大根とかいう不正野郎について

白川津 中々

⚫️

好きなおでんの具材はなんですか。


長く問われてきたクエスチョン。圧倒的なアンサーはいつだってそう、大根。


長く、不動のトップを維持する大根。マジョリティから支えられる不滅の一番は2023年今日においてもその地位が揺らぐ事なく王座に居座っている。誰もが認めるキングオブおでん。それが大根なのだ。


しかしそれでいいのか。本当にいいのだろうか。皆、安易なイマジネーションやポピュリズムに圧され、本当に好きなおでんの具材を答えかねているのではないか。あるいはおでんのビジョンを脳内で描いた際、思考停止状態で大根のテクスチャを想起し、ぶっ壊れたレコーダーが如く安易なワードを口走っているだけではあるまいか。大根がまずいというわけでは決してないが、心理的バッファを疑わざるを得ない。この仮説が正しいならば、これまでの大根人気は不正投票により確立された虚構の偶像という事となる。そのような不正義は断じて許してはいけない。私は事の真相を探るべく岐阜県高山市へと向かった。




「ニュートリノを使えば指向的に人間のシナプスへ介入し記憶の消去、改竄が可能です」




スーパーカミオカンデの職員から頼もしい言質をいただいた。彼に大根について話し協力を要請すると「無理無理」の二つ返事で拒絶。「馬鹿じゃねぇの」との返答に流石の私も怒り狂い撲殺。スーパーカミオカンデをシステムジャックし人類からおでんの記憶の抹消に成功した。



逮捕された私は出所までに再度おでんのレシピが考案され人々が最も求める具材を答えられる事を臨んだ。その結果大根が一位になったとて不満はなかった。私は、単純に、真のおでんの人気者を知りたかっただけなのだから。




期待と不安を抱き、私は娑婆に出た。身の切れるような、冷たい風が吹く冬だった。家電量販店へ行き、じっとテレビ番組を観る。昼過ぎ、退屈なバラエティ。俺の飯ランキングなるコーナーが開始。



この時期に食べたいコンビニおでん。あなたの好きな具材は何位?



クソのような導入に心躍る。人類はおでんを思い出したのだ!


私は食い入るようにディスプレイを眺めた。いよいよここに、人類の欲望が解き明かされるのだ。さぁ、何が一位だ、大根か、それとも別の何かか。果たして……



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大根とかいう不正野郎について 白川津 中々 @taka1212384

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