Day15 猫
昨夜随分と遅くまで語らったせいか、
まだ年若いらしい、語るような訴えるような鳴き声。その声が古い記憶を引っ張ってくる。
彼女も猫を連れていた。魔女と呼ばれた彼女が可愛がっていたのは暗闇に金の瞳が浮かぶ、耳の先から尾の先までが漆黒の猫だった。彼女の名も思い出せないのに猫の名を思い出せるはずもなく、しなやかに歩き回る影のような姿ばかりが浮かぶ。
不吉だと捨てられていた黒猫も、混ざり者だと罵られるわたしのことも、彼女の中では平等だった。いや、正しくは彼女の中ではすべてが「重要ではない」という点において平等だったのだ。当時のわたしはそれを知らず、知った時には意味は消え失せていた。
あの黒猫はどうなったのか、記憶は答えを持っていない。いつの間にか鳴き声は止み、雨風だけがまだ存在を主張している。
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