救い(のろい)

@syunnpy

救い(のろい)

僕の話を聞いてもらいたい。

あれは僕がちょうど高校1年生という肩書きから2年生に移り変わる時期、つまりは高校1年最後の日の話である。

おっと、その前に。この話を聞くうえで、知っておいて欲しい情報が2つある。

まず一つ目、黒瀬雫。彼女について。

容姿端麗、頭脳明晰、成績優秀、そしてさらには運動神経抜群、まさに完璧超人であり我が高が誇る生徒会長でもある彼女。誰にでも分け隔てなく接し、いつも笑顔を振り撒いているその姿に誰もが魅了され憧れをもつ。それが彼女、

黒瀬雫。

次に二つ目、僕の生まれつき持つい異能力について。

霊能力、僕は生まれ付き霊と関わりを持つことができる。見ること、聞くこと、そして意思疎通すらも可能とする。今と違い当時の僕はさまざまな霊と会話し、その関わりを持っていた。霊のほとんどは普通の人間と変わらない。中には生きてたときの怨念をもつ危ない霊もいたがその他はほぼ生きている僕らと同じである。逆に生というしがらみから解放されているため割と穏やかで友好的であった。僕自身、霊と関わりを持つことは嫌いではなく、中には友達と呼べるくらいまで仲良くなった霊もいた。

そう、当時までは。

この二つの情報を踏まえた上で、僕の話を聞いてほしい。

この話から得られる教訓として、人が人のこと完璧に理解できるなんて到底出来ない。

それか、軽はずみに言った言葉でも言葉にはそれ相応の責任が生じる。などがあるかもしれない。

ともかく、この話が少しでもあなたの人生に何かしらの学びをもたらしてくれたらと切に願うよ。

何も難しくは考えなくていい。これは至極単純な話で、要約すれば、呪われてしまった、それだけの話。

そう、これはあの日あの時あの場所で、僕が、そして彼女が、呪いにかけられた、ただそれだけの話である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その日、我が高校の卒業式の日。

僕はその日の放課後、彼女、黒瀬雫に生徒会室まで呼び出されていた。

僕と彼女の関係性といえば生徒会長と生徒会の手伝いをしている1年生、ただそれだけの関係性だった。

僕がなぜ生徒会の手伝いをしているのかといえば、僕が彼女に恩があったからである。

僕は、退学処分を言い渡されかけたことがある。

それも入学してたったひと月でだ。

何をやらかしたのかといえば、高校設立の時に一緒に植えられたという記念樹に登りその枝を盛大に折ってしまったのである。

半径5メートル以内生徒立ち入り禁止と柵までされたその木に何故近づいたかといわれればそれは僕に生まれ付きある異能力に起因する。

僕は見てしまったのだ、その記念樹の枝に首を吊ったまま縛りつけられている女性の霊を。

霊には自縛霊というものが存在する。あまりに悲惨な死を遂げた霊がその物や土地に縛りつけられているものだ。

そして、僕は知っていた大半の自縛霊は自ら望んでそうなったものではないと、助けを求めているものだと。

この高校で昔、何があったのかなどには全く興味なかったがその悲痛な眼差しはとても放っておけるものではなかった。

僕は、学校の誰も樹の周りにはいないであろう時間帯を見計らって、木に登った。

女性の霊の首を縛りつけている縄に繋がっている枝をどうにかすれば良いことはなんとなくわかった。

女性の霊を解放するところまではなんとか上手く行った。

ありがとう、泣きながらそう言って抱きしめてもらった。

去っていく霊を見ながら僕も木を降りようしたそのとき、僕がまたがっていた木が折れてしまった。

相当古い木だったために重みにこれ以上耐えきれなかったのだろう、盛大に地面に落ちた。

大きな怪我などはなかったものの、その音を聴きつけて来た教職員の方々に捕まった。

僕の高校生活はもう終わったと心の底から思った。

しかし、退学処分は取り消された。

退学処分と言い渡されて数日後のことだった。

話に聞くと彼女、黒瀬雫が弁護してくれたのだそうだ。

彼女の言い分はこうだった。

「私はこの目で確かに見ていた。彼は樹に上がって降りれなくなっていた猫を己を顧みず助けに行ったのだ。決して学校に対する反抗心などというくだらないものではない。彼は小さきもののために死力を尽くしたのだ。この行いに対して称賛こそあれど罰則などもってのほか。私は彼の退学処分停止を強く要求する」

