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真っ白で寒い世界は自分の感覚を研ぎ澄ませていく。だんだんと、頭が冴えてきて疑問が現れた。
「セナさん、別の生き物が自分の中にいるって感覚わかりますか?」
「え、寄生されてる……とかじゃないよね。それも印と関係するやつかな。実はあまり神の印を刻まれる人っていないから報告も少なくてね。物の事ならわかるんだけど」
そういえば、意識が云々という話を聞いたことがあるような。と、ブツブツ呟いているセナさん。そんな、セナさんに出会ってから湧いた疑問についていくつか問答しているうちに目的地に着いた。その村を詳しく知らなくても炎を信仰する村という予備知識だけで、ハッキリとソコだということがわかるようなそんな村だった。
急造の家の間に焚かれた無数の松明。村の真ん中らしき広まった場所に堂々と居座る丸太で高々と組まれた大きな焚き火。相変わらず吹雪は収まっていないのに、何となく熱いと感じそうなくらいのおびただしい火。
「これが炎信仰」
「吹雪が酷いからかいつもより大袈裟だけどね」
セナさんは、石窯が設置された大きい家に迷うこと無く突き進んでいく。未だ繋がれた手に引っ張られながらその家に入ると、柔らかな木の匂いが身体を包んだ。
「こんにちは、サラさんはいるかしら」
外側の石造りの建物は中に入ると木で出来ていて、至る所に丁寧な細工が施されている。外から見た急造感はその中では全く感じなかった。
「はぁいぃ。あぁセナさん!無事だったんですねぇ」
のほほんとした喋り方と笑顔。その雰囲気とはかけ離れた重厚過ぎる甲冑。どれほど鍛えていればアレを着て軽々と歩けるのか不思議に思っていると。
「あらあら、はじめまして。こんにちはぁ」
「こんにちは」
「サラ・テイマーと申します。これでもギルドのオーナーやらせてもらってますぅ」
はいどーぞ。と手渡されたのは、小さな四角い紙。可愛らしいお花のデザインとこの店の名前だろうか『rotate』のロゴ。隅には小さくお仕事斡旋いたします、の文字。
「仕事斡旋……」
「ここらへんは旅人が多いからね。仕事を斡旋する代わりにそれに見合った衣食住を提供する。私達は提携してるから仕事関係で滞在する時は先約がいなければ好きな部屋を借りれるの」
まさか他の店と協力をしているとは。頭の中で孤立していた情報に線が伸び始める。各地へ物を運ぶ仕事を担うsecretと、そのsecretを泊めてくれる
「rotateは他の村にもあるんですか?」
「ギルドは各地にあるよ」
「ここは自己防衛出来るから入ってないけど、ギルド同士の組合とかもあるわねぇ」
更に線が伸び始める。そういえばこの大陸の地図は見たが、この世界はどういう構造なのだろうか。壁にも例の地図は貼ってあるが……視線を移すと視界に飛び込んできたのはモフモフの大きな猫。鋭い牙と爪を輝かせて地面に伸びている。
「うおっ、デカネコ!?」
「この子はトラのパラドールちゃん。宿周りはパラドールちゃんが護ってるのよねぇ」
よしよしと、トラの頭を撫でるサラさん。パラドールは大きなあくびをして、満足そうに目を閉じた。きっとあの人だから大人しくしているのだろうということが説明されずともわかる。
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