Day28 かわたれどき

「わたしばかり喋ってしまったし、今度は遭の話を聞かせてくれないか。多少のことは契約での繋がりがあるからわかるが、多少の範囲を出ないから」

「あぁ、だから名前を知っていたの。周りからよく噂されている方も。使用人達から聞いたのかと思っていたけれど」

「認識されていないので盗み聞きは得意だが、遭に関しては何となく伝わるものだよ。暴食の悪魔と呼ばれるほど、食に貪欲なこととか」

「食べたいものを絶対に食べてきただけよ。あなたと違って時間が限られているんだから、一食どころか間食も無駄にできないの。だから朝食は家で食べるわよ、焼き鮭と炙りたての海苔は特に温度が大事なんだから」

「それは一大事だ。これは好奇心だが、どうしてそこまで食にこだわるんだい」

「好きだからよ。何よりも、好きだから。あら、確かに私と黄金こがね様は似ているかもしれないわね。本当は理由なんか知ったことじゃないわ、そうしたいからしてるんだもの」

「……そうか、そういうものか。じゃあもうひとつ。遭はどうしてわたしをここから出そうと? どこにあっても変わらないだろう、それにやって来た時に感じたがあまり好まれてもない気がするが」

「ここから出ることがあなたにとっていいのかは知らないけれど、連れて行きたいと思ったからよ。こんなところに引き籠もっているからそんな顔になるんだわ。どこにあっても変わらないのなら、私の家にあってもいいでしょう。あと、」

「あと」

「好んでいないとは言っていない。好きとも言う気はないけれど」

「はは、ありがとう。そんなに酷い顔をしているつもりはないが、そう見えるのか」

「後悔しかないような、もう思い残すことはないような、変に老成した顔よ。どう、そろそろ答えは決まった? これは月明かりのはずだけど、いつ朝日になってもおかしくないんだから」

「かわたれどきか。この照明じゃ今もそう変わらないが」

 もう少し近くに来てくれないか。

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