第2話 紹介、その前に。
「お父様」
姫は父である王のもとに向かう。赤い骸骨と赤い剣を連れたって。
執事はその後を追う。奇妙な骸骨と思い出せない剣に注意しながら、姫の身を案じている。もちろん、王に会わせるにしても、その点を考慮する。
この重要な時期に万が一があったらと思うと気を引き締める。
「おとうさまー」
行く先々で姫は王を呼ぶ。メイドは姫に一礼してから素早くその場を後にするが、振り向いて驚いた顔をする。奇妙な魔物がいると思っているのだろう。
「おとうーさーま」
メイドには姫の使い魔であることを伝え、全てのものに伝達するように命じる。
それから、剣について聞いたがわからないようだ。
「おーとーさーま」
「姫様。陛下でしたら会議室におられます。ご案内……」
王を呼ぶ声に反応したのは側近である将軍だった。しかし、様子がおかしい。
「姫様、それは」
姫の側にいる骸骨を指さす。本来ならありえない行為であるが、姫も執事も咎めなかった。
「ポチだよ。お父様に紹介するの」
「紹介、ですか。……いや、そんな」
「どうしたの?」
「失礼しました。その、そやつの剣をお見せくださいませんか」
「いいよ」
姫に促されて、骸骨はためらいなく将軍に剣を渡す。むしろ、動揺しているのは将軍の方だ。
「……」
将軍の顔が青ざめており、その手がかすかに震えている。
「将軍?」
明らかに様子がおかしい将軍に声をかける姫。執事としてはただ事ではないと悟るが皆目見当がつかない。否、己が感じた違和感の正体ではないかと考える。
「この剣はこのまま、私が陛下にお渡ししてもよろしいでしょうか」
「いいけど、返してね」
「ははっ」
歴戦の猛将は剣を丁寧に持ち、王のもとへ案内する。姫は上機嫌だが、将軍の顔色は悪い。何を知っているのか、今すぐ問いただしたい執事である。
姫とポチとルビームーン @MenTaiko5524
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