Day23 白

 その後の僅かな日々をもたらしたのは何だったか。

 最後の会話は夏のサイダーについてだった。暑い時こそ相応しい、得意気な黄金こがねは事故で椿と共に首を落とし、わたしが最後に会ったのは白い布。

 その下にあるはずの顔はついぞ見えなかった。いつの間にか用意していた遺言にこの部屋へ遺体を運ぶよう書かれていたらしいが、布を取るようには書いていなかったのかどうなのか。

 わたしを認識出来ない使用人が、終始虚空を見つめて話していたのを覚えている。お揃いだ、かけた言葉へ黄金こがねは何も返してくれなかった。

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