第13話 町を取り巻く事情

「さて、君の力が本物だと分ったため、こちらとしては、力を借りたい事情がある。」


 屋敷に戻り、ユキが三人分の紅茶を汲んで、リビングに戻ってくると、リリスがそう切り出した。


「何も分らない状態で力を借りたいと言われても、困惑するだけだろうから、私の方から、今この町と私たちを取り巻く事情について説明しよう。」


 そう言って、リリスは、椅子により深く腰掛け、楽な姿勢をとった。


「君も楽な姿勢をとってくれ、少し長い話になるからね。」


 リリスは、こちらにそう勧めると、その事情とやらを話し始めた。


「君は、魔法の果実を知っているかい?まあ、魔法使いも知らなかった君が、それを知っているはずがないので、先に説明させてもらうが、魔法の果実というのは、食べるだけで誰でも魔法使いになることができる、この世界における皆の憧れのアイテムさ。」


 魔法の果実、確かにそんなものがあれば、誰しもが欲しがるだろう。でも、その魔法の果実が、どう関係してくるのだろうか。


「で、その魔法の果実が、近いうちにこの町のどこかに生るという話なんだ。当然、様々な人がその果実を欲しがる。そのために、今この町は魔法の果実を巡っての争いが起きている状態なんだ。」


「その争いの中心となっているのが、五人の魔法使い。彼らは、自分の国に魔法の果実を持ち帰ることを目的として、この町に来て、果実を巡って争いを繰り広げている。魔法の果実は、それ一つで国に莫大な富と、軍事力をもたらすと言われているからね。まあ、魔法使いの力を見れば、それも納得できるのだが。」


 そこでリリスは言葉を句切って、紅茶を口に含んだ。


 五人の魔法使い。それは確か、この世界に存在する魔法使い全員ではなかったか。それほど、すごい力を持つ人同士で争っていると言う事実に、この事態の重要性が読み取れる。


 その時、ふと幻想鳥獣と戦い慣れている様子の二人が思い起こされた。もしかすると、幻想鳥獣との戦いもこの魔法の果実を巡る戦いの一端なのかもしれない。


「ただ、より事態を複雑にしているのが、魔法の果実を狙っているのが五人の魔法使いだけではないという事なんだ。代表的なものは、この町の長老だったり、魔法使いを忌み嫌っている結社の連中だな。…とにかく、魔法の果実を巡る争いには様々な思惑と人物が絡んでいて、簡単には魔法の果実を手にできないのだよ。」


「だから、私たちは君の力を借りたいんだ。この魔法の果実を巡る争いを勝ち抜くために。」


 そう言って、リリスはこの町を取り巻く事情についての説明を締めくくった。

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魔法戦争記 ~転生したら未来が見えるチート能力だったので魔法使い同士のバトルロイヤルで無双します~ 憂木 秋平 @yuki-shuuhei

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