第3話
今編集している動画は『グループ結成』という動画で、他の不登校の活動者とグループを組んだことの報告動画らしい。
グループ名は『ずっと放課後』、メンバーは歌い手のえねえねに加え、VTuberの鬼城理真とゲーム実況者の宇治松ちや。
まず鬼城理真は高校生で性別は男性、見た目は鬼のモチーフにスーツ、そして上にパーカー。
見惚れてしまうほどかっこいい立ち絵なのだが、どうやら理真さん自身が描いたそうで上げている動画も主に絵の動画が多い。
えねえねさんとはもともと友達のようでサムネの絵も提供している。
宇治松ちやさんは中学生で性別は女性、(他二人には少し失礼だが)他のメンバーよりは知名度が高かった。
動画では真面目なフォントと宇治松ちやさんの話してる内容の差が面白さを引き出しているように感じた。
…この通りメンバー全員を調べてみた。キモくはない。
それで話を戻すが、編集がきつい。
ぽこぽこアイデアが思い浮かび、さらに上手くいったというのならもちろん楽しいと思うが、今はもうなにも思いつかないし段々とだるささえのしかかってくる。
こんな時は音楽を聴かなければ!と思い、気分を変えるためにも少々勢い良く椅子から立ち上がる。
スマホを取ろうとしたとき、隣のスマホのような機械が一緒に目に映る。
危ない危ない…。僕はそれを近くに置いてあったカバンにいれた。
これは、未来の状況を教えてくれる機械なのだ。
たとえば未来のニュースだとか未来の自分の家の様子などを表示してくれる超超超便利な機械である。
そしてもう一度勢い良く座ると、置いてあったイヤホンに耳に入れる。
そこから適当に音楽を流し、パソコンと目を合わせた。
「とはいえ…やっぱりめんどくせえなあ…」
笑いながらパソコンから目をそらした。
『OKです!完璧です!ありがとうございます!!』
編集したデータを送ると、なんとなく楽しそうな文章が返ってきた。
疲れた~!
大変だ本当に…やっぱり凄い、動画配信者って。
知ってるけど、どんだけ知ってても…
いや、どんだけ知ってるからこそ凄い。
「ふー…」
僕は椅子にもたれかかり、疲れを息に吐き出した。
まあ、まさか思ってなかった。
さらに疲れることがあるなんて。
えねえねさんは…“未来で有名にならない“。
その原因が「編集が下手」だけなら、何かきっかけさえあればバズって少しは(というのは余計だけど)有名になれるだろう。だって、その歌の上手さは嘘ではないのだから。
……早くも、早すぎるも、えねえねさんの前に壁が現れたのだった。
『えねえね:助けて』
その日、不穏漂うその短い言葉がスマホに残された。
音を求めて 雪佳(せつか) @hanapi-
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