修理士

鈴乱

第1話

 

 え? 何をしてるのかって?


 じゃあ……見えてない、ってことだね?


 あ。あぁ、大丈夫。よくあることだよ。気にしないで。


 僕はね、ちょっとばかり修理をしてるんだ。


 宝石の修理をね。


 宝石なんてどこにもないじゃないか、って?


 いやいや。あるんだよ。ここに。

 人間の胸に。その、奥に。


 そこにはとっても綺麗な宝石が眠ってる。


 その宝石は、綺麗に輝く時もあれば、色がくすんだり、ヒビが入ったり、ひどい時には欠けてしまったりもするんだよ。


 もしそのままにすれば、宝石を持ってる当人も、その周りも、苦しむことになるから……

 時々、僕が現れて、その宝石を元に戻す手助けをするのさ。もとの、輝きに戻すために。


 ……最近は大忙しだよ。


 いつの間にか自分が持ってる宝石のことを忘れたり、ほかの人が持ってる宝石のことまで忘れたりしてる人が増えちゃって。


 だから、僕が「修理に来ました」って言っても、怪訝な顔をされたり、ドアをぴしゃりと閉められたり、もう散々さ。


 まぁ、あんまり無理強いしても、よくないじゃない? やっぱり信用って大事だし。


 だからまぁ、最近は僕もリモートワークってのを覚えてさ、遠隔で宝石を磨いたり、繕ったり、直したり、付け足したりしてるよ。


 直接よりは効果が薄れるけど、何にもしないよりはマシだと思う。


 え? 代金?


 あはは。僕は人間じゃないから、そういうのは特に欲してないんだ。


 僕はね、仕事の成果が分かればそれで十分。


 成果?

 決まってる。宝石の持ち主の、心からの笑顔が見られることさ。


 

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修理士 鈴乱 @sorazome

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