彼女は偏屈である。

彼女は偏屈である。優先座席に座りスマホを触っている、横に見るからに歳をとっている男性が立っているにも関わらず。そして、ため息をついている。大方、横のおいぼれが席を譲れと声も発さず主張してくるのが煩わしいとでも思っているのだろう。

彼女は偏屈である。フードコートにいる溜息をついた男性を睨むように見ている。その男性は、何の気もなくただ目の前のsnsに興味を注いでおり、今口に運んでいる料理の味さえ分かっていないというのに。大方、その男性が自分に対してため息をついたとでも思っているのだろう。

彼女は、偏屈である。財布を拾ってあげた人に対して怯えた目をし逃げるように去っていった。男性は、ただ目の前に落ちた財布を困っているだろうと息を切らしながら走って追いかけたというのに。大方、その男性が自分のストーカーだとでも思っているのだろう。

彼女は、偏屈である。家に着いた途端財布の中身を確認し始めた。男性は、財布のデザインすら覚えてない程急いで財布を拾い、急いで追いかけたというのに。大方、男性というのは財布を盗むものとでも思っているのだろう。あ、電話をかけた。感謝の電話でもかけてくるんだろうか。

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