「ところでぇ。ゴウくんを探しに来たのよねぇ」


 今は依頼中だからちょっと遠出してるわぁ。もうすぐ帰る予定なんだけど。ということで、村で聞き込みをすることになった。村長の事についてと村の今後についてを。


 だが、不思議なことに村長を失ったはずの村は全くその影響を感じさせなかった。というか、何故か村長がいた。


「神の印は同時に何人に刻まれるんです?」


 セナさんだけに聞こえるように声を殺して新たな疑問をぶつけた。その疑問はセナさんも抱えていたらしく、俺の質問に答えること無くもう一つの目的の場所へ向かった。


「ここが村長の家なんだけど」


 村の中でも一際大きくて手の込んだ建物。外壁は黒く煤けているが、全く崩れていない。他の石を積んだだけのものとは比べ物にならない造りだ。


「この村は大体決まったポイントへ移動して行くんだけど、その中心になるのがこの村長の建物なの。どれだけ燃やされても崩れない家……ユシヤ村が大きな1つの国だった時にいた6つの貴族の屋敷なんだって」


 全部クリストファーから聞いた知識なんだけどね。何度も出てくるそのクリストファーという依頼人は、どんな人間だったのだろう。死を知りながら村人のために、どういう気持ちで依頼を出したのだろう。

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secret 有登あられ @zibuni

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