 彼女は教師達からの信頼も厚く、彼女がそこまでいうのならとすぐに要求は聞き入れられた。

僕はその話を聞いた時、意味が分からなかった。

当然あの時、樹の上に猫など存在していなかった。

仮に嘘だとしても霊は彼女には見えていないはず、彼女が自分を助ける理由が全く分からなかった。

僕は理由を彼女に直接問いた。

すると、彼女はこう返してきた。

「君の行動は普段からよく見ている。君みたいな真面目な奴があんな校則違反、理由もなしにするはずがない。だから手を差し伸べたそれだけにすぎない。どうだろうか、もし少しでも恩として感じてくれたのなら。生徒会を少しばかり手伝ってはくれないだろうか。人手が足りてなくてね。君みたいな奴の手が借りられると心強い」

僕は即答で、喜んで、と返した。

何て人だと思った。

たぶんその頃からだろう、僕自身も彼女に憧れ始めたのは。

ここで話を戻そう。

今日は卒業式、3年である彼女が学校に来る最後の日である。

そして、そんな最後の日の放課後に僕は彼女に生徒会室へ呼び出された。

期待をしないといえば嘘になる、しかし彼女のことだ。

生徒会全員に対し何か言葉をかけていっているのだろう。

その流れで一年間生徒会を手伝った自分に、ありがとう、とでも言ってくれるのだろう。

ならば自分もあの時のお礼をもう一度心を込めて送ろうと意気込んでいた。

しかし、実際に投げかられた言葉は思っていたものとは少し違っていた。

「君は、目の前に自分のどうしても叶えたいこと、なりたいものなどがあった場合どうする?」

僕が生徒会室に入って、開口一番彼女はそう言った。質問を投げかけできた。

窓が開けっぱなしで夕日を背にした彼女の表情は逆光になりみえなかった。

ただ、声音からして残る僕らへのアドバイスか何かだろうか。

ならば僕なり正直に意見を言うべきだろう。

「やりたいことがそこにあるのなら、それに向かっていくべき...だと...思います」

なんか恥ずかしくて最後の方言い淀んでしまった。

しかし、これが僕の心の底からの正直な意見である。

僕はやりたいことも出来ずに死んでしまった人達の話をたくさん聞いた。

だから、生きているうちにやりたいことはやるべきなのだ。僕はそう思う。

「そこに決してラクではない道のりや恐怖、言わばリスクがあっても?誰かを悲しませるかもしれなくても?」

返された言葉に僕は答える。

「はい。それがどうしてもやりたい事ならば、そこに向かうべきだと、そう思います。それに先輩なら誰かを悲しませることなんてないと思います」

「そうか…そう...だな」

僕の言葉にうなづいた彼女は僕にゆっくりと近づいてくる。

段々と彼女の表情が見えて来る。

彼女は薄っすらと笑っていた。とても、儚げに笑っていた。

約歩幅1歩分のところまで近づいた彼女はポンッと僕の肩に手を置いた。

「ありがとな。君と出会ったこの一年とても楽しい時を過ごせたよ。一年間生徒会を手伝ってくれてどうもありがとう。君は特別だ。君と出会えて本当に良かった」

スッと頭を下げられた。

それを見て僕は慌てる。

「こ、こちらこそありがとうございます。先輩に会ってなかったら僕は今頃退学しています。

生徒会の仕事もとても楽しかったです。とても感謝しています。本当、ありがとうございました」

僕も頭を下げ返す、その様子を見て彼女はとても嬉しそうに笑っていた。

「ーーーヨシッ。じゃあそろそろ私は行く。そんじゃッまたな」

「はいっ本当ありがとうございました」

最後にもう一度お礼を言い、彼女が生徒会から出るまでずっと頭を下げ続けた。

すると彼女は急に扉の前で足を止めた。

「あ、そういえば最後に言い忘れてた」

まだ何かあるのだろかと顔を上げる。

すると彼女はさっきの笑顔よりも若干にこやかな笑顔でこちらを振り返ってーー

「また、これからもよろしくな」

そう口にした。

「は、はい、えっえと何が「じゃっさよならバイバイ」

そう言って彼女は去っていった。僕は最後の言葉に若干の疑問を残しながら生徒会を後にした。

もし、このとき僕が彼女に別の答えを提示していれば、あんなことにはならなかったのかもしれない。

僕はまだそのとき、自分が発した言葉の、その意味を、言葉の重さを、知るよしもなかった。

翌日、

彼女、黒瀬雫が自殺した。

そんな信じがたい情報が校長の口から生徒達に告げられた。

昨日の放課後、僕と話して別れたその3時間後、午後19時を時計が指す頃に、誰もいなくなった学校の屋上から彼女が飛び降りるのを帰宅途中の教師が目撃したらしい。

彼女が落ちた場所は、たくさんの警官たちによって封鎖されていた。

全校生徒が集まる体育館の中、校長から発せられたその事実に、何があったのだろうと多少ざわついていた空間も一気に静まりかえった。

その後の空間はとても重苦しいものだった。

その場にいたほとんどの人間が悲しみに覆われていた。

誰一人として何故、彼女が自ら命を絶ったのか、その理由を知るものはいなかった。

なぜ、何もかも完璧な彼女が。

なぜ、あんなにも慕われていた彼女が。

疑問は至るところで発せられる。

実は影で誰かにいじめられていたのでは。

家で虐待をうけていたのでは。

根拠のない憶側まで語られる。

でも、確信的な結論に辿り着けるものは誰もいない。

当の僕は現実を直視できずにいた。

ずっと俯いた状態で顔を上げることが出来なかった。

(どうして、どうして、どうして)

