Day16 面
「……そんなに見つめられると何とも言えない気持ちになるんだが、
「言われるほど見ていないよ」
「いや、相当の時間だった。生首が珍しいのはわかるがこのままだと穴が開きそうだ」
「首かどうかじゃなく顔を見ているんだよ、黒鬼。美しい顔をしているなと」
「今まで言われたことはないな。珍しい色合いだとはよく言われたが。わたしの故郷でも
「なるほど、翡翠の瞳は特別だったのか。黒鬼には相応しい」
「それほどいいものではなかったな。混ざり者の中でも、緑は魔物の目だと特別嫌われていた」
「持てる者を妬むのは世の常だ。僕は美しいと感じているよ、色合いも造作も全部含めて。……石が峰の真の当主以外には、存在すら認識が難しいというのは本当なのかい?」
「あぁ、そうらしい。わたしが何かしている訳ではないのではっきりしないんだが、この屋敷を管理している人々もわたしのことはそれほど気にしていないよ。何かがいる、とはわかるようだが」
「残念だな、写真にでも残したいと思ったのに」
「わたし自身じゃ不満なのかい。写真よりは長持ちするだろう」
「不満なんかある訳ないだろう、でもそれとこれとは違う問題だ。写真や絵などを通してこそ花開くものも……そうか、絵か」
「絵?」
「僕が君を描けばいい。黒く豊かな髪も、灼けた肌も、翡翠の瞳も。見えない当主どころか、誰にだって見せられるようになる」
「見せたところで金を与えることは出来ないが」
「黒鬼の美しさが伝わるからいいじゃないか。よし、早速準備しないと」
「
「うん? 初めてだよ。絵筆を握ったことはない」
「……」
「君をモデルにするんだから失敗する訳ないだろう、大丈夫さ」
「なら、いいことだが」
翌日から部屋には、テレピン油の香りが昼夜を問わず漂うことになった。
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