第12話 的中した未来予知

 そうして、しばらくの時間が経つと、突如、張り詰めた空気を切り裂くような甲高い音がした。


 赤ん坊が泣くような、悲鳴のような大きな音だった。


 おそらく、これが幻想鳥獣の鳴き声なのだろう。隣の二人は、慣れているのか、動じた様子もない。


「…ユキ、準備はできてるかい?」


「…まさか、本当にやってくるとはね…。」


 ユキは半信半疑だったのだろう、俺のほうをちらりと見やると、何とも複雑そうな顔をした。


 そうしていると、獣が森の中を移動する音が不意に途絶えて、幻想鳥獣が姿を現した。


 あの日見たのと同じような、歪な姿だ。どのように、生物として存在しているのか不思議に思うほど異様なフォルムをしていた。


 数は十匹。俺が、未来予知で見たのと寸分違わず同じ数。


 幻想鳥獣は、こちらに狙いを定めると、一斉に飛びかかってきた。


 その瞬間、幻想鳥獣を中心として爆発が起こった。


 何度か眩い光の爆発が続き、爆発後の砂煙が晴れた場所には、十匹居た幻想鳥獣の数は、二匹にまで減っていた。


「想像以上に、罠が有効に働いてくれたようだ。…これも、君の未来予知のおかげだ。」


 リリスが、そう言うと同時に、ユキは残った二匹の幻想鳥獣へと飛びかかっていった。


 懐から、いくつかのクリスタルを取り出すと、それを幻想鳥獣に向かって放り投げた。


 すると、先程の爆発に劣らない程の威力をした爆発が起こり、幻想鳥獣を直撃した。


 それで戦いは終わり。後には、死骸どころか血の一片も残さず、幻想鳥獣は姿を消していた。


 俺はその光景に、呆気にとられていた。これを見れば、確かにユキが幻想鳥獣を雑魚扱いするのも頷ける。


「お疲れ、ユキ。簡単な仕事だったね。」


「ほとんど、リリスの罠で消滅してたからね。」


 そう言うと、ユキは少しも疲れた風もなく、こちらに向かって戻ってきた。


「さて、未来予知は寸分の違いも無く当たっていたわけだが、ユキどう思う?」


「…こんなの見せられたら納得しないわけにはいかないでしょ。できるなら、私たちに協力してもらいたいわよ。」


「私も同意見だ。この力は魔法にも匹敵する。力を借りられたら、私たちも戦いをより有利に進めることができる。問題は彼の意思だが…。」


 そう言って、リリスとユキはこちらを見た。


「とりあえず、屋敷の中で話をしましょう。ここは冷えるわ。」


 そのユキの言葉にリリスと俺は従い、三人で揃って屋敷へと戻った。

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