第25話 月明かりに照らされた未来

 「結構、遅くなっちゃったね」


 パーティーが終わった頃、時刻は既に23時を過ぎていた。


 「みこ、帰りは歩き?」


 「駅までは歩き……。その後は電車」


 「そっか。終電あるといいんだけど……」


 「え? みこ先輩泊ってかないの?」


 「「……え?」」


 千沙は、白河が当然泊っていくものだと思っていたようで、帰ろうとしている白河にそう言った。


 「泊まっていいなら、助かるけど……」


 「じゃあ、泊まっちゃいなよ!!! 決定!!!!」


 千沙の強引な提案にその場にいた全員が笑いをこぼした。




 全員と別れ、祐介とも別れて、帰宅した彼方たち。


 「じゃあ、私はあっちで寝るから。おやすみ!!」


 真っ先に寝る支度を済ませた千沙は、そんなことを言って自室に入り、そのまま鍵を閉めた。


 またしても千沙の余計な気づかいによって同じ部屋にされた彼方と白河。


 「……」


 「……」


 教室での一件から、お互い恥ずかしくてまともに話せないでいた。


 「何か、こう……改めて二人きりになると、やっぱり恥ずかしいな」


 「うん。顔、見れないもん」


 白河は赤面した顔を見られたくないのか、顔を抑えて下を向いていた。


 「あ、そうだ。俺、白河さんに聞きたいことがあったんだ」


 「……?」


 「白河さんの中学の時の話聞きたいなって」


 「え……」


 「ほら。千沙が中学の時、俺の話をしてたって言ってたから、白河さんの話も聞きたいなって…ダメなら話さなくていいよ」


 「……少しなら、いいよ」


 白河は彼方の質問に少しずつ答えていった。


 彼方は今まで知らなかった白河の色々なことを聞いていった。


 そのうちに、白河も千沙から聞いていたことを聞きたいと言って二人の会話は盛り上がった。


 お互いの知らない時間を共有しているような、そんな奇妙な感覚を覚えた。


 そして、知れば知るほど、お互いにもっと好きになっていった。


 気が付けば、時間は2時を過ぎようとしていた。


 「もうこんな時間か」


 「そろそろ寝よっか」


 白河は布団に入り、彼方も電気を消して、布団に入った。


 「……かなくん、起きてる?」


 「起きてるよ」


 「あのね……」


 「うん」


 「その……手、繋いでもいい?」


 白河は、布団から少しだけ顔を出しながら恥ずかしそうに言った。


 「……な、え!?」


 「嫌なら……大丈夫……」


 「そ、そうじゃなくて……何でかなって思って」


 「……」


 「嫌なら別に言わなくてだいじょ……」


 「かなくんが、近くにいるって、感じたかったから……」


 理由を言いづらそうな白河に、これ以上聞くのはよくないなと、彼方が聞くのを辞めようとしたのと同時に、白河は理由を答えた。


 少しだけしか顔を出していなかったが、その顔は月明かりに照らされて、赤くなっていることが分かった。


 そんな恥ずかしそうな顔でそんなことを言われてしまえば、当然彼方も恥ずかしくなってしまい、彼方の顔は真っ赤になっていた。


 そんな顔を見られたくなくて彼方も布団の中に潜って顔を隠した。


 そして布団の中から手を出して、白河の手を握った。


 「かなくん……」


 白河は握られた手に嬉しそうな顔をし、笑顔で眠りについた。


 繋がれた二人の手は決して離れないように、強く、しっかりと結ばれていた。

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