22話 推薦制度適用試験その2
アイザックさんに先導されて“魔素測定室”という看板のついた扉の前にやってくる。
扉を開いて中に入ると、測定担当のギルド職員さんが会釈をしてすぐに仕事に戻って行く。
なにか大型の魔道具が設置してある…これがきっと魔素測定器なんだろう。
「ではシズ様、そこの足のマークが描かれている床の上に立ってください」
「ここですか?」
「はい、そのまま楽にしてください。ではお願いします」
「はい、では測定を始めます。そのまま動かないでください」
「はいっ」
ギルド職員さんが魔道具を操作していく。
ヒュオンヒュオンというような音を立てながら丸い輪っかが頭の上から降りてきて、わたしの頭から爪先を何度か往復する。
「はい、測定終了しました。お疲れ様でした。結果がでるまで少々お待ちください」
え、もう終わり?なんだか呆気ない……
「シズ様、結果が出るまで少しかかりますから控え室に戻りましょう。」
「あ、はい」
▽ ▽ ▽
「シズ様は魔素量を増やす方法はご存知ですか?」
控え室に戻るとアイザックさんが尋ねてくる。
「はい、えっと魔素の循環をやると少しずつ増える…と教わって…ます」
「なるほど。他にも方法があることはご存知ではない?」
「はい…」
「そうですか。多くの冒険者は魔素の循環ではない方法で魔素量を増やしています」
「そう…なんですか?」
「はい。その方法とは…他の生き物を殺すことです」
「!」
「詳しい理屈は解明されていません…が、生き物が死ぬとき、“魂”とされる何かが体を離れます。行き場を失った魂の一部が近くにいた者に流れ込みその者の魂の強さが流れ込んだ分だけ強くなると言われています。魂は魔素の器です。強い魂ほどより多くの魔素を保持できます」
「魂…」
「はい、実際に狩の前後に魔素量を測定すると明確に増加するという研究結果があります。また、より強い生き物。例えば浅域の魔獣より中域の魔獣のほうが増加する魔素量も多いということがわかっています」
そうなんだ…でもグランマ達からは教わらなかったな……。
「これは野生の世界でも同じことが起こっていて長く生き、より多くの獲物を喰らった生き物ほど強くなります」
「聞いたことなかった…です」
「ふむ…魔素循環で増加させる場合、魔素との親和性が高まりやすい…とされていますから、シズ様の教育者様の方針がそうだったのかもしれませんね。急激に魔素量を増やすよりも親和性に重きを置いたのでしょう」
「なるほど…」
「また、一対一の戦いを挑み勝利する…といったような条件下では流入する魂が増加します。これは戦いを通して両者の間に繋がりができる為だとされています。これを冒険者ギルドでは“継承”と呼んでいます」
「厳しい戦いほど強くなる?」
「はい、その通りです。他にも条件はありますが……測定結果が出たようですね。このような情報はギルドの資料室や講習で学ぶことができますから興味があれば色々調べてみるとよいでしょう」
「はい!ありがとうございます」
ギルド職員さんが結果を持ってきた。
どうだったかな?
「ではシズ様の魔素測定結果をご説明します」
「お願いします…」
「数値としては最大魔素量、《2006》という結果になりました。これはシズ様の年齢としては驚異的な結果と言えます。シズ様は既に3等級相当の最大魔素量をお持ちです」
「えっと凄いってこと?」
「はい、とても。12歳で冒険者登録をされる方はそれなりにいらっしゃいますが最大魔素量は100未満が大半ですよ?シズ様は同年代の冒険者の20倍以上の魔素量があるということです」
「おお?!」
頑張って魔素循環の訓練したからかな?
こうして結果がでるのは嬉しい。
「では続けて実技試験です。場所を移動しますのでついてきてください」
「はい!」
▽ ▽ ▽
実技試験室は地下にあったみたいだ。
地下へ続く階段を下りて、通路を進む。
いくつか扉を通り過ぎる。訓練室1に訓練室2…訓練室がいっぱいだ。
突き当たりの“戦闘試験室”という扉をくぐる。
中にはまた大型の魔道具と銀色の短い柱のようなモノがいくつか並んでいる。
「シズ様は斥候と魔法士でしたね。まずは魔法から見ていきましょう。あの銀色の柱に目掛けて攻撃魔法を使ってください。壊すつもりで全力でどうぞ」
「はいっ」
〖魔法刃〗でいいかな……。
とりあえず一発……しっかり命中したけどびくともしてないな……。もう一発、もう一発。
結局30発程撃ち込んで柱がボロボロになったところで止められた。
休憩が必要かどうか聞かれたけれど平気だったから「大丈夫です」と伝える。
「シズ様は何か近接戦闘の心得はありますか?」
「えっと…キックを…」
「ではこちらの的にお願いします。身体強化も使ってください」
「はいっ」
バァンと音を鳴らして蹴りこむと、的が倒れては起き上がる。
起き上がった的をまた、蹴る!
これは楽しい!スラムにも置いてほしいな。
その後、身体強化無しでもやってみたり、パンチでもやってみたりした。
「ほ、本当に休憩はいりませんか?」と聞かれたから、「お腹がすきました」と伝えてクレアさんに持たされたサンドイッチを食べた。
「次が最後の試験になります」
「はいっ」
また部屋を移動した。“訓練室3”だ。
何もない部屋で、他には誰もいない。
「では、シズ様。私と模擬戦をしましょう。私は防御に徹しますから、遠慮なく攻撃してきてください」
「は…はいっ。えと大丈夫ですか?」
「はい、私はこれでも2等級冒険者ですからご心配なく」
最近グランマとクレアさんに模擬戦はしてもらっている……けど……な、なんとでもなれだ!とにかく全力でぶつかろう!
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[挿し絵風AI絵]
試験担当官 アイザック
https://kakuyomu.jp/users/Yutuki4324/news/16817330669704312364
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