働く者まで含めれば100名を優に超える関係者がいます」
「いっぱいだ…」
「正直、私も全員の顔と名前が一致するかと言われたら自信がありません。そのくらいの大規模なクランなのです。クランの冒険者メンバーは幾つかのパーティーに別れて冒険者として活動しています。初めて森に行ったときのことを覚えていますか?」
「うん、他に冒険者が居なかった」
「よく覚えていましたね。この街は2つの魔域と隣接していますが…高額で取引されている魔鉱の採掘が狙える『エルドマイン』に人気が集中しているのです」
「西門に人がいっぱいだった」
「ええ、ですが冒険者ギルドとしては『グレイフォレスト』の間引きや調査も行わねばなりません。しかし人気が無いため依頼報酬を引き上げたり場合によってはギルド職員により間引きが行われていました」
「ふんふん」
「そこで、クラン“マイファミリー”が名乗り出たのです。クランとしてグレイフォレストでの活動を全面的に引き受ける。その代わりにある程度の追加報酬とグレイフォレストにおける独占的な活動の許可を求めました」
「それで森に人がいなかった?」
「はい。冒険者ギルドはその要求を受諾。グレイフォレストは“マイファミリー”占有の狩り場となりました。シズちゃんが初めて森に行ったときは前日にクラン総出で間引きをしてあったのですよ。まぁ…少々張り切り過ぎていたようで魔獣が中々見つかりませんでしたが」
道理で静かな森だったわけだ……クマは別としてだけど。
「ずっとお世話になってたんだ」
「そうですね。ですがこれからはシズちゃんもクランの一員。間引きに参加してもらうこともあるでしょう。そこでしっかり頑張ってクランの皆を助けてあげてください」
「うん!」
「その他、クランとしての活動は色街を中心とした領都北地区の治安維持活動や間引きとは別にグレイフォレストに生息している魔獣の討伐依頼…素材目的の依頼なんかですね。そのような活動をしています」
「ふんふん」
その後はクランの規約とかの説明とかマイファミリーで使っている魔法信号を教えてもらった。…クマを持って帰ってもらったときのやつだ。幾つか種類があるから覚えておかないといけない。
お昼を食べたら今日の見回り担当パーティーのメンバーと色街周辺の見回りルートを実際に歩きながら注意点なんかの説明を受けた。
…覚えることが沢山だけど頑張らないと!
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