第7話 文芸部活動報告①
「さて、全員揃ったところで文芸部の活動を始めよう」
部室に全員がそろったところで、部長が声をかける。
文芸部の活動は基本的には、来たい人は部室に来て作業をするというものだ。
全員が必ず集まるのは、文芸部恒例行事の説明と発表・講評、また賞に応募する作品の発表・講評の時である。
そして今日は、文芸部恒例行事の発表・講評だった。
「みんな、作品は持ってきているな?」
部長である九道刹那(くどうせつな)が部員に言う。
「もちろんです。というか、昨日徹夜で仕上げてきたくせによくもまあそんな堂々としてられるわね」
「おい、七深。そういう裏事情をバラすな」
副部長の近藤七深(こんどうななみ)が刹那の部長としての威厳を即座に崩しにかかる。
「はあ……。無理して威厳を出そうとするからですよ、部長」
「二葉君もとどめを刺しに来るのはやめてくれないか?」
部長を追撃するのは彼方と祐介の幼馴染、文芸部兼写真部所属の藍染二葉。
「祐介先輩! 先輩はちゃんと書いてきましたか?」
「おう! バッチリ書いてきたぜ! まあ、部長と同じく徹夜で仕上げたんだけど……」
祐介を慕う一年の四崎健也しのさきけんや。
彼が何故文芸部に入ることになったのか、何故祐介を慕うようになったのかそれはまた別の話。
そして、彼方と二葉の幼馴染にして文芸部兼写真部所属の十野祐介。
「まあ、とりあえず始めましょうか」
そんなめちゃくちゃになった場を収める一宮彼方。
文芸部はこの6人で活動している。
「ごほん。では、気を取り直して、恒例行事の発表から始めよう。今回のテーマは“空”ということで、テーマの広さに苦戦したと思うが、みんながどんな作品を書いてきたのか楽しみに見させてもらうよ」
文芸部恒例行事。それは部長が出すテーマに沿って、各自が小説を書いてくるというものだ。
ジャンル・文字数は問わず、各自が書きたいように書いてくる。
ただし、物語として成立し、完結していることが条件だった。
「とりあえず、順番を決めましょう。何で決める?」
「あみだくじでいいだろう」
「ええー! またあみだくじっすか!?」
「はいはい、文句言わないの。ほら、祐介、あみだくじ作るの手伝って」
「へいへい」
「というわけで、あみだくじの結果、順番は十野君、私、二葉さん、九道、四崎君、一宮君よ」
「うへぇ……。俺がトップバッターかよ……」
「頑張ってください、祐介先輩!!」
「まあ、いっちょ俺の自信作を発表しちゃいますかねえ!! 俺の作品を見よ!!」
そんなことを言いながら、祐介は原稿を取り出し、全員に手渡した。
「どれどれ……。っ!?」
「どうしたの、九道?」
「いや。読めば分かる」
「……? ……っ!? これって……」
二人の反応を不思議に思った残りの三人が手元の原稿を読み始め、同じような反応をし、全員が祐介の方を一斉に見る。
「どうだ! 俺の最高傑作!」
「十野、作品紹介をしてもらえるか……?」
「うぃっす! これはですね、朝起きたら翼の生えた俺が、空を飛び回って各地を巡るというファンタジー?に近い物語っす!!」
「……なあ、祐介」
「どうした、我が親友よ!!」
「何でお前が書く物語って、自分が主人公なんだ?」
「そりゃお前、俺が書く物語で俺以外に主人公にふさわしいやつがいるかよ!!」
その言葉を聞いて、全員がため息をついた。
「まあそこは置いておくにしても、翼が生えて空を飛ぶって、すごい設定ですね……」
「テーマが空って言われたときに、空飛びたいなあ……って思ってさ」
「それでこうなったんだな」
「でも、何か楽しそうに空を飛んでるのはすっごく伝わりますよね!!」
「それは……確かに……」
四崎の言う通り、十野の作品は主人公が自由に楽しそうに空を飛んでいるのがよく伝わってきた。
「ふむ。読んでいると自然と笑顔になれる。いい作品だ」
「あ、ありがとうございます!!」
「詳しい講評はまた後でにしよう。全員読み終わったら言ってくれ。次に移る」
「「はーい!!」」
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