夢の終わり

 勝浦さんの誕生日パーティー以降、彼とはなんとなく気まずくなってしまい、結局卒業するまで言葉を交わすことすらなかった。

 勝浦さんと親友2人の間にも、溝のようなものが生まれてしまったように見えた。はたから見ていただけの僕に、実際のところどうだったのかなんて知るよしもないけど、ぎこちないというか、以前のような和気藹々わきあいあいとした空気がなくなってしまったように感じられた。


 勝浦さんと僕の関係だけが、最初から最後まで、何一つ変わらなかった。ただのクラスメイトで、それ以上でも、それ以下でもなかった。


          ●●●


 誕生日パーティーのあの日。勝浦さんは3連手巻き寿司に『何か』を見たようだった。勿論もちろん、勝浦さんの瞳は何も映してはいないのだから、見たという表現は正確には正確ではないんだろう。それでも僕の目には──そんな風に映った。

 その『何か』が何かはわからない。ただ後から思ったのは、3連手巻き寿司は勝浦さんが視力を失う原因になった『何か』に似ていたのかもしれないということだった。


 あるいは──こんなのはありえない話だと自分でも思うけど──『何か』は実際に勝浦さんに、勝浦さんが視力を失った瞬間の光景を見せたのではないか。僕はそんな風にも思っている。そんな風に思ってしまうくらい、あの時の勝浦さんの表情と叫びは異様で、何年も経った今でも僕の頭に焼きついているのだ。3年間ずっと見ていたはずの勝浦さんの、それ以外の記憶が全て霞んでしまうくらいに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

勝浦さん えるす @corgi_7084

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る