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「僕はシノノメハルって言うんだ。君は?」

「ユキヅキハヅキ……」

「ユキヅキハヅキ、どういう字で書くの?」

「ユキ……冬に降る雪に、夜に見える月で雪月、晴れの日の晴にまた同じ月っていう字」

「雪月晴月かあ。ステキな名前だね」

「そんなこと……。ハルく……ううん、シノノメくんはどういう字なの?」

「ハルでいいよ。シノノメはね、方角の東に空に浮かぶ雲で東雲。で、ハルはグレーの灰色の灰に、朝昼夜の夜で灰夜。変な名前だよね」

「そんなことないよ! かっこいいと思う……」

「そうかな? へへ、ありがとう。晴月ちゃん」

「……晴月でいいよ、灰夜くん」

「そう? わかった。晴月はいつも何して遊ぶの?」

「……わかんない。それも覚えてないから……」

「そっか、ごめんね。……うーん、じゃあさ、今のユメとかってある?」

「ユメ……?」

「そう、やりたいこととか、なりたいものとか。もちろん、今の晴月が思うことで」

「やりたいこと……。私、ゲームセンターに行ってみたい。いろんなゲームがいっぱいあって、一日中遊べるって。それと……カラオケ」

「晴月は歌うのが好きなの?」

「うん、前からなのかはわからないけど、夜寂しい時に静かにだけど歌ったりしてる。カラオケなら、大きな声で歌えるでしょう?」

「そうだね。聞いてみたいな。晴月の歌」

「は……恥ずかしいよ……。もっと練習してからなら……」

「本当に? 約束だよ」

「うん」

「他にも行きたいところとかある?」

「後は……遊園地。友達と、いろんな乗り物に乗って、色んな物食べて、お化け屋敷も行ってみたい」

「遊園地かあ。いいね、僕も一度しか連れてってもらったことないけど、また行きたいなあ。今度は友達と一緒に」

「うん、後ね……」

「……はは、晴月はいっぱいユメがあるんだなあ」

「そ、そうだよね……。いっぱいは欲張りだよね」

「そんな、悪いことじゃないよ。ユメが一つしか持てないなんて勿体無いよ。いっぱいあってもいいと思うよ」

「いっぱい……そうなんだ。灰夜くんのユメは?」

「僕のユメ? 僕はね、ヒーローになりたいんだ」

「ヒーロー……?」

「そう、流石に世界中みんなのヒーローは難しいかもしれないけど、誰か一人のヒーローでもいいんだ。ヒーローになって、困ってる人を助けたい」

「……な、なれるよ灰夜くんなら!」

「そうかな?」

「うん、だって──」


 だって灰夜くんは、もう私のヒーローなんだから。

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