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「──灰夜くん!」
反射的に体は動いた。
どうするか、どうなるかなんて考えない。
頭よりも先に、心が私を動かした。
「な、おい──」
後ろから聞こえる声は気にしない。気にならない。
誰にも私は止められない。
私がそうするべきだと思っているし、できると心が信じているからだ。
そうして私はなんの躊躇も迷いもなく、飛び降りた灰夜くんを追うようにビルの縁から飛び出した。
「は、はは、はははははは! 面白い! あいつ、後を追って飛び降りやがった! 心中するとは! ……あー、くそ。でも、もったいなかったなあ。どうせなら泣きじゃくるあいつを犯して、俺のおもちゃにしてやろうかと思ってたのに」
「ふん、つまらん幕引きとなったが、まあ奴らはついでのことだ。本命は確保した」
スーツの男は足元に転がる沖田の頭を掴み、無理やり半身を起こさせる。
「さて、吐いてもらうぞ沖田空人。雨宮暁子の唯一の弟子。まあ何も吐かなくても餌として使わせてもらう。あの馬鹿女を誘き寄せるためにな」
「……貴様……五年前の……生きてたのか」
「ほう、覚えていたか。そうだ。五年前にあの馬鹿女にやられた男だよ。回復とリハビリに五年もかかってしまった。だが、ようやく雪辱を果たす時がきた」
「……ふざけやがって。とっとと地獄に堕ちろ。クズが」
「……」
スーツの男は沖田の頭を掴んだまま、沖田の背にナイフを突き刺した。
「……ぐぁ!」
「言葉には気をつけろ。あの馬鹿女と同じぐらい、貴様にも恨みがあるんだ。まあ出血多量で死なれても困る。アジトに帰って死なないように手当してやる。お前を殺すのは、あの女を殺してからだ。──おい、引き上げるぞ」
「はい、先生!」
そうして委員会の男たちはその場を後にしようとする。油断、慢心、それが自分たちの破滅へと繋がることを知らずに。
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