明日死ぬから
僕は明日死ぬ。科学的根拠は無く、これといった死ぬ理由もない。けれど僕は明日死ぬ。いつの日からかは覚えてないが、人の頭上に数字が現れた。家族に聞いても友達に聞いても、不思議な顔をされただけで、なんの解決にもならなかった。そして、ある日カウントダウンが0になった人間を見た。その人は、電車に轢かれた。僕は、その場から逃げた。どんな道で帰ったかは忘れてしまった。けれど、身体に痣を沢山つけて心配された事は今でも鮮明に覚えている。それから、カウントダウン0の人と会う事が増えた。もちろん、話す事も増えた。それだけで、数字が増える人もいれば、罵詈雑言を吐いてから死んでいく人もいた。数字が増える人の方が圧倒的に少なかった。しかも、数字が増えた人でも、殆どが音信不通になってしまった。今では、片手で数えられるくらいしか連絡を取れる人はいなかった。自分の行いが正しいとは思えないけれど、今でも連絡をとってくれる人々は、僕の誇りだ。僕は明日死ぬから、あなたは明日生きていてほしい。これは、遺書じゃなくって単なる手紙です。気軽に読んでください。
僕は明日死ぬ。一番感謝できる事は、冗談で死ねといった事が現実にならなかった事。一番悔やんでいる事は、それまで命を軽く見ていた事。それからした事は、食事をより味わう様になった。生きていても良い事があるとは限らない。けれど、好きな服を着る事も、好きな色を塗る事も、好きなものを食べることも、好きな詩を書く事もできるから。生きる為には必要無いし、金を稼ぐ必要もない事は、出来は気にしないでもいいから。それで、明日になったらクラッカーがなるくらいの祝い事だから。溜息が出る地獄でたまに笑える様に一人以上で泣いておこう。傷ができたら、絆創膏を貼ろうか。絆創膏がないなら言葉を聞こう。気分じゃないなら、音とか絵とかまぁなんでも良いよ。最後に約束をしよう。日々は急に変わりはしないから、苦しい事が続きます。それでも、あなたは明日も生きていてください。この手紙があなたの絆創膏になるなら幸いです。
気のまま @mohoumono
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