第32話 美羽との映画館デート 2

「あ、始まるみたいだ」


 そのタイミングで映画が始まる。


 最初は美羽からのいい匂いや美羽の感触にドギマギして集中できなかったが…


(おぉ!面白いぞ!みんなからの評価が高いだけあるっ!)


 あまりの面白さに集中してスクリーンを見ている。


 時折、俺の肩に頭を乗せている美羽の顔を見るが、美羽もスクリーンに集中しているようだ。


 そして2時間後…


「面白かった!想像以上に面白かったぞ!」


「あぁ!もう一度見てもいいくらいだ!」


 美羽が俺の肩に頭を乗せていたことなんか忘れるくらい映画に没頭した俺は、そんなことを言いながら映画館を出た。







 13時からの映画を見たため、現在の時刻は15時。


 俺たちは映画を鑑賞し終わり、近くの喫茶店に来ていた。


「面白かったな!やはり感動作と言われるだけあるぞ!」


「そうだな。美羽は途中で泣いてたし」


「なっ!なんで知ってんだよ!」


「俺の肩に頭を乗せて泣いてたら誰だって気づくわ」


「あっ。そ、それもそうか……」


 今の今までどんな姿勢で映画を観ていたのか忘れていたようで、俺が指摘すると、顔を赤くする。


「そっ、それにしてもヒロインは可愛かったな!」


「そうだな。あれだけ好き好きアピールされてるのに気づかない主人公に文句を言いたくなるが」


「………」


 すると、俺のことをジト目で見てくる。


「な、なんだよ?」


「なんでもないぞ。優斗の発言に呆れただけだ」


 そう言って「はぁ」と美羽がため息をつく。


 そんな空気を変えるため、俺は話を元に戻す。


「や、やっぱり好きな男に振り向いてもらうための努力をしてるヒロインっていいよな!自分の好みに合わせてくれるから、本気で自分のことが好きなんだと伝わるし!」


 俺は美羽にヒロインを絶賛する。


「なるほど。確かに一理ある」


 美羽が神妙な面持ちで頷く。


「なぁ、優斗。優斗はどんな女が好みなんだ?」


「………え?」


(な、なぜいきなり俺の好みを聞いてくるんだ?)


「髪の長さは?喋り方は?他にも…」


「ま、待て、美羽!なぜ俺にそんなことを聞いてくるんだ!?」


 俺は慌てて美羽の質問攻めを止める。


「そ、それは……ゆ、優斗の好みが全男性の好みだから、参考にした方がいいと思ったんだ」


「いや、全男性の好みと思わない方が……」


「そんなことないぞ!だからどんどん言ってくれ!」


 “グイっ!”と俺の顔に美羽が詰め寄る。


(俺の好みが全男性の好みという時点でおかしいが、俺が好みの女性を言って美羽が真似するのが1番マズイ。絶対、美羽の魅力を下げてしまう)


 そのため、俺の好みは伝えない方向……すなわち、今のままで十分だと言うことを伝える。


「美羽!俺は今の美羽をとても可愛い女の子だと思ってる!だから、俺の好みを参考に変わろうとしなくていいんだ!」


 俺は自分の想いを真剣な眼差しで伝える。


「そ、そうか。優斗がそこまで言うなら参考にするのをやめるぞ」


 俺の想いが伝わったのか、少し顔を赤くした美羽が引き下がる。


 そのことに「ふぅ」と安堵するが…


(うん。イケメンしか許されないようなことを言ってしまった……穴があったら入りたい)


 俺は恥ずかしさのあまり、今更ながら顔を赤くする。


 その後、時間と共に冷静になった俺たちは、雑談しながら注文した料理を食べた。




 料理を食べた後、俺たちは喫茶店近くの公園に来ていた。


「おぉー!こんなところがあったんだ!」


「すごく見晴らしがいいだろ?それに今の時間だったら夕日も見れる」


 俺は美羽に連れられて見晴らしの良い公園に連れてこられ、景色の良さに感動する。


 しばらく無言で景色を眺めていると、景色を見ながら美羽が口を開く。


「優斗、梨沙から告白されたらしいな」


「えっ!なんで知ってるの!?」


「アタシと梨沙は親友だからな。梨沙から教えてもらったんだ」


「そうか。梨沙から聞いたのか」


「あぁ。保留になってることも聞いてる。優斗は梨沙のことをどう思ってるんだ?」


 そう言って俺の方を向いた美羽は真剣な目をしていた。


 そんな美羽に誤魔化すのは失礼だと思い、俺は現在の心境を素直に話す。


「俺、今まで自分の幸せを考えたことないんだ。生きること、妹を幸せにすることだけで精一杯だった。そんな俺が妹だけでなく、付き合った女の子を幸せにできるか不安なんだ。だから梨沙の告白には正直迷っている」


「そう……なのか」


 そう聞いた美羽が安堵した表情となったが、俺は気にせず話し続ける。


「でも、妹からレンタル彼氏のアルバイトをする前に言われたんだ。『これからは自分の幸せのために時間を使っていいからね』って」


 俺はレンタル彼氏を始める前に言われたモモからの言葉を思い出す。


「その言葉を妹から貰わなかったら絶対に断っていた。だが、妹は自分の幸せを考えろと言った。だから自分が幸せになるために、梨沙からの告白に対して真剣に向き合ってる状況だ」


 これは彩さんにも言えることだが、今の俺は絶賛悩み中。


 情けない話だが、2人とも魅力的過ぎて決めきれない。


 もちろん、妹を幸せにするだけで手一杯だから2人とも断るという選択肢も残している。


「なるほど。今の優斗は悩んでる状況か……これならアタシにも希望があるな」


「……?」


 そう呟いた美羽が俺を見る。


「優斗。アタシ、好きな人ができたんだ」


「えっ!そうなのか!?」


「あぁ」


 そう頷いて、何故か美羽が俺を指差す。


「………?」


「やっぱり気づいてないな」


 首を傾げている俺に指を差しながら“クスリ”と笑う。


「アタシ、優斗のことが好きだ。梨沙に取られたくないって本気で思ってる」


「………え?」


「だから優斗!偽物の恋人関係じゃなくアタシと本物の恋人になってくれ!」


 誰もいない公園に美羽の告白が響き渡った。




*****


【カクヨムコンが始まりました】


 カクヨムコンが始まり、本日、作者は新作のラブコメを投稿しました。


〜タイトル〜


 髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。


https://kakuyomu.jp/works/16817330667724326520/episodes/16817330667724701293


 今後も『レンタル彼氏』の更新をして参りますので、新作の方もよろしくお願いします<(_ _)>

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