最終話 じゃあ3Pしようぜ!
雪野によるまさかの告白に黒戸まで続いたことで、一朗の脳の処理能力はパンクした。
確かにほのめかしてはいたが、こうまではっきり言われるとは夢にも思っていなかったのだ。
「ボクも君と一時的に距離ができたことで気付いてしまったんだ。一朗に対する好意が友達としてではなく、栞に対するものに限り無く近いことに……」
「ふぇぇぇぇっ!?」
一体……何が起こっているんだ……!?
空いた口が塞がらない一朗。
対して雪野は恥ずかしそうに両手で顔を覆いながら背け、俯いてしまう。
「言っちゃったっ!!」
「ああ、言ってしまったね……」と、黒戸までもが耳を真っ赤に染めていた。
やめろそのリアクション!?
こっちまで恥ずかしくなるヤツゥッ!!? ?
雪野がパタパタと火照った顔を両手で扇ぎながら言う。
「私達ね? これをどうしても斉木君には伝えておきたかったのっ!」
「そういうことなんだ。別に一朗とすぐにどうこうなりたいとか、先のことなんて何も考えていないんだけれどね……」
そう黒戸も続いた。
完全にペースを乱された一朗が呟く。
「……俺も言おうと思ってたのに」
「えっ」と、二人の声が揃った。
続ける。
「俺もお前らに同じことを言おうと思ってたのに、揃いも揃って先に言うんじゃねぇよ!?」
「えぇぇぇっ!?」と、今度は二人の驚きの声が揃った。
「この展開はさすがにボクも予想できなかったな……」
「わ、私もだよ……でも……これって……」
栞が考えるその先を、一朗達も当然気付いている。
――三人共が三人共を想っている。
そういうことになる――と。
その部分にはあえて触れず、一つ先についてを一朗は意見した。
「倫理的に褒められたものじゃないよな……」
「だ、だよね?」と、栞。
「まあ誰かに褒められたい訳じゃないから、ボクは構わないけれど」
「で、でも……」
「あー、なんつーか、急に色々なことが起こって混乱してるんだ。とりあえずというか、一先ずここは俺が引いておくよ」
そう一朗は気を使ったが、上気した顔に意地悪そうな笑みを浮かべた黒戸がとんでもないことを言い出す。
「一朗だけがぼっちで可哀想だから、ボクが相手をしてあげてもいいよ?」
「くっ、黒戸!? お前何をどういう意味で!?」
更に雪野までもが――。
「だっ――ダメェーッ!! 悠希君は私のなんだからっ! ……だから一朗君の相手は、私がしてあげるよ……?」
「――ゆ、雪野っ!?」
もう一朗には何が何やら訳がわからない。
「ダメだよ栞。それはボクが許せない。嫉妬してしまうよ」
「私だって嫉妬しちゃうもんっ! ……でもじゃあ、どうしたらいいのっ?」
混乱した一朗は冷静さを取り戻すためにも「こほん」と一つ咳払いした。
それからこう、提案する。
「じゃあもう間をとって3Pしようぜ?」
「どこが間だよ!?」
「どこが間なのっ!?」
黒戸と栞から、それぞれツッコまれてしまうのだった。
――まだ夏休みどころか、期末テストすらまだだというのに。
高校生活ってのは、濃いものなんだな……。
いや、俺の高校生活が特別に濃厚なだけだなこれ……。
そう一朗は思い知る。
一学期編、完。
両手いっぱいに百合の花束 兼定 吉行 @kanesada-yoshiyuki
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