語りかける女
さかもと
語りかける女
「あたしたちのカラダはね、半分くらいは水からできていてね、残りの半分は酸素や炭素、それに水素や窒素なんていう小さな小さな、原子っていうものからできているんだけど、その原子たちって、あたしたちが死んだ後にどうなっていくのか知ってる? 死んだカラダからどんどんバラバラに原子が散らばっていってね、そうだ、大きなお空に向かって、ぱぱーっと舞い上がっていくんだよ。そのあとは、空気の流れに乗っかって、どんどんどんどん上の方へと上がっていって、そうしてきっと、いつかは雲になったりするのかな? きっとそうだよ。そしてそうやって雲になったあたしたちは、今度は雨粒になってもう一度地面へ舞い戻ってくるの。そうやって地面とお空の間をなんどもなんども行ったり来たりするんだね。そうやっている内に、もともとあたしたちのカラダだったものは、混ざり合って、一つになる。あなたや、あなたのパパや、あたしのカラダだったものは、この広い世界の中で、混ざり合って一つになるんだよ。だから、絶対に一人じゃないよ。寂しがったりしないでね。悲しんだりしないでね」
女はそう語りかけると、コインロッカーの扉を閉めて、駅の雑踏の中へと姿を消した。
語りかける女 さかもと @sakamoto_777
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