満開の徒花:親友の彼氏に手を出す女の子の話
maricaみかん
本編
親友である
じつは、前々からいいなって思ってたんだ。でも、百合ちゃんと付き合うことになったみたい。
まあ、仕方ないよね。諦めようか。そう考えていた。
百合ちゃんとは、いろいろと仲良くしていたから。
一緒に勉強会をしたり、化粧や服をお互いに選び合ってみたり。
だから、その関係を壊してまで奪う意味はないかなって。
ところで、百合ちゃんは引っ込み思案でオドオドしていることが多い。なのに、自分から告白したらしい。
健人くんは頑張って百合ちゃんを落ち着かせていたらしい。人の良さそうな顔に似合った、優しい態度だよね。
前から思っていたけど、私を甘やかしてくれそう。
今では、百合ちゃんを大事にしているのだろうな。そう考えていた。
しばらくは、2人は幸せな日々を送っていたみたい。百合ちゃんも健人くんも笑顔で、2人でいる時はいつも笑い声が響いていた。
健人くんが百合ちゃんをからかったりして、彼女はオドオドしながらも受け入れる。そんな様子だった。
毎日手をつないでいて、とても楽しそうな様子に見えていた。
ちょっと遠くから眺めているだけで、こっちまで気持ちが伝わってくるくらいに。
私に、同じことをしてくれたらな。そんな考えが浮かぶくらいに。
だけど、少しずつ歯車が狂っていったみたい。
健人くんのからかいに、百合ちゃんが苦しそうな顔をして、彼はつまらなそうな顔をしたり。
百合ちゃんが自分の意志を言えなくて、健人くんが困っていたり。
やがては、手をつなぐ日は少なくなっていった。
それでも別れないのはどうしてだろうって考えるくらいには。
結局のところ、健人くんはあまり幸せでは無さそうだった。
私なら、もっと健人くんを楽しませてあげられる。もっと幸せにしてあげられる。
百合ちゃんと付き合っているよりも、素晴らしい日々が待っているはずなんだ。
だから……良いよね? 百合ちゃんから奪っちゃっても。
悪いのは百合ちゃんだよ。ちゃんとうまく行っていたなら、私は諦められたのに。
私の好みの人を不幸にしていくんだから、それは裏切りだよね?
という訳で、健人くんを誘惑する手段を考えることにした。
どうするのが良いだろうか。百合ちゃんは、あまり健人くんに好きって言えていないみたい。
だったら、押せ押せがいいかな。好意をぶつけられたなら、百合ちゃんに無いものを見てくれるはず。
からかわれても、楽しく返してあげよう。そうすれば、うまくからかえていない不満を忘れられる。
つまり、百合ちゃんの行動をフィードバックすれば良いんだ。簡単だね。
親友だから、どんな子かなんて知っている。自分の意志を主張できなくて、でも、相手の意見を受け入れることもできない。
なら私は、素直に健人くんに好意を伝えて、望みを受け入れれば良い。
方針は決まったね。なら、行動だよね。
百合ちゃんと離れた健人くんに、こっそりと話しかけていく。
「ねえ、健人くん。今日、私と遊びに行かない? いろいろ、教えてほしいな」
唇が触れそうなくらい近づいて、その後に耳元でささやいてみる。
健人くんは見るからにドキドキしていて、押せばいけそうな雰囲気だ。ちょろい。
私、可愛いもんね。近くに寄っていれば、それは良い気分になるよね。
「い、いや、俺には百合が居るから」
「知ってるんだよ。百合ちゃんとうまく行っていないって。私なら、百合ちゃんとできない事だってできるよ?」
「そ、それは……」
「ちょっと押しただけで、怯えちゃうんだよね。私は大丈夫だよ?」
健人くんは考え込んでいる。やっぱり、不満が溜まっているのだろう。
なにせ、百合ちゃんはキスにだって怯えちゃいそうだからね。いろいろと、困るよね?
「でも、百合に悪いよ」
「悪いことをしたのは、百合ちゃんじゃないかな? 付き合っているのに、相手のことを考えないなんて。私は違うよ」
今の言葉が刺さったみたいで、健人くんは目をそらしながらも頷いた。
後は楽勝だね。誘惑してあげれば、それで終わりだと思う。
まずは、いい雰囲気を作るところからかな。
さっそく腕を組んで、健人くんの肩に頭を乗せる。
横目で見ると、顔を真っ赤にしていた。うん、いい調子。
「じゃあ、行こうか。服屋に行こうよ。私に着せたい服とか、あるんじゃないかな?」
なんて提案すると、恥ずかしそうに頷く。うんうん。良い流れ。
たどり着いた服屋では、こちらから服を提案したり、相手の選んだものを試着してみたり。
結局、健人くんは何着かの服を買ってくれた。もう、決まったかな。
簡単なものだ。百合ちゃんを選ぶくらいだから、女慣れしてないのは当然だよね。
「ねえ、私と付き合ってみない? 健人くんがしたいこと、何でもしていいから、ね? 私の家に、こない?」
その言葉に、健人くんは少しだけ悩んでから、ゆっくりと頷く。
やっぱり、百合ちゃんのことを気にしているんだね。でも、忘れさせてあげるから。
たどり着いた家では、私の部屋に誘い込んで、服を緩めてみる。
すると、つばを飲み込む音が聞こえた。じゃあ、トドメだね。
「百合ちゃんは臆病だから、きっとできなかった事があるよね。いまから、どうかな?」
答えはすぐに返ってきて、私にとって最高の瞬間がやってきた。
ねえ、これからよろしくね、健人くん。百合ちゃんよりも、幸せにしてあげるからね。
満開の徒花:親友の彼氏に手を出す女の子の話 maricaみかん @marica284
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