ときには目をつむり、耳を塞ぐ、まわりの音は聞こえない。

(聞こえない、聞こえない、聞こえない、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい)

集会が終わったあと、帰宅命令が出た。

僕はダッシュで家に帰った。その間も地面以外を見ることは出来なかった。

(なんで、なんで、なんで、)

息をきらしながら全速力で家に帰る。他の音は聞こえない。

もう家のすぐ目の前だというところで少し顔を上げる。

すると、家の前に女の人が立っていることに気がついた。

それに驚いて、急に止まることができず転んでしまった。

「あの大丈夫ですか?」

優しい声音が頭の上からかけられ、目の前に手が差し伸べられる。

顔を上げる。

(ひぃッ"!!)

そこには彼女、黒瀬雫とよく似た顔付きの二つ三つほど年が上だと思われる女性が立っていた。

思わず驚いて少し体を引いてしまった。

「あの〜もしかして霊耶くん?」

引いてしまった僕に対して女性はまたもや優しい声音で声をかける。

女性が発したのは僕の名前だった。

「は、はい。僕が霊耶です。あなたは?」

「私は黒瀬花。黒瀬雫の姉です。実はあなたにこれを渡したくて」

告げられた事実にまたもや驚く。

彼女の顔をよく見ると目の下に真っ赤に泣いたあとがあった。

差し出された手紙を受け取る。

「これは?」

「妹の遺書です。それをぜひあなたに読んで欲しくて」

僕は受け取った手紙を開き、なかを読み始めた。

そこには家族への謝罪、自殺に至った理由、そして彼女、黒瀬雫の真実が書かれていた。

誰にも解き明かせない全ての謎の答えがあった。やっとここで点と点が線で繋がった。

彼女、黒瀬雫も僕と同じ、特殊な目の持ち主だった。しかし、同じものが見えていたというわけではない。見えていたものは全くの別のもの。

彼女の目には全てが見えていた。

その目に映った、その人の全てが。

醜いところも。汚いところも全て。

過去に何をやったか、普段何を思っているのかも全て。

彼女が僕を助けてくれたのは、彼女が僕の能力

を知っていたからだ。その目で見て。

そう彼女は知ることが出来る。人の醜さを、普段は隠している本当の姿を。本性を。人の醜さを。

「彼女はいつも苦しんでいました。なんでこんな醜い世界で生きなきゃならないのか。なんで自分は彼らと同じ人間なのか。なんでこんな目を持って生まれてきてしまったのか」

悲しげな顔でそう言う花さん。

そして、彼女は苦しむと同時に抗ってもいた、こんな醜い世界に消されまいと、死んでたまるかと。

彼女は幼少の頃に決心したそうだ、負けるかと、決して醜くならず、汚されない、消されもしない、美しく生きようと。

だが、ある時に知ってしまった、死んでもこの世界に消されない事実を可能性を。僕と出会うことで。

「私達家族はあなたにとても感謝しています。

決心を決めたあとの妹は見てられないぐらい苦しそうでしたから。だからあなたと出会えた日の彼女は物凄く嬉しそうでした。忘れもしません。あの子が物凄い笑顔で凄い子を見つけたと私に笑いかけてくれたのですから」

泣きながら言うお姉さん。

僕はそんなお姉さんの言葉を受けて思う。

(やめてくれ、そんなことを言わないでくれ、それではまるで僕があの人を殺したようなものじゃないか)

そこで僕は、はたと気づく。

(違う、みたいじゃない僕が彼女を殺したのだ。少なくとも一年、彼女はその命を保っていた。

それは彼女が多少なりとも死にたいする恐怖やためらいがあったから)

僕はあの時の彼女の質問を思い出す。

「君は、目の前に自分のどうしても叶えたいこと、なりたいものなどがあった場合どうする?」

「そこに決してラクではない道のりや恐怖、言わばリスクなどがあっても?誰かを悲しませるかもしれないとしても?」

彼女の背中を最後に押したのは自分だと気づき唇を噛み締める。

そこでふと彼女の最後の言葉を思い出す。

「また、これからもよろしくな」

僕は気づく、気づいてしまう。

いや、もう最初から僕は気づいていた。

聞こえていた。学校にいたときからずっと。

ずっと見ないようにしていた。

自縛霊、

それはある固定のものに縛りつけられ、自分の意思では成仏できず、その強い思いが晴れるまでこの世に残り続ける霊のこと。そのほとんどは自ら望んでなるものじゃない、大抵の場合は自らの意思にはんしつ関係なく縛りつけられる。

