第4話 ユシヤ村



厚手のコートをライムから投げ渡され、とりあえず着てみる。コレもまたぴったりサイズで、つい驚きの声をあげた。


「お前の魔法すげーな。どうやって」


「それはおれのじゃねぇ。あと次褒めたら殺す」


そう言って首元にナイフを突きつけられて脅される。これはヤバいやつか。すまん、と謝るとスポッと筒状のモフモフした布を俺の首にはめてから席についた。視線はずっと鋭いままだ。


「よーし、行こうか。コウタくん」


「あ、はい」


用意してもらった頑丈そうな靴を履いて、先に外へ出ていったセナさんの後を追う。先程までポカポカ陽気だった外が一転して前が見えないほどに激しい雪が降っている。


「寒っ」


「そのコートは耐寒、耐熱、耐火だからコウタくんも魔法を使っても大丈夫よ」


「肝心の使い方がわからないんですけどね」


「うん、知ってる」


だから連れてきたんだよ。と、言って手を伸ばしてきたセナさん。何かくれるのかと思い手を差し出すとギュッと握られる。


「離さないでね。迷子になっちゃうから」


確かに数歩先を歩かれるともう姿がボヤケてしまう。だが何故か声だけはクリアに聞こえた。


「今から行くところで絶対に印の話はしないでね」


「わかりました」


「あと、何があっても怒らない事」


「え……はい。別に俺そんなに怒りっぽくはないですよ。さっき腹減ってた時は変な感じだったけど」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る