第133話「あるべき魂」
「アル!」
「わかってる!」
ルーナとアルが、ガンドックから強奪していた銃を構えて発砲。
「ジニー!」
「承知しました。【アクアハンド】!」
それと全く同じタイミングでジニーが水魔法の触手でヴェーセルを回収する。
「大丈夫ですか、ヴェーセル様」
「え、ええ、何とか」
「どうして、こんなことが?」
「それは、ボクがボクに戻ろうとしているからだよ」
「さっきから何を言っているんですか?」
ルーナは、にらみつける。
「ヴェーセル様に化けて、彼女を冒涜するような真似はやめろ!」
ルーナは銃を構え、発砲する。
『Form change――schield sheep』
ゴルドヒールは形態を切り替え、盾で銃弾を防ぐ。
防ぎながら、ゆっくりと近づいてくる。
「待って」
ヴェーセルの中に、もしかしてという疑問がわいた。
「アナタは、誰ですか?」
「ボクの名前は
「え?」
「うん?」
「は?」
理解不能という感情が、三人の間では広がった。
しかして、ヴェーセルは違った。
納得と、失望だけが彼女の心中を満たしていた。
「う」
ヴェーセルは、吐き気を覚えてうずくまった。
体調ではない。
ある可能性に思い至ってしまったから、そしてそれが真実だと確信したからだ。
転生。
人が死後、何らかの形で肉体を得て生まれ変わることを指す。
この世界においては、まれにある自然現象だ。
この世界に生きるものの肉体に、主に現代日本人の魂が宿る。
ヴェーセルやローグ、ガンドックなどは転生者であり、彼女たち以外にも現在確定しているだけで王国内には数十人いるとされている。
しかして、そのメカニズムは不明だ。
どうして、現代日本人の魂が『ドラゴンライド・アルブヘイム』の世界に転生するのか。
そもそも、ここは本当にゲームの世界なのか。
疑問は尽きないが、仕組みとは別のところにも疑問が生じる。
それは、転生した際の肉体。
そこに
あるいは、この疑問は転生全般において呈されるものかもしれない。
創作では様々なパターンが考えられる。
例えば死産した赤子に魂が入り込むパターンであったり。
自我が完全に成立する前に入るというものだったり。
あるいは、二つの人格が一つの体をシェアするという変わり種もある。
しかして、ヴェーセルの場合はそのどれでもないとしたら。
最もわかりやすく、シンプルで、なおかつ救いようのないパターンだとしたら。
普通に自我を持っていた
追い出された魂が、空中かあるいは地中をさまよっているのだとしたら。
そして、その魂がもしもゴレイムになっているとしたら?
「あ、あ」
ヴェーセルは悟る。
彼女の言葉の意味を、そして彼女の正体を。
「ボクは、ボクだ」
ゆっくりと、ゴレイムは、ヴェーセルに近づいてくる。
「撤退しますよ!」
「ルーナ、ローグへの連絡は?」
「もう既にガンドックがやっているはずです!」
「むっ」
ゴルドヒールは盾を頭上に掲げた。
瞬間、銃撃が盾に命中する。
ルーナたちによるものではない。
上空を飛んでいるドローンによるものだ。
ガンドックのドローンが援護してくれている。
つまり、既にガンドックはこの状況を補足しており、それはローグに情報が共有されていることを意味する。
まだ時間はかかるだろうが、逆に時間させ稼ぎ切ってしまえばどうとでもなる。
「撤退は、なりませんわよルーナ」
「どうしてですか!」
よろよろと立ち上がる。
顔面を蒼白にしたその姿は、もはや戦える状態にないことは明らかだ。
「まだ市民の避難も完了しておりません。何人殺されるのか、わかったものではありませんわ」
精神的ショックはあった。
物理的ダメージも受けた。
それでも、戦わなくてはいけない理由が眼前にある。
目の前のゴルドヒール、ロックゴレイムは今まで何人もの命を奪ってきている。
そして、放置すればきっと何人もの命が失われ、食われることだろう。
それだけは、看過できない。
心配してくれる者達の気持ちを無下にすることになっても、逃げることだけは選べない。
「変身っ!」
再び仮面を装着し、変身した。
TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~ 折本装置 @orihonsouchi
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