そう、ほとんどは、である。

ごく稀に自らの強い思いで、自らを望んで縛りつけられることがある。

自分の意思で、この世に残れる、自分を失わないでいられる存在、彼女にとっては願ってもない存在であるだろう。

自縛霊には縛りつけられる物の存在が必要だ。

そして、その物に対する強い思いも。

彼女が、自分を縛りつけるのに選んだもの。

僕は、震える体をなんとか落ち着かせようと息を飲む。

(もう受け入れるしかない)

目をつぶってゆっくりと顔を上げ、ゆっくりとまぶたをあげる。

花さんの涙ぐんだ優しい声が耳に届く。

「あなたがいたおかげで、妹は、雫は報われることが出来ました。妹を救ってくれて本当にありがとう」

しかし、目の前に広がる光景、そこに##さんの姿は写っていない。

代わりに視界いっぱいに人の顔が写っていた。

死んだはずの彼女、黒瀬雫の顔が鼻先の位置にあった。彼女は僕の目線を自分の目線に合わすかのように僕の両頬を両手で抑える。

1度合わせてしまった視線、自分からはそらせそうもない。

「やっと、こっちを見てくれたな」

確かに僕の耳に届いていたはずの花さんのお礼の言葉が、まるでかき消されるかのように彼女のその一言が僕の脳内を支配していく。

まわりの他の音が一切聞こえない。

どこまでも僕の憧れで、聞いているだけで幸せな気分になれたはずのあの凛々しい声が今は体に絡みついてくるてくる巨大なヘビのようで、もう彼女に逆らうことは僕にはできない、そんな圧迫感と恐怖を感じさせるものだった。

(僕はなんてことをしてしまったんだ)

彼女をこんな風にしてしまったのは自分なんだ。

その事実にとてつもない悔しさと涙がこみやげてくる。

彼女はそんな僕の涙を指で拭いとると、ニコッと僕に笑いかける。

それはあの時、人であった彼女と話した最後の日に見た笑顔と全く同じものだった。

そして彼女は言う、心底嬉しそうにあの時と同じように。

「これからもよろしくね」

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それ以来、僕は彼女以外の霊を見たことがない。

霊はその想いの強さによって、どんどん力を増していくものらしい。

彼女が他の霊達にどんな影響を与えたのか、霊達の中で彼女はどうゆう存在になったのか僕は知る由もない。

ただ一つ確かなのはこれから先も僕が他の霊と関われることは今後一切ないだろうということ。

いや、霊だけではない、他の人間とも関わりを持つことはできないだろう。

彼女が醜いと見限ったそれと僕が関わりを持つことをその彼女自身が許さない。

僕はあのときの僕自身を、一切許すことはできないし、忘れることもできないだろう。

いくら意図的なものじゃなくても僕は彼女を自分に縛りつけてしまった。

だからこそ、僕はこれからも背負っていかなければならない、彼女という呪いを、その代償として。

ここまで話を聞いてくれてありがとう。

僕も、人と話したのは久しぶりで楽しかった、どうやら君はとても良い人間らしい、僕の話を最後まで聞いて君はまだ生きている、それがその証拠。

彼女の許しを貰える人間だったってことさ。

だから君から僕の周りに、この家に近づくなって、他の連中に伝えておいてくれ。

ん?彼女は今どこにいるのかって。今も僕の後ろにいるよ。

久しぶりの昔話で、彼女も思い出してなつかしんでいるようだ。

だから今のうちにはやく帰りなさい。

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走り去っていく少年の後ろ姿を見送る。

(本当に人と話したのは久しぶりだった。これで肝試しなんかといってこの家に入ってくるやつはまた少なくなるだろう。余計な犠牲を出すわけにはいかないからな)

最後のあの少年の、人と関わりをもてないと聞いてからの、自分はどうなってしまうんだろう、という怯えた顔が頭から離れない。

(ああいう顔をされるのはいつまでたっても慣れないなあ)

すると、ぎゅっと背後にぬくもりを感じる。

彼女が自分ね背中に抱きついたあのが分かる。

「ああ、大丈夫ですよ。僕があなたを見捨てることはありません。だから、安心してください」

より、抱きしめる力が強くなったのを感じる。

僕は決して忘れない、忘れることは許されない、これは僕が一生を費やして償わなければならない責任なのだから。僕の生きる意味なのだから。

今日もまた彼女は呟く、僕の耳元で。

彼女もまた僕にその責任を忘れさせまいと、決して離してなんてやるものかと。

あの時と変わらない力強く凛々しくも儚い声で静かに呟く。

「あの時、私を救(のろ)ってくれて本当にありがとう。

これからもよろしくな」



















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