愛されちゃうからさ

第1話

ハーイ！　こんにちは。僕だよ。

あはは、「僕」って言われても分かんないかな。

うーん、今はまだ、「僕」ってことしか明かせないんだ。ごめんね！

僕ってば、行く先々で皆に好かれちゃうからさ、素性を明かすと大勢が押し寄せてきちゃうんだ。あはは。

皆がさ、僕を愛してくれるんだぁ。

僕と出会った人は、僕を離したくなくなっちゃうらしいんだよ。

僕はただ、普通に僕らしく生きてるだけなんだけどねー。

人気者ってたいへーん。

あっちでもこっちでも、僕がいかに素晴らしくて素敵で、どれだけ魅力的か話をしてるんだよ。

ほら、あそこでもコソコソ何か言っている。

あれもきっと僕を褒めてるんだよ。

だったら、そんなにコソコソしないで直接言ってくれればいいのにねぇ？

みんな、恥ずかしがり屋だよね！

え？　悪口かもしれないって？

あははは。そんなわけないよ。だって、この僕のどこに悪口を言われるポイントがあるっていうの？

僕はいつ何時も、どんなことしてたって、完璧で欠点なんてないんだ。悪口を言えるような部分がないんだよ？

あっ……。強いて言うなら『悪口を言える部分がない』って欠点はあるかな。

あはははっ。

だって、そうでしょ？

誰だって、興味のない人の噂話なんてしないじゃない？

僕に興味津々ってことなんだよ。

いやぁ、今日も僕、愛されちゃってるぅ！